文芸研究Ⅱ 下原ゼミ通信No.135

公開日: 

日本大学芸術学部文芸学科     2009年(平成21年)11月9日発行
文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.135
BUNGEIKENKYU Ⅱ SHIMOHARAZEMI TSUSHIN
                              編集発行人 下原敏彦
                              
後期9/28 10/19 10/26 11/9 11/16 11/24 11/30 12/7 12/14 1/18  
  
2009年、読書と創作の旅
11・9下原ゼミ
11月9日(月)の下原ゼミは、下記の要領で行います。文ゼミ教室2
 1.出欠・ゼミ通信配布・司会進行指名 
 
 2.ゼミ誌原稿提出&刊行に向けての編集作業についての報告
 3. 課題発表・「ダム中止問題」コラム、新聞記事から「誘拐事件」創作
 4. テキスト『兒を盗む話』読み&名作紹介(従軍ルポ)
      
後期は、観察から創作へ(OR新聞記事から物語へ)
10・26ゼミ 前回ゼミ報告
社会問題に挑戦
 前回(10月26日)ゼミは目下、「振り込め詐欺撲滅月間」(10月15から日~11月14日)ということで、ここ数年、深刻な社会問題となっている振り込め詐欺の問題を話し合った。 
 人は、なぜ振り込んでしまうのか。詐欺犯たちの犯罪目的は、只一つ、金銭欲望と分かり易いが、被害にあった人たちの心理は分かりにくい。なぜなら、詐欺被害にあった多くの人は、事件のことをよく知っており、自分は騙されたりしない、引っかからない。そんな自信というか確信を持っているからだという。騙される側の深層心理を知るために、この社会問題を課題とした。が、芸祭、ゼミ雑誌づくり、風邪やインフルエンザ流行もあってか、当日までの提出作品は、塩崎さんの携帯電話を巡る創作作品「登録」一点だった。
 ※ 社会問題を扱った作品は、最近では、話題の村上春樹氏『1Q84』がそうだという。オウム事件が下敷きになっているとの情報。目下、書店で、立ち読み中。
■ 塩崎真佑さんの作品「登録」を読む
アポ電=身内を装って電話をかけ「電話番号が変わった」などの嘘を言って番号登録させた
    上で,後日同じ電話番号から電話をかけて金を騙し取る詐欺手法。(goo辞書から)
 アポ電を材料にした小品。姪の私とお婆ちゃんの電話のやりとりが面白い。何事にも動じないお婆ちゃんが頼もしい。
合評 「よく書けている」「作者らしい文体」「こんなお婆さんなら犯人もあきらめるかも」


文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.135 ―――――――― 2 ―――――――――――――
進化する詐欺手法  実在の弁護士を騙る手口
 塩崎さんの作品にみられるアポ電詐欺のように、犯人たちは手を変え、品を変えている。最近になって古典となった「オレオレ」詐欺が復活しているというが、それもまた、今の情報だけに頼る人たちにとっては、新手の詐欺手法といえる。詐欺小道具として、複数関係者、警察官、保険会社社員といった人たちを使っていたが、最新情報では、弁護士名、それも実在の弁護士を騙る詐欺犯が現れたという。以下は、その新聞記事である。
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2009年10月31日 土曜日 朝日新聞(朝刊) 新手の振り込め詐欺 注意
実在弁護士装い「あなた訴えられています」
 「あなたは商品代金未払いで訴えられている。対処するため弁護士が必要だ」。そんな電話やはがきが来て、実在の弁護士を装った人物に「着手金」をだまし取られる新手の振り込め詐欺が相次いでいる。・・・3~10月に全国で42件の相談、うち東京・千葉・京都・岡山の6件で計約1600万円の実害。「被害は氷山の一角」・・・手口は主に二つのパターン。
① 消費者団体を装うはがき
 あなたは商品の代金未払いを理由に訴えられた、などと記されている。心当たりがないので電話すると「応訴しないと認めたことになる」などと言われて・・・実在の弁護士を紹介される。ところが、連絡先の電話番号は偽物。対応した人物から「受任契約」と称して着手金を振り込むよう指示される。
② ニセ弁護士からの電話
 実在の弁護士名をかたる人物から「訴訟を起こせば被害金を取り戻せる」などと電話がかかってきて、着手金をだまし取ろうとする。
 ・・・・「弁護士が顔を合わせずに着手金を払えということはない」「不審な点があれば、弁護士会に連絡先などを確認してほしい」
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テキスト『灰色の月』を読む
 テキスト読みは、日本文学のなかでも名作と呼ばれる『灰色の月』をとりあげた。この作品は、かつては中学・高校の国語教科書の定番だった。が、参加者全員は初読みとのこと。小説の神様も、いまは昔、お堂の奥にミイラと化して鎮座するのみか。(他の授業で「たき火」を読んだという人もいた…とすれば、神様はまだ健全のようだ。よかった)
 志賀直哉の車内外の観察作品は、たんに観察に留まらず、その時代をも捉え、訴えているのが特徴だ。『網走まで』では北海道開発への不安と警鐘を、『夫婦』は占領軍の親子から家族は世界中どこも同じという安心感を、といったふうにである。『灰色の月』は静かではあるが激しい憤怒を感じる。「こんな日本に誰がした!」そんな怒号が聞こえてくる。
 この作品は末尾の「昭和20年10月16日の事である。」の一行が、全てを物語っている。
二ヶ月前の8月15日、日本は終戦を迎えた。500万人に及ぶ日本人の犠牲、ヒロシマ、ナガサキ、焦土と化した首都・東京。山手線が走っていること自体に驚く。上野には、戦争孤児や餓死者があふれている。「暗澹たる気持のまま渋谷駅で電車を降りた」が重い。
【続々創作余談】『灰色の月』は、あの通りの経験をした。あの場合、その子供をどうしてやったらいいのか、仮に家へ連れて来ても、自家の者だけでも足りない食料で、又、自身を考えても程度こそ違うが、既に軽い栄養失調にかかっている時で、どうすることも出来なかった。全くひどい時代だった。
 小説とも思えぬ短編だが、この作品が日本人に訴えるものは大きい。
――――――――――――――――― 3 ―――――――文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.135
2009年読書と創作の旅
11・9ゼミプログラム
1.「通信」配布、出欠、連絡事項
  ゼミ誌編集委員 → ゼミ誌刊行に向けての報告。
            
2.司会進行指名 (司会 → 授業進行、朗読者の指名など)
3. 私の愛読書紹介
  まだ発表していない人(内田さん、永井さん)
4.課題1の発表 コラム・創作   ダムは必要か否か・・・・・・議論
ダム建設に反対か、賛成か 中立か
清水理絵
 その判断は、ダムの有用性と、出費のバランスで決めるのがまっとうであろうが、そこら辺はとんと判らない。
 なぜ判らないかというと勉強不足、というものが挙げられるが、それよりも、私が部外者だからだ。
 例えば、私が住民だったらと考える。そりゃあ、移住のためのお金だって保障はあったのだろうけど、住み慣れた土地から立ち退く。それだけで大ストレスだ。動きたくない人も大勢いただろう。
 因みに私も、校舎が江古田になったら実家に帰ってこいと言われているが、帰る気ゼロである。
 いや、話がそれた。つまり、お金積まれたって出ていきたくない人がいるのである。よくは知らないが、立ち退きの保障って、どれくらい出るのだろう。公共工事なのだから、きっと税金。税金で、潤沢に保障を行ったら、それこそ問題になりそうだ。だから多分、あまり出なかったのではと思う。それとも民間から出るのだろうか? ……ググる体力がない。
 まあ、立ち退きで裕福になれたという話は聞いたことがないから、「儲けもん」という金額はもらえないのだろう。
 で、立ち退けと一方的に言われる。動かないと言っても、強制退去だと言われる。愛着のある家から追われる。
 しかしダム推進派もいたらしい。そういう人からは、今回のことは喜ばれている。だけれど、不満たらたらで、追い出された人にとっては、「何じゃそりゃあ」だ。懐かしい故郷が潰され、工事は途中で止まり、誰の役にも立たない。邪魔物扱いを受ける、懐かしい我が故郷。悲しいではないか。
 だけどこの問題は既に、故郷が潰されることじゃない。潰された故郷が、そのまま放置され、何の役にも立たないことだ。
 
 治水、利水、砂防などの機能がどうこうで、それはどれだけの利益、効果があって、だから、ダムは建設せねばならない。今、国には、金が無いのだ。そんな大して効果もない工事に、金をかけるのは、国の自殺行為だ。
 どちらの意見も真っ当に見え、科学的根拠も裏付けも分からない。だから私は、中立。一番卑怯な態度でもあるけれど、中立。
 住民の悔しさも、政治家たちの意見も、どちらも捨てきれず、中立。です。
文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.135 ――――――――4 ――――――――――――――――
■ そうですね。難しいですね。あんなに大騒ぎして成田空港をつくったのに、いまになったら、やっぱり羽田がいいとか。現在、どんなにすばらしいプランでも、未来のことは誰もわからない。本当に困りますね。
ダム問題は誰のもの
塩崎 真佑
 橋の寿命は五十年、ダムの寿命は百年という。これを長いとみるか短いとみるかは人それぞれであるが、役目を終えたダムの行きつく先を思い浮かべることが出来るだろうか。
 先日、八ツ場ダム建設現場の写真を見た。山肌が露わになり川には巨大な橋脚が立っている。民主党政権が掲げた見直し策によりダム建設自体は滞っているが、並行して進められた国道の付け替え工事は健在のようである。
 依然として維持管理が問われ続ける八ツ場ダムではあるが、とうに計画段階は過ぎてしまってる。自然環境と地域住民に手をかけたからには、より長く利用できるダム設備を整えてほしい。そして、この無駄なダムを最後として私たちのダムへの依存を解き離すことが必要ではないだろうか。
 ダムによって得られるものは大きい。しかし、ダムによって水没した自然や生き物、そして町並みは二度と戻らない。はたして曲がりくねった峠道はいつまで続くのだろうか。
■ ダム問題はどの範ちゅうで考えるか。地域、人間、自然、20年先まで、100年先まで。いまは、お金のことばかりですが、それ以外のことで考えたいですね。
      
      ※         ※        ※         ※   
□この問題について、2009年11月2日の朝日新聞「声」欄にこんな意見が寄せられていた。
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都会の犠牲になるダム要らぬ
 社会保険労務士 笹岡万亀夫(78)
 政権が代わり、随分とダム建設の「中止」「凍結」という報道に接するようになりました。何十年もの歳月をかけながら今もって完成に至らない施設は、典型的な前政権の無駄遣いに見えます。見方を変えれば、こんなにも長く地元住民、自然をいじめてきたのかとやり切れない思いです。それだけの間に木を植え、山を育てていたなら、今はきっと緑豊かな国土に変わっていたでしょう。投じられた巨費を山の手入れや森林整備に使っていたなら、雇用の増大や熊の出没、猿害の予防対策に役立ったのでは、と考えてしまいます。
 作家の石川達三が奥多摩の小河内ダム建設に翻弄される人々を描いた「日陰の村」を昔読みました。小説は、発展する東京の犠牲になって枯れていくものの姿を描いていました。同種の哀史が各地にありながら、政治家の手柄話や業者の儲け話の陰に隠れているとしたら由々しきことです。
 政官業癒着の話さえ伝わってきた開発行政の流れから離れ、立ち止まって、健全な国土保全の在り方から見つめ直す。政権交代は、その絶好の機会とすべきだと考えます。
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 ダム建設問題については、総じて反対意見が多い。が、建設推進するとすれば、どんな必要論があるか。治水、利水は自然環境保護の観点から考えると。
 1960年代からはじまった日本経済の高度成長を支えたのはダムからの電力だった。が、水力発電が火力から原子力に移行するなかダムの役目も、洪水や渇水対策といった役目に変わってきた。
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読書の秋
☆ 観察から創作作品へ → 石川達三『日陰の村』
石川達三の文体は、三段論法的に流れていくので分かり易く、あきないで読める。
ダム開発の有無が論争される、今こそ、読まれるべき本。
5. 課題2の発表 幼児誘拐の新聞記事からの創作 ・・・・・発表作品の合評
好きな人ができました
清水理絵
 これは全く運命的な出来事なのさ。神様が巡り会わせてくれた。だから、僕たちが一つになることは当たり前なんだ。
 僕は見たよ。ハーフパンツから伸びる白い足。僕の顔を見てはにかんで。確信したよ。君は、僕に恋している。僕も、君が嫌いじゃあない。家に連れてかえってあげる。じっくりと愛を温めようじゃないか。
 え? 何? 嫌? おうちに帰して? 何をバカなことを言っているんだい? 僕たちは、これから夫婦になるんだ。ここが、君の家なんだよ。大丈夫。
 君は、このアパートが独身者専用だから心配しているんだね。大丈夫。バレないよ。安心をし。まったく、可愛いなあ。可愛い。可愛い……痛っ、噛むことないじゃないか。愛情表現は甘噛みまでだよ。ああ、そんなに大声出さないで。近所迷惑じゃないか。
 よしよし、いい子だよ。いい子。怖いことなんかないから。え? ロープをほどいてって? だって、ロープをほどいたら君は、天使になってお空へ飛んでいってしまうじゃないか。いい子だから大人しくしていなさい。
 もう、僕たちは夫婦さ。あんまり騒ぐと、夕食抜きにしちゃうぞ。
 ふ う ふ な ん だ か ら                  (了)
■ 文字通り甘い言葉ですが、不気味さも伝わってきます。
   ※          ※         ※         ※     
                 
つなわたり
塩崎 真佑
玲菜ちゃんが振り向いたとき、私はもう私ではなかった。
スタンガンを持ちバチリッと音がすると、その驚いた顔が跳ね上がり私の顔を見やった。玲菜ちゃんは私の腕を振り払おうともがいたが、私にはその拒絶する手さえも捕まえてくださいと言っているような気がした。
声の出ない悲鳴はどこへ響いているのだろう。
玲菜ちゃんからは「助けて」という声が失われてしまったようで、私の方はというと必死に押しとどめようとする理性があり、またどんなことをしても止められないだろうという意思が互いに互いを責め立てていた。けれどもそうした自分を自分で眺める余裕があり、その私の右手にはスタンガンが握られ、なかなか私の手に落ちない少女を見下ろしていた。
私の手の中には玲菜ちゃんしかいなのだ。
とても偏屈ではあったけれど、私は私なりに一人綱渡りをしながらここまで進んできた。子供なんてやつはちっともかわいくない。
「忘れた」
文芸研究Ⅱ下原ゼミNo・135―――――――― 6――――――――――――――――
悪びれもなく教科書を忘れる男子生徒がいるかと思えば、その脇で教室を抜けだそうと企む者がいる。叱り続けても一回、二回、三回と繰り返されるばかりで、挙句の果てには「かわいそうじゃありませんか」と父兄が文句を言ってくる。
「子供さえ好きならば」
そういう先生がいるけれど、「嫌いなんです、わたしっ」なんて口が裂けても言えやしない。うるさくて無知で無神経で、ときどき大人びる。やけくそになって教師家業を続けていたら、あっという間に私は学校から見放されてしまった。
「あなたは真面目なのよ」
いつの日か誰かが私に忠告をしていた。
「決して間違えたことはしなくて、他人のことじゃほんとに傷つくこともないと思う」
そう言ったのはかつての友人だったのかそれとも単なる知人であったのか、さよならも言わず私の元から立ち去ってしまった。
ときどき、思いだすことがある。
学校のチャイムが鳴ったとき、机の上に並べられた教科書と鉛筆が乗っかって私は一人席に座っている。ざわざわとクラスメイトの声を聞きながら、私はずっと決まりを守って生きてきた。
私はかなり変なのかもしれない。普通と違うのかもしれない。先生たちの集まっているところを見ると一人だけ浮き上がっているような感じがして、子供の前に立つと急にがらりと変わったように威張り散らす。
真っ昼間からぶらぶらと歩いていると、つい私は子供を探してしまう。ランドセルや制服はまだ見当たらない時間のはずなのに、キョロキョロと昼飯を片手に通学路をたどっていく。そして、結局いつも冷え冷えとした弁当を持ち帰って箸でつまむのだ。もう騒がしい暮らしはお終いだと思っていたら、今度は取り残されたおかずのような感覚がする。そんな日が幾日も続くようであった。
私は今まで細い一本道を歩いていて、そこから落ちたらお終いだと思っていた。けれど、ある日ふとしたことで真っ逆さまに落っこちて茫然としていると、目に入ったのが一人の女の子だった。
誰もいないビルの隅でその女の子は一人ふわりと笑った。
私はものすごく単純なただの人間なのだろう。
スタンガンを武器に玲菜ちゃんを自宅に連れ込むと、途端にこの子がいなくなってしまったら自分はどうなるのだろうと不安になった。ぐたりとして身体を支えるものがないと倒れてしまいそうな状態であったが、逃げ出してしまうのではないかという思いが私を非道にさせ、スタンガンを押し当て玲菜ちゃんを大型の工具箱に閉じ込めた。
また、ある時は玲菜ちゃんを居間に座らせ私は何もせずその様子を見続けた。そして、その自分自身で作りだした間に耐えきれなくなると、私は躊躇なくその首を絞めた。
私は不幸なのかもしれない。
その少女を見つけた時に、話しかける言葉はひとつも見当たらなかった。その少女の名前を探しに出かけた時ほど雨上がりの空がきれいだと感じることはなかった。そして、玲菜ちゃんを知るたびに私は自分が単純なただの人間だと言いたかった。
警察官が私を取り押さえる瞬間、初めて玲菜ちゃんと私の目が合った。そして、玲菜ちゃんはぶるっと肩を震わせると私から顔を背けた。
「ありがとう」
そう、私は玲菜ちゃんにだけ呟いた。
■ 犯行にいたる動機や子供に対する誘拐犯の心の内がよくわかります。スタンガンを使っての犯行に臨場感があるのも恐ろしく感じます。
―――――――――――――――――― 7 ――――― 文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.135
テキスト・志賀直哉『兒を盗む話』の読み
 志賀直哉の作品のなかに誘拐犯の気持になりきって書いた作品がある。一人暮らしの寂しさからたいした理由もなく幼女を監禁する。
6. 新聞記事関連で名作ルポタージュ読み「戦争という異常な日常の観察」
 作家の井上靖と聞いても、最近の若い人は、あまり知らないと思う。川端康成がノーベル文学賞を受賞したあと、次の候補者は、この井上靖だった。(もっとも、後になって受賞したのは、大江健三郎だったが…)当時の日本文学の第一人者だった。この作家が兵士として中国戦線に出征したときの日記が、このたび親族によって発表された。「一日の記録」だが戦争という、異常な日常の観察記録である。雑誌『新潮』12月号に全文掲載。
井上靖の従軍日記見つかる
 10月27日の読売新聞に「井上靖の従軍日記発見」の記事があった。11月3日の朝日新聞にも同様の記事が掲載されていた。
「神様!一日も早く帰して下さい」こんな大見出しの記事だった。以下、朝日抜粋。
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 作家・井上靖(1907~91)の日中戦争の従軍日記が、妻ふみさんの遺品から見つかった。召集令状が届いた37年8月25日から翌年3月7日まであり、「神様!一日も早く帰して下さい」など、行軍のつらさを素直に吐露している。井上文学に新たな光を当てる資料といえる。長男でドイツ文学者の修一さんが見つけた。井上は大阪毎日新聞学芸部に在籍中に出征した。日記には細かな字で、日常や心情が記録されていた。
 例えば10月9日、「足の裏にいっぱい豆ができて痛くてたまらぬ」と行軍の苦しさを記し、5日後には「軍隊というところはただ辛いだけ」と嘆く。11月6日に脚気と診断され入院、以降は野戦病院を転々とする。仲間に対し、すまない気持になる」11月19日。
 10月23日「人間は消耗品なり、戦争は悲惨の極だ」、10月28日「兵隊はドロボー。くだらないものばかり挑発してくる。敗戦国のあはれだ」
 2月21日「新聞に衆議員の乱闘が書いてある。ファショの道を一路露骨にたどりつつある。ああ」
 翻刻にかかわった日本大学の曽根博義教授は「井上靖の読者には、作品が男性的、意志的で強くたくましいイメージがある。だが実際の井上は意外なほど弱い兵士だったという印象だ。弱い自分を殺し、作家として再出発したのがよく分かる。井上の作家像を修正させる資料」と話している。・・・・」(高津祐典)
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■1930年 浜口首相狙撃される。後、死亡。
■1931年 満州事変、関東軍謀略で満州鉄道を爆破。満州を占領。日中戦争15年の開始。
■1932年 上海事変、関東軍のやらせで戦火ひろがる。犬養首相射殺される。
■1933年 リットン調査団の満州事変報告。日本不満で国際連盟脱退。
■1934年 海軍大将岡田啓介が組閣。軍人「高度国防国家」の統制派と皇道派に分裂。
■1935年 農業恐慌、大飢饉。東北などでは娘を売る農家も。
■1936年 2・26事件。皇道派青年将校クーデーター失敗するも蔵相の高橋是清ら多数政治
     家を殺傷。日独防衛協定調印。日本軍国主義・ファシズム化確立。
■1937年(昭和12年 日本ついに中国に全面戦争を仕掛ける。)7月7日夜、北京郊外の盧
     溝橋付近で日本軍の謀略で中国との全面戦争がはじまる。 
文芸研究Ⅱ下原ゼミNo・135―――――――― 8――――――――――――――――
推薦図書 戦争観察の傑作ルポの読み
石川達三『生きている兵隊』(中公文庫)571円+税
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 南京虐殺があったと言われる南京攻略を描いたルポタージュ文学の傑作。四分の一ほど伏字削除されて、昭和13年『中央公論』に発表されたが、即日発売禁止となる。・・・・
    (解説・半藤一利)
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 1937年7月7日、日中戦争がはじまると、日本は怒涛のように中国に攻め入った。そして、同年12月には国民政府の首都南京を占領した。日本兵のほとんどは、いわゆる赤紙(徴兵)で集められた一般市民だった。そのなかには、武田泰淳ら後に作家になる人たちもいた。
 前頁の記事、井上靖が出征した頃、中央公論特派員として中国の戦地に渡った新進気鋭の若い作家がいた。2年前(昭和10年)第一回芥川賞を受賞した石川達三である。
 戦争がはじまると、むろん軍部の意向だが、新聞・雑誌は全面戦時協力に入った。完全軍指導の政治時代に突入したのである。よき明治を描いた作家司馬遼太郎の『坂の上の雲』が映画化されたようだ。ゆるやかな坂道を上っていったところに楽園がある。封建社会から脱した日本が抱いた夢だった。だが、現実は違った。日本は、ゆるやかに、除々に加速して坂の下の地獄に向かっていた。昭和10年、1937年という年、坂道は、急勾配になった。前日まで、普通の良き市民だった人々。ある人は農家の、ある人は魚屋の、またある人はお寺の住職、医師をめざす若者。彼らが戦地にいったときどうなるのか。
 雑誌・中央公論は、7月、戦争がはじまると作家尾崎士郎、林房雄らを現地に派遣した。『主婦の友』は吉屋信子を送った。9月には『日本評論』から榊山潤が。『文藝春秋』『改造』がつづいた。しかし、それらは、厳しい検閲のもとに書かれた戦意高揚の現地報告だった。
 これが本当の戦争観察ものか・・・。移民船でブラジルに行ったこともある石川は疑問に思った。芥川賞を受賞したばかりで恐れを知らぬ青年作家だった。
「俺が全然こんなのとは違った従軍記を書いてみせる」「毎日読む記事が画一的なんで腹が立ちました。戦争というものは、こんなものではない。自分の目で確かめたい」石川は意気込んで、中国戦線へ向かった。時に1937年、12月25日のことだった。ちなみに日本軍が南京を攻略したのは12月13日。今日、問題になっている南京大虐殺はあったのか…。翌年の1月13日、石川は戦争の血なまぐさが残る南京に足を入れた。
 『生きている兵隊』は、そのときの従軍ルポタージュである。が、この作品の前記として以下の文面が掲載されている。
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 日支事変については軍略その他未だ発表を許されてないものが多くある。従ってこの稿は実践の忠実な記録ではなく、作者はかなり自由な創作を試みたものである。部隊名、将兵の姓名もすべて仮想のものと承知されたい。
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 この作品が架空ルポとあるとの断りである。が、後に石川は回想のなかで「作中の事件や場所は、みな正確である」としている。
 
7. 名作・ジュナール『にんじん』家族観察
 紹介してもらった愛読書のなかに児童虐待の本が多々ありました。観察の枠をひろげて家族観察の名作、児童虐待物語ともいわれる『にんじん』を読んで考えてみましょう。
にんじん、兄、姉、母親、父親、それぞれの性格をみてみよう。 
                
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10・26ゼミ報告
出席者=清水理絵、塩崎真佑、河西杏子
司会進行=塩崎真佑
1.ゼミ誌進行状況 原稿提出締切日10月30日厳守
2. 課題発表・「振りこめ詐欺」を巡る問題 創作・塩崎真佑「登録」
3. 食べ物の話(きっかけは不明)、ゲテモノ食談議、
  食べたゲテモノ = サザムシ(河西さんルーツは長野県の諏訪)
            ひび(蚕のさなぎ)、カミキリムシの幼虫、蜂の子
4.テキスト読み&感想 テキスト『灰色の月』
 志賀直哉は、基本的には短編作家である。長編は『暗夜行路』のみである。『灰色の月』をはじめとする短編群の源泉となったものは何か。小説を書き始めたころ小説の神様は、短編の名手モーパッサンを手本としたようだ。昭和25年に「モオパッサン全集」を推薦するとして、こんな文を書いている。
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 …私も小説を書き出しの頃はモウパッサンの影響を受けた。私の場合は話の筋は私自身のものであるが、短編構成の技法は色々教えられた。自分の力が充分でないと、兎に角、考えた話を短編の形式にはめ込むと、どうか、物になった。私は初めの頃、その形式を一番モウパッサンに学んだ。題名なども、うまく浮かんで来ない場合、アフター・ディナー・シリーズという一冊50銭の英訳モウパッサン選集を沢山持っていて、その目次を一つ一つ見ていくうちにふと、うまい考えがうかんだりしたこともある。…
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推薦図書
『モーパッサン短編集1~3』
 田舎・都会・恐怖・戦争・人生。人間の深層をこれほど面白く的確に描いた作品は、他にない。
 
ゼミ誌作成における進行状況
ゼミ誌関係についての連絡 → 河西編集長 kosai@msf.biglobe.ne.jp
11月中旬  みつわ印刷会社に入稿。
12月14日 刊行されたゼミ誌『下原先生と、ちょっと不愉快な仲間たち』を雑誌編集室に
      提出。
12月14日は納品期限日です。
厳守!!
文芸研究Ⅱ下原ゼミNo・135―――――――― 10――――――――――――――――
土壌館・実践的投稿術 ④
 
 文章力修業として投稿も、その一つの手段といえます。投稿は、投稿者が多ければ多いほど採用される確率は低くなります。が、そのことは即ち投稿作品の質の向上にもなります。様々なものへ観察・興味を抱く要因ともなるので、投稿は一石三鳥ほどの価値があります。
 もっとも投稿といっても、小説・論文投稿から標語まで多種多様です。が、ここでオススメするのは新聞投稿です。新聞は、毎日投稿できます。政治・社会・生活観察・自分の意見と幅もあります。また、時流や出来事のタイミングも重要となり自然、書くことの日常化・習慣化が身につきます。文章力研磨にもってこい場ともいえます。
 土壌館では、文章力を磨く目的はむろんですが、社会への疑惑や自分の意見・感想を伝えるために新聞「声」欄に投稿をつづけています。なぜ「声」欄かというと、500字という字数は、人が飽きなく読む字数であるということと、文体を簡潔にできるからである。
 先月中旬(10月15日)は、新聞週間だった。今年は派手なキャンペーンはなかったようだ。新聞は「真実の報道」ということで国会でも質問資料としてよく利用される。昭和20年8月15日までは大本営発表という汚名はあるが、あれから64年、国民を騙すような報道はなかった。日本の新聞は、時には偏重もあるが常に公明正大を掲げ、民主主義の旗手として歩んできた。しかし、この新聞にも十数年前までは影の部分があった。インテリが作って、やくざが売る。それが実態だった。そのことを投書したら採用された。
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◆ 1994年(平成6年)10月15日 土曜日 朝日新聞「声」欄 下原敏彦
勧誘の仕方を改められぬか
 
 押し売り同然の新聞勧誘をなぜ新聞社は許すのか。先日、親類の引越しを手伝いに行った時、新居に真っ先にやって来た、さる大手新聞社の勧誘員の態度の悪さには驚いた。
 まず、取り込み中の迷惑も考えないで、玄関先にビール券や洗剤を持ち込んで居座った。「まだ決めてないから、今は忙しいから」と断り続けると、だんだん威圧的になり、しまいには「どうしてもとってもらう」と、けんか腰になった。
 まさに悪質な訪問販売そのものだ。親類の者は入居早々面倒を起こしたくない、どうせ新聞はとるのだからと渋々契約した。だが、なにか強要されたようで釈然としないものがあった。日頃、私は、新聞を「愛読書」とし、新聞に社会正義を託しているだけに非常に恥ずかしい思いがした。一時、改善されたかのようにみえた強引な新聞勧誘だが、今また日常的風景になっているのではないか、そんな懸念がよぎる。
 政治腐敗一掃、暴力追放、明るい社会・・・紙面には日々、不正を糾弾する正義の記事が躍っている。だが、果たして新聞社は多くの読者が契約時に経験する不快な思いを、どれほど知っているのだろうか。人は自分の欠点をなかなか正すことができない。が、新聞ならそれができる。私は希望を持っている。(1部訂正・加筆)
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 この後、都内で新聞勧誘が関係した殺人事件などが起きたことで、勧誘員の資質が問題になり、押し売りまがいの勧誘は影を潜めていった。実は、この頃、わが家にも同様な出来事があった。三大新聞の一紙だが、契約もしないのに勝手に配達していて、断っても断ってもやめないので放っておいたら、夜、集金にきた。断ると大声で配達したと言い張る。近所迷惑になるので支払った。後日、販売所に本社に通告すると伝えると大慌てで謝罪にきて、返金した。あれ以来、わが家には押し売りまがいの勧誘は来なくなった。が、他の家はどうなのだろう。新聞週間がくると、そんなことを思ったりする。
―――――――――――――――――― 11 ――――― 文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.135 
新聞 文化審議会国語分科会の漢字小委員会は10月23日、「新常用漢字表(仮
   称)」に関する試案の修正案を承認した。
追加・除外で196字が候補、第2試案は11月、来春答申
削除の4字 = 聘(へい)、憚(タン・はばかる)、哨(ショウ)、諜(チョウ)
追加の9字 = 柿(かき)、哺(ホ)、楷(カイ)、睦(ボク)、釜(かま)、錮(コ)
        賂(ロ)、勾(コウ)、毀(キ)
※ カタカナは音読み、ひらがなは訓読み(太字は送りがな)
161字の常用漢字紹介(161+追加の9字-削除の4字=196字)
ア行 = 挨(アイ)、 曖(アイ)、宛(あてる)、嵐(あらし)、畏(イ/おそれる)
     萎(イ/なえる)、椅(イ)、彙(イ)、茨(いばら)、咽(イン)、
     淫(イン/みだら)、唄(うた)、鬱(ウツ)、怨(エン・オン)、
     媛(エン/ひめ)、艶(エン/つや)、旺(オウ)、岡(おか)、臆(オク)
     俺(おれ)
カ行 = 楷(カイ)、潰(つぶす・つぶれる)、諧(カイ)、崖(ガイ/がけ)、
     蓋(ガイ/ふた)、骸(ガイ)、柿(かき)、顎(ガク/あご)、葛(カツ/くず)
     釜(かま)、鎌(かま)、韓(カン)、玩(ガン)、
     伎(キ)、亀(キ/かめ)、毀(キ)、畿(キ)、臼(キュウ/うす)、
     嗅(キュウ/かぐ)、巾(キン)、僅(キン/わずか)、錦(キン/にしき)
     惧(グ)、串(くし)、窟(クツ)熊(くま)、詣(ケイ・もうでる)
     憬(ケイ)、稽(ケイ)、隙(ゲキ/すき)、桁(けた)、拳(ケン/こぶし)
     鍵(ケン/かぎ)、舷(ゲン)
     股(コ/また)、虎(コ/とら)、錮(こ)、勾(コウ)、梗(コウ)、
     喉(コウ/のど)、乞(こう)、傲(ゴウ)、駒(こま)、頃(ころ)、痕(コン/あと)
※ サ行以下、当通信紙面にて順次紹介していきます。
後期提出作品内訳
「2009年読書と創作の旅」⑧
・清水理絵、白川達矢、塩崎真佑、河西杏子「私の愛読書」・・・・・・・・・・発表済み
「2009年読書と創作の旅」⑨ 新聞記事から創作
・白川達矢「ポカリ」(電車事故)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・発表済み
・塩崎真佑「窓」(電車事故)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・発表済み
・慈剛寺徳子「死にかけた」(電車事故)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・発表済み
・塩崎真佑「登録」(社会問題)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・発表済み
・清水理絵「私は中立」(ダム問題)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・未発表
・塩崎真佑「ダム問題は誰のもの」(ダム問題)・・・・・・・・・・・・・・・未発表
・清水理絵「好きになったんです」(新聞記事創作)・・・・・・・・・・・・・未発表
・塩崎真佑「つなわたり」(新聞記事創作)・・・・・・・・・・・・・・・・・未発表
課題1 米軍基地について 必要か必要でないか どうすればよいか
文芸研究Ⅱ下原ゼミNo・135―――――――― 12――――――――――――――――
課題2「アルディの一日」を想像観察してください
440万年前の人間の「一日の記録」とは、想像を駆使して書いてみてください。
 先般、最古の人類「ラミダス猿人 全身骨格復元」というニュースがあった。
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2009・10・2 朝日新聞
最古の人類 森暮らし 二足歩行も木登りも
 最古の時期の人類像を書き換える研究成果がまとまり10月2日付の米科学誌サイエンスで発表される。・・・・国際研究グループが、約440万年前の人類、「アルディ」ピテクス・ラミダス(ラミダス猿人)の化石から全身像を復元することに成功し、生活の様子がわかった。約400万~100万年前に草原で暮らしていた猿人アウストラロピテクスと違い、森で暮らし、木登りする一方で二足歩行も可能だった。・・・・・・・
(アルディは)頭蓋骨がきしゃで、犬歯が他の固体より小さいことから女性と推定され、「アルディ」の愛称がつけられた。身長は120㌢、体重50㌔、脳の大きさは300~350CC…。
・・・・これらの化石の特徴がラミダス猿人と似ていることから、アルディの姿が最古の人類像を代表するものと考えている。
 今回の発表は11本の論文からなる。同時に発掘された動植物の化石なども分析し、自然環境や食性まで研究・考察されている。(松尾一郎)
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アルディ、彼女たちは、森ではどんな暮らしをしていたのか。「なぜ森から出たのか」
草原にいた、他の猿人たちは、どうしていなくなったのか、など。
月も太陽も、むかしからあったままです。当時の猿人になって想像してください。
土壌館日誌
 11月3日、予報では大荒れの天気だったが、昨晩、激しい雨風があったおかげで、一日快晴だった。が、気温は、この季節にしては寒かった。木枯らし一号が吹くとのこと。新型インフルエンザが流行っていた。が、なんとか秋季市民柔道大会は開催された。土壌館関連の選手は3選手欠場、9選手出場。善戦するも1回戦敗退者続出。が、金、1名。
 欠場選手が多かったわりには、全試合が終わったのは4時頃だった。話は帰りに電車の中で見たある出来事である。寒風に押されるようにして、私鉄電車に乗った。乗客は、立っている人たちが少しいる程度だった。空いた席があったので座った。
 突然、子供の泣き叫ぶ声がした。兄弟らしい男の子と祖父か父親らしい男性が乗ってきて、泣き叫んでいるのは弟とみられる10歳ばかりの男の子だった。「家に帰りたい」「どこに行くの」「行きたくない」そんなふうに叫んでいる。が、兄も父らしい男性も無視している。
 よほど嫌なのか、男の子は、泣きながらすわりこんでしまった。どんな事情だろうか。疑問に思いつつ電車を降りた。ホームに吹きつける風が冷たかった。
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編集室便り
☆ 原稿、歓迎します。学校で直接手渡すか、下記の郵便住所かメール先に送ってください。
 「下原ゼミ通信」編集室宛
  住所〒274-0825 船橋市前原西6-1-12-816 下原方
  メール: TEL・FAX:047-475-1582  toshihiko@shimohara.net
□ゼミの評価基準は可(60~100)とします。評価方法は、次の通りです。
  課題の提出原稿数+出席日数+ゼミ誌原稿+α=評価(60~100)
ゼミ日誌記録
2009年読書と創作の旅の記録
□4月20日 ゼミガイダンス(40分)、見学16名。「おんぼろ道場再建」ビデオ不調。
□4月27日 参加5名、司会・河西杏子 ゼミ誌編集委員決め、読み嘉納治五郎『青年
      訓「精読と多読」、世界名作サローヤン『空中ブランコ』、「憲法・前文と九条」
□5月11日 参加5名、司会・塩崎真佑、テキスト読み『菜の花と小娘』『網走まで』
       『菜の花』の解説、課題観察作品発表・清水理絵「黄金週間」途中まで。
□5月18日 参加4名、司会・白川達矢、テキスト読み『或る朝』、手本『放浪記』
       課題発表・清水理絵「黄金週間」、河西杏子「爽やかな憂鬱」、塩崎真佑「私
       の一日」、白川達矢「女王」、社会観察「政治家の世襲について途中」
□5月25日 参加3名、司会・清水理絵、試験解答、テキスト比較名作読み『三四郎』
      課題発表・白川達矢「覚える」、塩崎真佑「視線」
□6月 1日 参加4名、司会・河西杏子、ゼミ合宿の有無、ゼミ雑誌ガイダンス報告、
      「大学構内教授殺人事件」容疑者調書、第一審判決と量刑。河西「楽しい電車」
□6月 8日 参加5名、司会・内田すみれ、ゼミ誌テーマ決め「種」、名作詩編ヴェルレ
       ーヌ「雨が・・・」、課題発表=清水理絵「勝手に人生相談」、白樫知佳「水
       とバタ」、清水理絵「ちょとつ妄想」、塩崎真佑「新インフルエンザ」、表現
       稽古・紙芝居「少年王者」
□6月15日 参加5名、司会・長井志穂、ゼミ誌タイトル決め「下原先生とちょっと不愉
      快な仲間たち」、テキスト読み志賀直哉『夫婦』、課題発表=永井志穂「不快指
      数の充実」、清水理絵「呪われた木曜日」、塩崎真佑「マナーモード」、塩崎真
      佑「自分の一日」、白樫知佳「カウント」。土壌館『網走まで』解説・途中。
□6月22日 参加3名、司会・白川達矢。ゼミ合宿9月12、13日塩原に決定。テキスト
      読み『濠端の住まい』。課題発表=白川「コインランドリイと」、清水「弁当箱
      を探して」、塩崎「待合室」。名作読み・ヘミングウェイ。『殺し屋』
□6月29日 参加4名、司会・塩崎真佑。ゼミ誌表紙について。ゼミ合宿予備知識。ドス
      トエフスキーとは何か」(『ギャンブル』国文学別冊)読み。課題発表=河西「苦
      い水」、清水「面白くない」、白川「キキ」「ジョジュア」
□7月13日 参加5名 司会・清水理絵 ゼミ誌&ゼミ合宿について、タイ焼で祝う。
○9月12日 ゼミ合宿・那須塩腹、参加5名 『貧しき人々』朗読 司会=白川
□9月28日 参加5名、司会・白川、愛読書発表(清水・白川・塩崎)『出来事』読み
□10月19日 参加4名、司会・河西 課題発表、『正義派』読み、名作『あしなが』
□10月26日 参加3名、司会・塩崎 課題発表「登録」塩崎作品、『灰色の月』読み
□11月 9日
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読書の秋 秋の夜長、ぜひ挑戦してみてください。
日本文学最高峰作品
佐藤春夫『田園の憂鬱』
前期提出作品内訳
「2009年読書と創作の旅」① 5・11発行
・清水理絵「黄金週間」(一日観察)・・・・・・・・・発表済み
・河西杏子「爽やかな憂鬱」(一日観察)・・・・・・・発表済み
・清水理絵「勝手に相談」(生物観察)・・・・・・・・発表済み
・清水理絵「政治献金について」(社会観察)・・・・・発表済み
「2009年読書と創作の旅」② 5・18発行
・永井志穂「不快指数の充実」(車内観察)・・・・・・発表済み
・白川達矢「覚える」(車内観察)・・・・・・・・・・発表済み
・塩崎真佑「視線」(車内観察)・・・・・・・・・・・発表済み
・河西杏子「楽しい電車」(車内観察)・・・・・・・・発表済み
・白川達矢「水とバタ」(店内観察)・・・・・・・・・発表済み
・白川達矢「女王」(一日観察)・・・・・・・・・・・発表済み
・清水理絵「ちょとつ妄想」(雨日観察)・・・・・・・発表済み
・塩崎真佑「新型インフルエンザ」(社会観察)・・・・発表済み
※ 塩崎真佑「自分の一日」(発表済み)は、『ゼミ通信124』に収録。
          「2009年読書と創作の旅」③   6・1発行
・清水理絵「呪われた木曜日」・・・・・・・・・・・・発表済み
・塩崎真佑「マナーモード」・・・・・・・・・・・・・発表済み
・塩崎真佑「自分の一日」・・・・・・・・・・・・・・発表済み
・白堅知佳「カウント」・・・・・・・・・・・・・・・発表済み
「2009年読書と創作の旅」④ 6・8発行
【大学構内教授殺人事件】犯行の動機。実際の審議と平行してみていく。
〈容疑者の調書〉A、B、C、D・・・・・・・・発表済み
「2009年読書と創作の旅」⑤ 6・15発行
・白樫知佳「コインランドリと「女性」の雑誌と男」・・・・・・発表済み
・河西杏子「苦い水」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・発表済み
・清水理絵「弁当箱を探して」・・・・・・・・・・・・・・・・発表済み
・塩崎真佑「待合室」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・発表済み
「2009年読書と創作の旅」⑥ 6・22発行
・永井志穂「22歳の恥」⑥・・・・・・・・・・・・・・・・・・未発表
・河西杏子「小池騒動記」⑥・・・・・・・・・・・・・・・・・未発表
・塩崎真佑「夜の向こうへ」⑥・・・・・・・・・・・・・・・・未発表
・清水理絵「道化者」⑥・・・・・・・・・・・・・・・・・・・未発表
    「2009年読書と創作の旅」⑦
・永井志穂「生焼けの朝」⑦・・・・・・・・・・・・・・・未発表
・塩崎真佑「一日観察」⑦・・・・・・・・・・・・・・・・未発表
・清水理絵「あさりちゃん」⑦・・・・・・・・・・・・・・未発表
・塩崎真佑「車内観察」⑦・・・・・・・・・・・・・・・・未発表
・白樫知佳「自分観察」⑦・・・・・・・・・・・・・・・・未発表
・白樫知佳「車内観察」⑦・・・・・・・・・・・・・・・・未発表
【中大殺人事件告訴】
・塩崎真佑「重罪を」⑦・・・・・・・・・・・・・・・・・未発表
・白樫知佳「無期」⑦・・・・・・・・・・・・・・・・・・未発表
                  
後期ゼミ・テキスト予定
 テキスト読みする志賀直哉の作品は次の通りです。
『城の崎にて』・・・・自分の心情を、小動物に照らし合わせて心境小説として成功させた。
『子を盗む話』・・・・女児誘拐犯人の心境、動機。
『鳥取』・・・・車内観察.
『灰色の月』・・・・・自分の車内観察体験を名作にした。(朗読済み)
□表現稽古として、途中だった紙芝居「少年王者 第一部」口演を完了する。
ドストエフスキー情報
■ドストエーフスキイの会・例会
 11月21日(土)午後6時から開催、原宿、千駄ヶ谷区民会館
■ドストエーフスキイ全作品を読む会・読書会 詳細は編集室
 12月12日(土)午後2時から開催、東京芸術劇場小会7『カラマーゾフの兄弟』4回目  
情報 2009年教材図書に!!下原敏彦著『伊那谷少年記』(鳥影社)
「コロスケのいた森」入試問題に
『2010年受験用 全国高校入試問題正解 国語(掲載)』旺文社
『2010年受験用 全国高校入試問題正解 英語・数学・国語(掲載)』旺文社
『大阪府 最新入試 過去問 徹底解説』(ベネッセコーポレーション)
社団法人 日本図書教材協会(教育出版社各22社)教材作品
新刊雑誌『江古田文学 71』林芙美子&尾崎翠特集
林芙美子の『北岸部隊』を読む
架空従軍手記「厩舎当番兵の手記」・・・・・下原敏彦 
旧刊雑誌 『江古田文学 66』チェーホフ特集
      架空秘話「ある元娼婦の話」下原敏彦

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