文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信 No.117

公開日: 

日本大学芸術学部文芸学科     2008年(平成20年)12月8日発行
文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.117
BUNGEIKENKYU Ⅱ SHIMOHARAZEMI TSUSHIN
                              編集発行人 下原敏彦
                              
2008後期9/22 9/29 10/6 10/20 10/27 11/10 11/17 12/1 12/8 
12/15 1/19 1/26 
  
2008年、読書と創作の旅
12・8下原ゼミ
12月8日(月)の下原ゼミは、下記の要領で行います。文ゼミ教室2
 1.ゼミ誌作成報告 出欠・連絡事項・課題配布
 2.世界名作読み 詩編「空」ヴェルレーヌ
    
 3.課題・合同ゼミ発表稽古
 
  4.社会評・議論 「いじめ・暴力はなぜなくならないのか」新聞から
     
 
2008年の車窓・百鬼夜行 
 百鬼夜行という言葉がある。意味は岩波の国語辞典でみると「いろいろな姿をした鬼どもが、夜中に行列して歩くこと。また、多くの人が奇怪な行動や不正な行動を公然と行っている」とある。あと二十日余りで終わる2008年を振り返ると、なぜか、この言葉を彷彿する。
 まず、鬼と言っては失礼だが、今年の世相を映した「2008ユーキャン新語・流行語大賞」をみると、仮装した鬼たちの行列が思い浮かぶ。「アラフォー」「グ~ ! 」「上野の413球」「居酒屋タクシー」「蟹工船」「ゲリラ豪雨」「後期高齢者」「名ばかりの管理職」「埋蔵金」「あなたとは違うんです」これらの言葉に関連性があるかどうかは知らないが、今年を彩った仮装者たちの支離滅裂な言葉にそれをみる。もっとも、仮装行列の言葉なら害はない。人畜無害、オドロキとオモロイだけである。が、もう一つの意味「多くの人の奇怪な行動と不正な行動」は、どうサバ読んでもいただけない。しかし今年は、こちらに当てはまる人物が多発したようだ。まずは、この国の宰相である。名門中の名門。お金持ち中のお金持ち。お坊ちゃまで裸の王様というこのお方。マンガの読みすぎで漢字の読み違えはご愛嬌だが、問題発言やらホテルバー通いなど奇怪な行動が目立った。奇怪といえば、先般、この欄でも書いたが、34年ぶりに愛犬の仇を討ったという殺人者。だれでもよかった秋葉犯と同族の輩。近く精神鑑定を行うらしいが、まさに奇怪な犯罪行動であった。他にも奇怪な行動者は多々いる。これも、同通信で取り上げた人物。あれだけ世の中を騒がして、臆することなく7千万円もの退職金をもらった軍人もその1人だ。幕僚長というと、何だろう。昔で云うと元帥閣下か大将か ?! この大将、何を狂ったか懸賞論文にせっせと応募し、部下にも応募させていたようだ。確かに彼の怒りも理解できなくもない。格差が広がり、吸血鬼まがいの派遣会社が幅をきかす荒涼たる世の中。これも世襲の安泰と選挙にのみ汲々とする政治家の無能がなせる業である。ストーカーする裁判官、懸賞論文を書く軍人。ロシア文学ベストセラー。2008年、まさに奇々怪々の車窓だった。(編集室)


文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.117―――――――― 2 ――――――――――――――
車窓雑記
テレビ擬似裁判を観る
 6日(土)午後7時30分からNHKテレビは、NHKスペシャルとして裁判員制度特集を放映した。前半、ドキュメンタリータッチで模擬裁判があった。無作為に選ばれた人々という前提で、いくつかの関連会社から選出された6人の裁判員が3人の裁判官と、ある実際にあった事件の模擬裁判を行うものだった。裁判員は、忘れっぽいので不確かだが大学を出たばかりの24の女性、35、6歳の男性、40前後の女性、中高年の男性、年配者の男性だった。
 裁判員は、3日間、公判に出席し裁判官と相談して、被告人の量刑を決めるという設定。死刑か無期かの判決らしいが、なぜか無期のような気がした。公共放送だからか・・・ ?
裁判員は、まず裁判所で、どんな事件を担当するか教えられる。起訴状を読む。それから事件概要を知る。事件は、32歳の男性被告が、深夜ある自営業者の自宅兼事務所に盗みを目的で忍びこむ。事務所で金を探しているとパジャマ姿の社長が出てくる。捕まえようとする社長と争いになり覆面がとれる。被告は、持っていたナイフが社長の太ももに刺さり出血多量となる。それが原因で死ぬ。そこに社長の奥さんが物音を聞きつけやってくる。被告は、顔を見られたと思い、奥さんを襲い首をしめて殺害。レジから10万円を盗んで逃走する。三ヵ月後だったか、に逮捕。
 裁判は、起訴 → 公判 → 評決 とすすむ。普通は、犯人の自白調書をもとにはじまるが、この擬似裁判は、「有罪」が前提 からはじまった。つまり、裁判員は死刑か、そうでないかを決めるのだ。いきなり重い裁判に裁判員たちは戸迷う。まずはじめに現場写真を見せられる。殺害された社長夫妻の遺体。裁判がはじまる。被告は、前にでてきて、訊問される。ほとんどが、「夢中だったので」「怖かったので」「よくおぼえていない」といった受け応えだった。証人として被告の母親が、苦労の生い立ちを話し減刑を嘆願。被害者からは、突然の悲劇に悲嘆にくれる家族。娘が出廷。極刑を願い出た。弁護士は、被告が借金のことで暴力団から脅迫されていたことを説明。裁判員は2人が死刑、4人が無期懲役。視聴者は、たぶん無期とみた。が、実際は死刑判決だった。
葬儀で想ったこと
 2日、木枯らし吹くなか知り合いの葬式に出席した。葬儀は、いつも悲しいものだが、お年寄りや長く患った人のときは、そうした感情とは別に、ついつい空想的なことを考えてしまう。この日は、94歳の高齢の婦人。寿命を全うしたという思いはあるが、さすがに出棺の折は、ハンカチをにぎる人は多かった。花に囲まれた個人の亡骸を目にすると、元気だった頃のこと、お世話になったことを思いだしこみあげてくるものがあった。しかし、全体的には、これでよかったのだ、という思いが占めた。故人の友人、知人はほとんど、あちらの世界に行ってしまっている。向こうの方が楽しいのでは、そんなふうに思うからである。
 それにしても、死ぬということは、どんなことか。読経を聞きながら想像した。いつ、どこで、どのように。人間、この世にあるは、必ずこの関門を通過する。生まれてくるとき大抵の人は、この三つは明らかだ。出産日、病院、自然・切開・薬出産。だいたいは予想がつく。だが、死ぬときのことはだれも予想つかない。病院で死ぬか、自宅で死ぬか、それとも路上で死ぬか。死因も予想つかない。寿命か、病死か、殺人でか、それとも事故か。いろんな死に方が想像できる。生まれる前のことは、ある程度、科学的に分析できる。もっとも、500万年先のアフリカの森の中でのことは、不明だが・・・・死の先には何があるのか。人間が想像できる範疇だろうか。あれこれ空想しているうちにお焼香の順番が告げられ、我に返った。
 
――――――――――――――――― 3 ―――――――文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.117
2008年、読書と創作の旅
後期「2008年、読書と創作の旅」
12月8日ゼミ・プログラム
はじめに  → 出欠、「ゼミ通信」、課題配布、連絡事項
                 
司会進行決め  →  (二度目になります)
司会者進行
1.ゼミ誌『ドレミファそらシド』作成に関する報告、  
 (川端・大野編集長、小黒副編集長、坂本・瀧澤・橋本・飯島編集委員から)    
2.  世界文学名作読み → 詩編・ヴェルレーヌ「空」を歌う
〇 詩・空の歌 ゼミ誌が「そら」をテーマ、雑誌題名も「そら」が入ることから、この詩
  を紹介します。
  訳者の違いで詩の印象は変わるのか。そのへんを吟唱で聞き比べてみましょう。 
 ・ポール・ヴェルレーヌ「空」堀口大学訳 対比 橋本一明訳(
3.  ゼミ合同授業について、模擬裁判稽古
   次週、12月15日ゼミは、山下ゼミと合同 します。山下ゼミは研究発表として、宮
  沢賢治作品の寸劇を行うとのこと。うちでは紙芝居も考えましたが、現在やっている裁
  判員制度のことの方が面白いのではないかと思いました。やるとすればテキスト志賀直
  哉の「ナイフ投げ奇術師美人妻殺人疑惑事件」がよいと思います。別冊の台本をたたき
  にと考えました。30分くらいか。配役。
4. 新聞事件記事からの判決「15階高層マンション殺人事件」
5. 社会観察・いじめ問題「なぜいじめはなくならないのか」議論 
時間あれば
〇 戦争観察 中国南京1938年1月5日 ~ 13日、上海 ~ 17日
  石川達三『生きている兵隊』赤紙で徴集された市民が戦地に行ったらどうなるか。ライ
  ターは冷静に客観的に徐々に兵士になっていく一市民の姿を観察している。
〇 ・ジュール・ルナール(1864-1910)『にんじん』訳・窪田般彌(くぼたはんや)
 
文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.117 ――――――――4 ――――――――――――――――
課題・6 テキスト=メリメ『マテオ・ファルコネ』        
 自分の子供への暴力が止まない。11月18日の朝日新聞千葉県版に下記の記事があった。
 ※ 千葉県内の実情です。
育児頑張り過ぎてませんか ?
子への暴力、5年で2.4倍
 子どもへの暴力が後を絶たない。県児童家庭課によると、「虐待があるのでは」という通報を受けて児童相談所が対応した件数は、07年度だけで1980件(千葉県内)、5年前の2.4倍にのぼる。実母から虐待されるケースが半数を占め、育児の悩みやストレスが背景にあると見られることから、県や市町村は対策を急いでいる。(安田桂子)
■児童に対する虐待のデーター
【虐待の内容】               【主な虐待者】
① 身体的虐待     660件(41%)     ①  実母    973件(60%)
② 保護の怠慢・拒否  551件(34%)    ②  実父   427件(27%)
③ 心理的虐待     353件(22%) ③  継父    101件(6%)
④ 性的虐待       52件(3%)   ④  継母     19件(1%)
【虐待児の年齢】
① 小学生       601件(37%)
② 3歳から就学前   399件(25%)
③ 3歳未満      286件(18%)
④ 中学生       255件(16%)
⑤ 高校生・その他    75件(4%)
※ 千葉県児童家庭課、07年度まとめ
 児童虐待の大半は、憎さより可愛がり過ぎたからが多い。自分の期待通りにならない。上記は千葉県の調査結果だが、日本全国をみても同じ結果がでるはずである。それは、そのまま世界にも当てはまる。親子の問題は時代を超えてもある。19世紀イタリアでも例外ではない。課題6の事件は、息子を愛するがあまり、期待し、自分のロボットとして育てようとしたあまり起きてしまった悲しい事件である。陪審員は、この父親をどう裁くか。
コルシカ地主我が子射殺事件
 【事件のあらまし】
 被告は、コルシカの名士で、鉄砲の名手でもある。仁義もあり、「窮鳥懐に入れば猟師も殺さず」の信念に生きる男。広大な土地を持ち沢山の家畜を所有している。ある日、被告と妻は家畜を見回りに朝早くで掛けた。そこに、傷ついた男が官憲に追われて逃げてきた。10歳の息子フォルチュナトは干草の中に逃亡者を匿うが、官憲がみせた銀時計につられて教えてしまう。捕まった男は、帰ってきた父親に「裏切り者の家」と叫ぶ。父親である被告マテオは、息子に命令する。「あの大きな石の傍へ行け」
被告は息子が泣いて謝るのを無視して、狙いを定め
「神様に許してもらえ ! 」と、言って引き金を引いた。
自分の正義を他者に強要し、守らなければ死という、こうした人間はいつの時代にもいる。
一昨年、秋田で起きた娘殺しも母親の勝手な理屈からだった。 
―――――――――――――――――― 5 ――――― 文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.116
  小黒貴之
【被告人を弁護するとしたら、被告人の名誉とは】
 法から逃れてきた流れ者たちの住むコルシカで人間としての自信、精神的支柱となっているのは土地の筋者の間で使われている「筋を通す」という概念であり、生きていくうえでの社会規範となっていた。銀時計欲しさに同じ生き方をしている島民を売った息子に「けじめ」をつけなければコルシカで暮らしていくことはできない。他の家族にも累がおよぶ――制裁がある。と経験で知ったうえでの射殺だったといえる。極端な言い方をすれば、息子のやり方ではこの島で生きてはいけないだろうという親心であったともとれる
【この息子殺人、有罪なら量刑は、その理由は】
 島民感情として「とりかえしのつかないこと」をしてしまったとはいえ、わずか10歳の実の息子を射殺した罪と、独特の風習の中で名士として生きてきた被告人の生い立ちを考慮すると難しいが、やはり殺人・実子殺しでもあるし息子の生きた年数、10年を求刑するのが妥当かと思われる。
※ 手塚治虫の『ブラックジャック』に使われそうなテーマだなと思った。
  瀧澤亮佑
【被告人を弁護するとしたら、被告人の名誉とは】
 
 よくわからない。でも確か欧米には「騎士道」というものがあったはず。マテオはそれに達したかったのではないだろうか。名誉を守る為にも子供の1人や2人殺してもかまわなかったのではないだろうか。名誉>子供という時代だったのかもしれない。
  
【この息子殺人、有罪なら量刑は、その理由は】
 無罪でも良いのではないだろうか。現代なら重罪かもしれないけれど、時代が違うのだから仕方がない。そういう時代、そういう世界に生まれてしまったのだから、ある意味仕方がない。
  飯島優季
【被告人を弁護するとしたら、被告人の名誉とは】
 名誉なし。
【この息子殺人、有罪なら量刑は、その理由は】
 無期懲役。理由は、「家の名を汚した」などというくだらない理由で、家族殺しという許すことのできない大罪を犯したから。
 
文芸研究Ⅱ下原ゼミNo・116―――――――― 6――――――――――――――――
 
  臼杵友之
【被告人を弁護するとしたら、被告人の名誉とは】
 最も信用されない犯罪者達を、信用し守り抜くこと。
【この息子殺人、有罪なら量刑は、その理由は】
実刑10年、10歳の息子を殺したから。
  大野菜摘
【被告人を弁護するとしたら、被告人の名誉とは】
 弁護できません !
 彼にとっての名誉は、恐らく相手が誰であろうと裏切る事のない、人あたりの良い人間であり続ける事。息子にも自分の家族としてそれを傷付けるという事が許せなかったための犯行なのだろうか。
【この息子殺人、有罪なら量刑は、その理由は】
 懲役15年以上。何故、無事だった事に喜べなかったのか。殺すのは明らかにやりすぎなのでは。
  秋山有香
【被告人を弁護するとしたら、被告人の名誉とは】
 息子は、「世話好きで、慈善もし、勇敢」という評判を持つ父親(被告人)の名誉を、自らの行いで傷つけている。裏切り行為をした息子をしつけるのが、行き過ぎてしまった。
【この息子殺人、有罪なら量刑は、その理由は】
 有罪。懲役7年くらい。
 確かに、この息子のしたことは、ジャネットに対する裏切り行為だが、殺すことはない。賄賂につられ、一度約束したことを破ってしまった息子を叱るのは親の務めかもしれないが、まだ10歳という年齢を考慮すべきだった。殺すのはやり過ぎ。
評決 → 時代を考慮した場合  有罪 OR 無罪     量刑は ?
   → 時代を考えない場合   有罪 OR 無罪   量刑は ?
主文
―――――――――――――――――――― 7 ――――文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.117
課題7・金貸し老婆姉妹強盗殺人事件
(ドストエフスキー『罪と罰』から)
 被告、元大学生は、皆か幸せに暮らせる平等な社会をつくるためには、どうしたらよいか考える。考えに考えた末、一つの考えに到達する。まず英雄になること。自分は、そのために生まれてきたのだ。なぜ英雄か。世の中には凡人と非凡人がいる。このなかで歴史をつくっていくのは非凡人である。たとえばナポレオンがそうだ。なぜナポレオンは英雄か。作物を作って人々を飢饉から救ったのでも、人の命を救ったのでもない。戦争という大量殺人の場で勝利をおさめたからである。織田信長しかり、ジンギスカンしかり古今東西、英雄と呼ばれる人物の業績は、この一点にある。つまり1人殺せば殺人犯だが100人、1000人殺せば英雄だ。歴史に名を残す人間になれる。英雄になったたらどうする。その前に、なるためには何をなすべきか。被告は、酒場で将校と学生の会話を思い出す。江川卓訳
学生「・・・冗談だが、ひとつ考えてくれ、一方には、おろかで、無意味で、くだらなくて、意地悪で、病身な婆さんがいる。だれにも必要のない、それどころか、みなの害になる存在で、時分でも何のために生きているのかわかっていないし、ほっておいてもじきに死んでしまう婆さんだ。・・・・ところがその一方では、若くてぴちぴちした連中が、だれの援助もないために、みすみす身を滅ぼしている。それも何千人となく、いたるところでだ。修道院へ寄付される婆さんの金があれば、何百、何千という立派な事業や計画を、ものにすることができる。何百、何千という人たちを正業につかせ、何十という家族を貧困から、零落から、性病院から救いだせる――これがみんな、彼女の金でできるんだ。じゃ、彼女を殺して、その金を奪ったらどうだ。そして、その金をもとに、全人類の共同の事業に一身をささげるのそ、・・・ひとつのちっぽけな犯罪は数千の善行によってつぐなえないものだろうか ? ひとつの生命を代償に、数千の生命を不敗と零落から救うんだ。ひとつの死と百の生命をとりかえる。」
 この妄想にとらわれた被告は、ついに被害者の金貸し老婆の家のドアをノックする。そして、被害者が質品のシガレットケースに気をとられている最中、
・・・被告は斧をすっかり取り出し、なかば無意識のうちに両手でそれを振りかぶると、ほとんど力をこめず、機械的に、頭をめがけて斧の峰をふりおろした。・・・背が低かったせいもあって、斧はちょうど脳天にあたった。被害者は死んだ。被告は、金品を奪い目的を達した。が、そこに被害者の妹が入ってきた。被告は、この妹も殺害し逃走した。そして、知人にすすめられて自首した。計画になかった妹殺害を悔やんだが、非凡人になるという犯行動機を、反省することはなかった。
長沼知子
【被告の考えをどう思うか】
 確かに1人殺せば殺人で捕まるが、戦争で100人殺せば名誉になる。でも殺人は殺人だ。一個人が人を殺せばただの殺人であるし、戦争で負ければ罰せられるし、勝ったとしても殺人者であることに変わりはない。
 あまりに極論すぎると思う。だが、実際、身近にこんな考えの人が普通に隣りにいて、こんなことを巧みに論じられたら私も「そうかもしれない・・・そうかなぁ」と洗脳されてしまうかもしれない。
文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.117―――――――― 8 ――――――――――――――――
【自首した被告の量刑は】
 死刑にしたいが、自首はやたらと考慮されてしまうので、終身刑。(無期懲役だと出所もできてしまうから)
【その理由は】
 自分勝手な持論を理由に人を殺すなど許されることではない。その上保身のために更にもう1人殺している。そんなの「誰でもよかった」が決まり文句の無差別殺人と変わらない。
【弁護するとしたら】
 貧困な暮らしを送る自身と強欲で裕福な金貸しの老婆の格差をうらみ、それが憎しみに変わった。殺人も元々は人の為にした行為である。
【被告の非凡人思想について】
 確かに同じ人間なのにこうも違うのかと納得いかないことだらけだが、それが社会であると思う。でも、だからこそ強いものは弱いものに手を差しのべなければならない。非凡人になるための方法は殺人以外にいくらでもある。
川端里佳
【被告の考えをどう思うか】100人殺したら英雄
 まず社会にとって益となる人、益とならない人というのが理解できない。その判断をしているのは被告であって、それが本当に益とならない人かどうかは分からない。すべて被告人の自己満足でしかないと思う。
【自首した被告の量刑は】
有罪 懲役30年くらい。
【その理由は】
 被告がしたいことは簡単に言えば自己満足による殺人で、とても悪質なものである。無期懲役にしたいところだが、反省したことが考慮されるると思うので、30年くらい。
【弁護するとしたら】
 悪を倒すという正義感からやった。反省している。
【被告の非凡人と凡人思想について】
 まず、非凡人、凡人という概念が理解できない。そして、どちらを滅ぼすことが正義だという考えも理解できない
――――――――――――――――――― 9 ――――文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.117
大野菜摘
【被告の考えをどう思うか】100人殺したら英雄
 理解できない。一人でも100人でも殺したら殺人。
【自首した被告の量刑は】
 懲役10年。
【その理由は】
 2人殺した上、金まで盗んでいるから。
【弁護するとしたら】
 生活難から精神状態がおかしくなったため、罪を犯した。
【被告の非凡人と凡人思想について】
 非凡人、凡人は生まれた時から決まっていると思うので、罪を犯して非凡人になるという思想は理解できない。
秋山有香
【被告の考えをどう思うか】100人殺したら英雄
 理解し難い。1人殺しても100人殺しても殺人は殺人。殺人犯から大量殺人犯に名前が変わるだけ。
【自首した被告の量刑は】
 懲役7年くらい。
【その理由は】
 まず1人殺し、その現場を目撃されたために、第二の殺人を犯した。さらに、お金を盗んでいてこれは悪質といえる。しかし、自首したので、多少減刑。
【弁護するとしたら】
 貧苦のため、精神異常に陥った。
【被告の非凡人と凡人思想について】
 ナポレオンのような非凡人とあるが、ナポレオンは非凡人とはいえないくらい非凡人。比べること自体が間違っている。
文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.117―――――――10 ―――――――――――――――――
臼杵友之
【被告の考えをどう思うか】100人殺したら英雄
 行為として見れば、どちらも人殺しに変わりはなく、被害者がどのような人間であっても加害者の罪の重さが変わるものではない。けれども社会の中で生きる人々が、倫理上に成り立つ法律をルールとして尊守するように、社会が決めた戦争という名の殺人を容認する、半ば押し付けた状況は、矛盾を含んでおり、決して、解決される問題ではない。
【自首した被告の量刑は】
 無期懲役。執行猶予 無期。
【その理由は】
 罪の意識を深く抱いた彼は立派な論文を書ける程に優秀なので、自分の考えを論文にし て発表するなど懲役とは違った形の償い方があると思う。
【弁護するとしたら】
 彼の抱いた思想は、社会や歴史に対して、ある種の衝撃を与え、人々に戦争というものを考え直させるきっかけを作った。例え、彼の犯した殺人が許されるものでなくても、歴史、時代によって変わる殺人の定義が根底にあるなら、その罪は彼だけでなく社会も背負うべきである。
【被告の非凡人と凡人思想について】
 人は皆、ただの人。
瀧澤亮佑
【被告の考えをどう思うか】100人殺したら英雄
 わからない。
【自首した被告の量刑は】
 無罪でもかまわない。しかし、アメリカでよくある例みたいに社会奉仕とか、その様な刑罰の方が、より社会的更生という面から見て効果的と思われる。
【その理由は】→ パス
【弁護するとしたら】
・格差社会  ・人間それぞれ個人の「運」の問題  ・社会情勢、環境
【被告の非凡人と凡人思想について】
 誰もが皆「非凡人」、今でいうと勝ち組とか言うかもしれない。となりたいと思う。だけど人間には「分」というのがあるのだ。日本語のすごく良い言葉に「分相応」という言葉がある。自分のレベルというか身の丈にあった生活。
――――――――――――――――――― 11 ――――文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.117
飯島優季 
【被告の考えをどう思うか】100人殺したら英雄
 「1人殺せば殺人で、100人以上殺せば英雄」という言葉に関して述べるならば、それは違うと思う。たとえ1人であろうと100人であろうと、それ以上であろうと殺人であることには変わりはない。英雄か殺人かを決めるのは≪何人殺したか≫ではなくて≪誰を殺したのか≫の方が重要なのだと思う。しかも英雄かどうかを決めるのは自分ではなく他人(世間)なのだ。「だれを殺したのか」の他にも「時代背景」なども考えに含まれつつ、その時の人々がその人をどう見るか。それが殺人と英雄ををわけるのだ。ただ忘れてはいけないのは、どんなに≪英雄≫と崇められても結局、人を殺した≪殺人者≫であることは変わらないということだ。            以上は、「金貸し老婆とその妹強盗殺人事件」について
課題追提出 -----------------
課題2.振り込め詐欺について
【なぜ振り込んでしまうのか】
 
坂本義明 最近は、宗教を装う以外に、投資や還付の話を持ちかけてくる事もあるような
      ので、巧みな言葉に騙されてしまうのだと思う。
【被害者の性格について】
坂本義明 身内の状況をよく把握していない人と、還付等の言葉に惑わされる人。
課題3.『灰色の月』について
【そのとき、あなたが作者だったら、どんな行動を】
坂本義明 肩で突き返すかどうかはわからないが、おそらく何もしないと思う。ちょつ
       としたことではどうにもできない問題だから。
大野菜摘 何もしない。チラチラ見るだけ。
【この作品は作者批判の材料にされたが、あなたの感想は】
坂本義明 批判したい人たちの粗探しにしか思えない。
大野菜摘 仕方ない事だと思う。飢えている子供全員に何かしてあげられる事が出来る訳
      でもない。
【車内から時代を読みとることができるか】
坂本義明 戦争直後に山手線が動いていたことに驚いた。
大野菜摘 汽車か電車かで時代の流れを読み取ることができる。それぐらいか。
【『網走まで』は『灰色の月』を予見しているか】
坂本義明 車中を描いた作品という点では同じだが、予見しているようには感じられない。
大野菜摘 あまり感じませんでした。
文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.116―――――――12 ―――――――――――――――――
   
        テキスト『范の犯罪』から           
【この出来事は、事件か事故か】
阪本義明
 范氏が妻に対して死んでほしいという感情を抱いていた事は確かだが、裁判官が事情聴取をした際の供述から察すると意図して殺したという点は後から付け足したものと考えられるため、再度聴取する必要があると思うが、現時点では事故とする。
高層マンション15階投げ落とし殺人事件
新聞・「計画的通り魔殺人事件裁判」 (200・11・25読売夕)
【事件推移】
 被告(44)は、いつのころからかマンション高層階から人を投げ落としたい。そんな欲望にとりつかれていた。2006年3月20日午後0時45分頃、被告は、購入を考えて見に来たことのあるマンションで被害者・小学3年(9歳)に会う。あたりに誰もいない。被告は、被害者を呼び止めると、いきなり両脇を抱え投げ落として殺害した。
 同月29日朝、同じマンションで被告は、清掃作業員の女性を襲い階下に投げ落とそうとした。が、女性が騒ぎ抵抗したため逃走、別のマンションで小学4年の男の子を狙ったが、こちらも騒がれて失敗した。自転車置き場の防犯カメラに逃走時の被告の姿が写っていたことから逮捕された。
横浜地裁
【犯行の動機】
 幸福な家庭へのねたみ。人を高層階から投げ落としたいという欲望を抑えきれなかった。
【弁護側】→ 無罪
 事件前、うつ病で入院。正常な判断ができない状態にあった。「当時、妄想や幻覚の影響下にあった。刑事罰は問えない」と責任能力の無効を訴え、無罪を求めている。
【検察側の求刑】 → 無期懲役
 これに対し精神鑑定は「精神病の疾患なしに犯行は説明できないが、自分より弱者を狙うなど冷静・合理的な部分があり、影響は著しいものではない」としつつ「計画的で無差別な通り魔殺人。峻厳な刑が科せられなければならない」とした。
 そして11月25日の論告求刑で「完全責任能力はあるが精神疾患の影響をある程度は考慮せざるを得ない」として無期懲役を求刑した。
【被害者家族】 → 極刑を求む (10月14日公判)
弁護側の最終弁論は12月25日だが、あなたの判決は・・・・
「無罪」ならなぜ ?              「有罪」なら量刑は ?      
――――――――――――――――――― 13 ――――文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.117
参考資料
 いよいよ来年2009年5月21日(平成20年)から裁判員制度が施行される。これにより同年7月以降から実際に一般市民が裁判に参加することになる。「裁判院制度とは何か」を知りたい人はHPにあったWiKiPediaを以下に転載したので読んでください。
 裁判員制度は、市民(衆議院議員選挙の有権者)から無作為に選ばれた裁判員が裁判官とともに裁判を行う制度で、国民の司法参加により市民が持つ日常感覚や常識といったものを裁判に反映するとともに、司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上を図ることが目的とされている。裁判員制度が適用される事件は地方裁判所で行われる刑事裁判のうち、殺人罪、傷害致死罪、強盗致死傷罪、現住建造物等放火罪、身代金目的誘拐罪など、一定の重大な犯罪についての裁判である。例外として、「裁判員や親族に危害が加えられるおそれがあり、裁判員の関与が困難な事件」は裁判官のみで審理・裁判する(法3条)。被告人に拒否権はない。裁判は、原則として裁判員6名、裁判官3名の合議体で行われ、被告人が事実関係を争わない事件については、裁判員4名、裁判官1名で審理することが可能な制度となっている(法2条2項、3項)。裁判員は審理に参加して、裁判官とともに、証拠調べを行い、有罪か無罪かの判断と、有罪の場合の量刑の判断を行うが、法律の解釈についての判断や訴訟手続についての判断など、法律に関する専門知識が必要な事項については裁判官が担当する(法6条)。裁判員は、証人や被告人に質問することができる。有罪判決をするために必要な要件が満たされていると判断するには、合議体の過半数の賛成が必要で、裁判員と裁判官のそれぞれ1名は賛成しなければならない(一部立証責任が被告人に転換されている要件が満たされていると判断するためには、無罪判決をするために合議体の過半数の賛成が必要で、裁判員と裁判官のそれぞれ1名は賛成しなければならない)。以上の条件が満たされない場合は、評決が成立しない(有罪か無罪かの評決が成立しない場合には、被告人の利益に無罪判決をせざるを得ないと法務省は主張しているが、法令解釈権を持つ裁判所の裁判例、判例はまだ出ていない)。なお、連続殺人事件のように多数の事件があって、審理に長期間を要すると考えられる事件においては、複数の合議体を設けて、特定の事件について犯罪が成立するかどうか審理する合議体(複数の場合もあり)と、これらの合議体における結果および自らが担当した事件に対する犯罪の成否の結果に基づいて有罪と認められる場合には量刑を決定する合議体を設けて審理する方式も導入される予定である(部分判決制度)。裁判員制度導入によって、国民の量刑感覚が反映されるなどの効果が期待されるといわれている一方、国民に参加が強制される、国民の量刑感覚に従えば量刑がいわゆる量刑相場を超えて拡散する、公判前整理手続によって争点や証拠が予め絞られるため、現行の裁判官のみによる裁判と同様に徹底審理による真相解明や犯行の動機や経緯にまで立ち至った解明が難しくなるといった問題点が指摘されている。裁判員の負担を軽減するため、事実認定と量刑判断を分離すべきという意見もある。
 最高裁によると、全国の裁判員裁判対象事件は2004年の3791件から減少傾向にある。都道府県別で昨年、対象事件が最も多かったのは①大阪306件、②東京255件、③千葉214件の順。最も少なかったのは福井県の7件。罪名別では、①強盗致死傷695件、②殺人556件、現在建造物など放火286件、強姦致死傷218現在と続いた。(新聞8・5)
選ばれる確率は4911人に1人(全国平均)
文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.117―――――――14 ―――――――――――――――――
世界名作読み・詩編 ゼミ誌の題が「空 SORA」というのでとりあげました。
 ヴェルレーヌの作品『智慧』から「巻の三 屋根の向こうに」を紹介します。空を歌った詩です。前回同様二人の訳者のものです。訳者によって名作の印象・情景は、違うのか、違わないのか。そのへんを気にとめて吟唱してみてください。
※ポール・ヴェルレーヌ(1844-1896 1月8日夜デカルト街の陋屋にて死去。51歳)
訳者・堀口大学『智慧』から
新潮文庫『ヴェルレーヌ詩集』1958
     
智慧 巻の三 屋根の向こうに
6
屋根の向こうに       
   空は青いよ、 空は静かよ ! 
屋根の向こうに
   木の葉が揺れるよ。
  見上げる空に鐘が鳴り出す
     静かに澄んで。
  見上げる木の間に小鳥が歌う
      胸のなげきを。
     神よ、神よ、あれが「人生」でございましょう
        静かに単純にあそこにあるあれが。
     あの平和なもの音は
        市(まち)の方から来ますもの。
      ―― どうしたというのか、そんな所で、
           絶え間なく泣きつづけるお前は、
      一体どうなったのか
       
         お前の青春は ?        
 
――――――――――――――――――― 15 ――――文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.117
             
訳者・橋本一明『言葉なき恋歌』から
角川書店『ヴェルレーヌ詩集』1967
空は 屋根の向こうに…
空は  屋根の向こうに  あんなにも
   青く  しずかです
一本の木が  屋根の向こうに  てのひらを
   ゆすっています
     いま見える  あの空に  鐘の音が
        しずかに  わたり
     いま見える  あの木の上に  一羽の鳥が
        嘆きの歌を  うたっています
           神さま  神さま  人生はあそこにあります
               素朴に  また  おだやかに
           あの平和な  ざわめきは  町から
               きこえてくるのです
             ――おお  底には絶え間なく泣いているおまえ
                どうしてしまった
             お言い  そこにいるおまえ  おまえの青春を
                どうしてしまった ?
文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.117―――――――16 ―――――――――――――――――
社会観察「いじめ問題」議論
新聞 朝日新聞11月21日 児童生徒の暴力最多
ネットいじめ21%増 文部省07年度調査
 全国の学校が07年度に確認した児童生徒の暴力行為は5万2756件と前年度比で18%増え、小中高のすべてで過去最多だったことが、文部科学省が20日付で発表した「問題行動調査」でわかった。
 なぜ増加したかについて、文科省は、次の見解を要因にあげている。
○ 自分の感情がコントロールできない。
○ ルールを守る意識やコミュニケーション能力が低下している。
 いじめは、子どものあいだばかりではありません。高校生、大学生(何年か前に、日大の地方校舎でもあって事件に発展しニュースになった)社会、軍隊、地域にもあります。
 割れたガラス窓一枚を放置しておくと、その建物が、その地区が、そしてその町が荒れ果てる。といいますが、いじめも同じです。事件としては小さいが放置しておくと大事件に発展します。現在、世界各地で起きている紛争は、そのほとんどがイジメからです。アフリカの混乱。先日、インドのムンバイで起きた同時テロ。もとを辿ればみんな小さないじめ(格差もイジメの一つです)から発展したものです。植物にイジメがあるかどうか、わかりませんが、集団生活する動物には、イジメはつきものです。が、それらはたいてい生存本能からです。面白半分、憂さ晴らしは人間だけです。人間のイジメは、執拗で悪質です。なぜ、人間はイジメするのか話し合ってみましょう。
イジメアンケート
問1. あなたはイジメをしたことがある。
    ある → イ.いつごろ  ロ.なぜ  ハ.どんなイジメを
問2. あなたはイジメを見たことがあるか ?
    ある → イ.面白かった  ロ.自分でなくてほっとした  
問3. あなたはイジメられたことがありますか ?
    ある → イ.いつごろ  ロ.どんなイジメを  ハ.解決の有無は
問4. イジメを受けたときはどうするか ?
イ.泣き寝入り  ロ.仕返し  ハ.話し合い
問5. 1人だけイジメを受けている人がいたら、どうするか。
    イ.味方になる  ロ.なにもしない  ハ.皆と一緒にイジメに加わる
――――――――――――――――――― 17 ――――文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.117
土壌館ニュース(12・1ゼミ報告)
後期航路9日目、
参加者は13名
 
 ゼミ誌作成も追い込みに入ったようです。最終の校正ゲラが配られました。編集委員の皆さん、校正の皆さんご苦労さま。あと少しです。
参加者紹介(敬称・順番略)
 
阪本義明、 大野菜摘、 川端里佳、 本名友子、 長沼知子、 大谷理恵、
瀧澤亮佑、 秋山有香、 橋本祥大、 小黒貴之、 臼杵友之、 田山千夏子  
飯島優季  
司会進行は、長沼知子さん
1.ゼミ誌掲載原稿の校正。パソコン操作。
   
2.  授業評価アンケート
3. 石井和子訳『 シュリーマン旅行記 清国・日本』を読む
   幕末の日本に来たシュリーマンは、1ケ月の日本滞在で観察したことを書 
   いた。「江戸上陸」「八王子」「江戸」そして「日本文明論」
   読んだのは「江戸上陸」
   
文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.117―――――――18 ―――――――――――――――――
新聞・話題 常用漢字「葛」「箋」で決着 (2008年11月26日読売新聞)
       印刷標準字体 大量採用
「常用漢字表」(1945字)の見直しを行っている文化審議会の漢字小委員会は25日、新たに常用漢字に加える「葛」や「箋」など191字について一部を除き、書籍や情報機器などで幅広く使われている「印刷標準字体」をそのまま採用する方針を決めた。
 しかし、「常用漢字表の字体と新しく加わる字体で整合性を取るべきだ」との反対意見も出され、複数の書き方がある「しょくへん」(食、 )と「しんにゅう」を含む漢字は、次回に結論が持ち越された。
来年1月に191字の音訓の読み方などについて試案を公表
再検討を加え
2010年2月ごろに文部科学省に答申する。
常用漢字表に加える主な字体と保留された字体
【印刷標準字体を使用】
葛   彙   煎   箋   憚
嘲   捗   ?   剥   頬  
【簡易慣用字体を使用】
 
曽  麺  痩
【保留】
遡   遜   謎   餌   餅
土壌館創作道場・プレイバック青春観察
汐留青春グラフィティ⑦は休みます
 都会のど真ん中にある貨物駅の臨時作業員には、いろんな人がいた。倒産した会社の社長。ギャンブルでしくじった中年男、バンドマン、劇団員、ボクサーを目指す三回戦ボーイ、謎の受験生、不気味なフランケン、プロ野球選手。この手記の作者は、ベトナム戦争反対集会で機動隊と衝突。警察に追われることになった。潜伏したのは、汐留にある貨物駅だった。毎日、日本全国から鉄道荷物が到着し、また全国に発送されていた。そこには、いろんな青春があった。奇妙な連中がいた。
――――――――――――――――――― 19 ――――文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.117
ゼミ雑誌発行12月15日を目指して
ゼミ誌制作は順調に
 ゼミの実質的成果は、決められた期日までのゼミ雑誌発行にあります。毎年、納品日の遅れが指摘されています。が、下原ゼミでは、全員の協力で、編集作業が順調に進んでします。
 編集委員のみなさんご苦労さまです。
・編集委員長=川端里佳 大野菜摘
・編集副委員長=小黒貴之
・編集委員=阪本義明 橋本祥大 飯島優季 瀧澤亮佑 
・補助委員=本名友子 長沼知子 大谷理恵 野島 龍 田山千夏子 臼杵友之 
      秋山有香 神田泰佑 刀祢平知也
ゼミ誌作成の進行過程と予定は以下の通りです
○決定事項 6月9日報告 → 印刷会社、フジワラ印刷(株)決定             
      6月16日 テーマ決め → 「空」内定
      ゼミ誌表紙デザイン、奥付など → 小黒、田山が担当
      原稿締め切り → 夏休み明け
      タイトル決め → 7月14日に決定「ドレミファそらシド」              
1. 6月中旬 → ①「ゼミ誌発行申請書」の提出。出版編集室に
2. 6月~  → ゼミ雑誌の装丁を話し合う。表紙デザインなど
3. 7月下旬 → 原稿依頼し、締め切り日、夏休み明け9月22日(月)。
4. 10月上旬 → 編集委員は、内定の印刷会社から②「見積書」をもらう。
5. ~11月 → 「見積書」の提出。印刷会社と相談しながらゼミ雑誌作成。
  10月18日 → ページ数を増やしたい人は連絡。
  10月19日 → 最初から最後まで
  10月20日 → 
  11月10日 → ゼミ誌原稿の最終締め切り。
   12月 1日 → 最終校正
6. 12月 → 15日までにゼミ誌提出、③「請求書」提出
注意事項!!
◎ ①【ゼミ誌発行申請書】、②【見積書】、③【請求書】以上3種類の書類が提出されない
  場合はゼミ誌の発行はできません。補助金の支払いも認められません。
正月休みにゼミ誌を読んできてもらい、新年明け最初のゼミで合評会を行います。
☆ 2009年1月19日(月) ゼミ誌合評会
文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.117――――――20 ――――――――――――――――― 
掲示板
提出原稿について
◎ 課題原稿 → テキスト配布。主に裁判もの。告訴状、弁護、判決理由
○ 車内観察 → 電車の車内で観察したこと(車内から社会を、時代を見通す)
○ 1日の記録 → 自分の1日を観察する(自分のことをどれだけ書けるか)
○ 生き物観察 → 人間、動物、草木、生あるものすべての観察
 締め切りはありません。書けた人は、どんどん提出し、皆の評価をみてみましょう。何事も切磋琢磨です。
後期・配布課題テキスト一覧
 9月22日 → 「奇術師美人妻殺人疑惑事件」志賀直哉『ハンの犯罪』
 9月29日 → ヘミングウェイ『殺し屋』、ニコライの『古事記』
10月 6日 → ルナール『にんじん』、志賀直哉『幼女を盗む話』
10月20日 → ルナール『にんじん』、「尾道幼女誘拐事件公判」
10月27日 → カミュ『異邦人』「太陽のせい殺人事件」
11月10日  → 「コルシカ愛息射殺事件」メリメ作品から
11月17日  → 「金貸し老婆姉妹強盗殺人事件」ドストエフスキー作品から
12月 1日 → 「ある死刑囚の告白」サキ作品から
ドストエフスキー情報
  
12月20日(土) : ドストエーフスキイ全作品読む会「読書会」、 
           会場は東京芸術劇場小会1議室 午後2時から
           講演者・高橋誠一郎氏(東海大教授)
 2月21日(土) :  ドストエーフスキイ全作品を読む会「読書会」
           会場は東京芸術劇場小会7 報告者・長野正
           作品『カラマーゾフの兄弟』
詳細は、編集室
評価基準 ゼミ誌発表(合)+課題・提出原稿+出席+α=評価(60~120)                               
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
編集室便り
☆「2008年、読書と創作の旅」内容は、本通信に掲載します。
☆ 原稿、歓迎します。学校で直接手渡すか、下記の郵便住所かメール先に送ってください。
 「下原ゼミ通信」編集室宛
  住所〒274-0825 船橋市前原西6-1-12-816 下原方
  メール: TEL・FAX:047-475-1582  toshihiko@shimohara.net
☆本通信はHP「土壌館創作道場」に掲載されています。
ゼミ誌について
土壌館・下原ゼミ課題           2008・12・1配布
サキ(1870-1916 第一次世界大戦で戦死)
「ある死刑囚の告白」から
           名前・
 荒唐無稽な小作品ですが、冤罪というものは、こんな単純なことからも起こるかも知れません。あなたが主人公の死刑囚だとしたら、どんな陳述書を書きますか。
 少しややこしい話ですが、事件の推移、自分がなぜ犯人ではないのかを、第三者がわかるように書いてください。狙いは、読解力と説明力です。
陳述書
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
.-----------------------------------
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
4.その理由は
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
.-----------------------------------
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
6.弁護するとしたら
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
.-----------------------------------
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
7.いま格差社会といわれるが、被告の非凡人と凡人をどう思うか。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※ 長い場合は他の用紙でも結構です
奇術師美人妻変死事件
  
裁判実況中継
現 場 = 芝居・見世物小屋 
観 客 = 当日は300人余り
目撃者 = 興行・座長一名、ナイフ投げ演芸助手一名、巡査一名
       観客300余名
状 況 = 戸板大の板の前に女を立たせ、二間(約三・七㍍)離れたところから奇術
       師が出刃包丁ほどのナイフを投げる。
       ナイフは、女の体から二寸(六センチ)と離れない距離に突き刺さる。奇
       術師は、掛け声とともに、体にナイフの輪郭をとるように次々となげる。
推 移 = 何本目かのとき、首に投げたナイフが女の頚動脈に突き刺さった。血が
       どっとあふれ女は、前に倒れて、そのままこと切れた。
公 判 開始
―― 公判の後半を開始します。前半は、座長と助手の訊問がありました。後半は、被告人
   の訊問を行います。被告人、前へ。
裁判官 「今、座長と助手とを調べたからそれから先をきくぞ」
被 告 「――」うなずく。
裁判官 「お前は妻をこれまで少しも愛した事はないのか ? 」
被 告 「結婚した日から赤子を産む時までは心から私は妻を愛しておりました」
裁判官 「どうして、それが不和になったのだ」
被 告 「妻の生んだ赤子が私の子でない事を知ったからです」
裁判官 「お前はその相手の男を知っているのか ? 」
被 告 「想像しています。それは妻の従兄です」
裁判官 「お前の知っている男か ? 」
被 告 「親しかった友だちです。その男が2人の結婚を言い出したのです。その男から
     私は勧められたのです」
裁判官 「お前の所へ来る前の関係だろうな ? 」
被 告 「もちろんそうです。赤子は渡しの所へ来て8月日に生まれたのです」
裁判官 「早産だと助手の男は言っていたが・・・ ? 」
「おー早よ、きてくれんかあ」
太っちょなまずは、にわかに元気になって、手を振った。
 フランケンはひょいとこちらを見ると、すぐに事情を察した。タバコを線路にはじきとばすと、小脇の座布団とカバンをラクビーボールのように抱え込んで、一直線にダッシュしてきた。まるでサイが突進してくるような迫力。皆、いっせいに道をあけた。
「アカンというよるに、積みよって。それも一度わしが下ろしたものをまた積みよって」太っちょなまずは半泣き声で言った。「見てみい。ほんま、こんねん積み込みよって」
「どんなや」フランケンは横柄な態度でデッキの前に立った。とたん、奇声を発した。「あ、あ、あ、あー何や、これ何や」
「アカンて言いよるに積みよって」
「上等じゃないか」
フランケンは、乱暴に吐き捨てて座布団とカバンを近くに置いた。
そして、デッキに片足を乗せると、猛烈ないきおいで荷物を下ろしはじめた。大きな荷物も、ポンポンとホームに投げ出された。皆は、あわてて遠くに逃げた。フランケンの迫力に遠巻きにながめるしかなかった。南条班長も、呆然として立っていた。フランケンは、あっというまに入り口付近の荷物を下ろしてしまうと、少しペースを落として
「こんなの後や、後や」と、鼻歌まじりで下ろしだした。
 太っちょなまずも喜色満面で、下ろし作業に加わった。デッキの荷物がなくなると二人は、
――――――――――――――――――― 19 ――――文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.115
貨車の中の荷物まで下ろしにかかった。
「こりゃあだめだわ」
早川は、大袈裟に肩をすくめてため息つく。
 騒ぎをきいて見物に集まってきていたほかの臨職たちも、きびすをかえした。と、そのとき、いきなり
「き、貴様ら、よさんか!!」
怒号が、とどろいた。
 南条班長だった。皆もびっくりしたが、貨車のなかの二人も驚いたようだ。二人そろってぞろりデッキに出てきた。
「なんだあ、ジイさん」フランケンはにらみつけて言った。「貴様とは何だよ。まだ戦争にでもいってる気でいるのか」
「もうろくして、ごっちやになっとるんか」太っちょなまずは、ヒヒヒと笑ってからかった。「いま、やつちょるのはベトナム戦争やで」
「何だとお!」
南条班長は激昂して、つかつかと歩み寄った。
「ほれ、爆弾や」
叫んで太っちょなまずは、木箱を放り投げた。
 タイミングよく、班長が踏みこんだところだった。
「あっ!あぶない!」
皆の悲鳴と同時に、木箱はゴロンと一回転すると班長の右足にあたった。ごっんという鈍い音がした。次の瞬間、鳥のような悲鳴をあげて南条班長はうずくまった。一瞬ホームは静まり返った。が、突然けたたましく鳴り始めたベルに、ふたたび騒然とした。南条班長は、よろよろ立ち上がった。そうして恨めしそうに睨みつけると、ひざ小僧をさすりながら
「あんたら日の丸だからええけどな。うちじゃたいして保障はでねえんだ」
と愚痴るように言った。
 二人とも、さすがきまり悪そうに立っていたが、発車のベルに、これ幸いとばかりに、ドアを力任せに閉めた。ゆっくり走り出した貨物車の窓から二人が、大口をあけて笑っているのが見えた。
「おい、これ片づけといてくれ」
南条班長は、弱々しく言うと、びつこをひきながら行ってしまった。
「やっぱ国鉄さんには、勝てねえね」
「貴様!って怒鳴ったときは、びっくらこいたね」
「さすが、もと軍曹だよな」
「軍曹?もっとうえだろ職業軍人だったっていうんだから」
団とヒッピー磯村は、かってに話し合った。
「ニャロメ、むかしだったらあの二人、ピンタか銃殺もんだぜ」高槻は、叫んで、遠く去っていく列車に向かって銃を撃つまねをして叫んだ。「バーン、バーン」
「軍曹殿!」
団が、大声で最敬礼した。が、だれも笑わなかった。
 夕方、六時。ようやく長い一日が終わった。日勤の臨職は、にぎやかに風呂場に向かった。夜勤組は、疲れきった顔で食堂に向かった。私は、アキラさんと三階につづく非常階段をあがっていった。台車の整理をしていて遅くなったのだ。すっかり夜のとばりがおりた操車場から寒風が音をたてて吹きあげてきた。
「ひえーたまらん」
アキラさんは悲鳴をあげて肩をすぼめながらも立ち止まった。
「一曲やるんですか」
私は聞いた。
 アキラさんは、流しの歌手をしていたとの話だ。それでか、よく最終貨物が出ていった構内で、一人残って歌声を張り上げていた。皆は、音痴だと笑っていたが、誰もいない深夜の貨物駅に流れる彼の歌声は、胸にしみこむものがあった。彼は小林旭の歌が十八番だった。
 最終貨物が出ていって静かになると、決まって
「夜がまたくる―」
 
と、甲高い歌声をはりあげた。夕方、たまにここで歌っていたので、今からやりだすのかと思った。
「いやあ、やめとくよ」アキラさんは、苦笑して見下ろして言った。「観客が眠っちゃってるからな」
眼下のトラックターミナルは、闇に閉ざされ静まり返っていた。黒々と並ぶ大型輸送トラックやコンテナ車は、眠りこける巨獣の群れのようにみえた。
私は、笑って頷いた。見上げると、はるか向こうのビルの上に大きなまんまるい月がぽっかり浮かんでいた。赤い月だった。

シェアありがとうございます

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

コメントを残す

PAGE TOP ↑