文芸研究Ⅱ 下原ゼミ通信No.136

公開日: 

日本大学芸術学部文芸学科     2009年(平成21年)11月16日発行
文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.136
BUNGEIKENKYU Ⅱ SHIMOHARAZEMI TSUSHIN
                              編集発行人 下原敏彦
                              
後期9/28 10/19 10/26 11/9 11/16 11/24 11/30 12/7 12/14 1/18  
  
2009年、読書と創作の旅
11・16下原ゼミ
11月16日(月)の下原ゼミは、下記の要領で行います。文ゼミ教室2
 1.出欠・ゼミ通信配布・司会進行指名 
 
 2.ゼミ誌原稿提出&刊行に向けての編集作業についての報告
 3. 課題発表・「米軍基地問題」コラム、新聞記事から「」創作
 4. テキスト『兒を盗む話』読み&名作紹介(従軍ルポ)
      
後期は、観察から創作へ(&社会問題)
ゼミ誌・編集作業に向けての最終協議、骨格まとまる
 9日の前回ゼミでゼミ雑誌(『下原先生と、ちょっと不愉快な仲間たち』)編集に関する最終会議が開かれた。その結果、手順、奥付、目次など細部にいたる構成がまとまり、ゼミ誌づくりは、いよいよ12月14日刊行に向けて動きだした。
 編集作業は、河西編集長、清水副編集長はじめ塩崎編集委員、白川編集委員の全員参加体制でですすめていきます。なお、決定事案は、以下の通りです。
【編集作業】中表紙、表紙(塩崎)、レイアウト、編集後記(河西・清水)、奥付
      種    → 済み=塩崎、清水  企画 → 済み=塩崎 随時受付
      フリー  → 済み=塩崎、清水  連絡(永井・内田) → 白川(メール)
【掲載順】①トップ → 塩崎 ② → 河西 ③ → 白川 ④トリ → 清水
目次は採決で ① 文学賞 ②種  ③フリー ④企画、と決まる。
2009年度下原ゼミ文学賞決まる!!
 ゼミ誌掲載の下原ゼミ文学賞は、以下の作品と皆さんです。(対象・~10・26までの作品)
☆土壌館文芸賞(下原賞)・河西杏子さんの「小池騒動記」
☆観察作品部門賞(一日・新聞・車内・事件)
 ・一日観察賞「一日を記憶する」塩崎真佑さん、他
 ・新聞記事創作賞「死にかけた」清水理絵さん、他 ・「容疑者Aの告白」3作品
 ・車内観察賞「覚える」白川達矢さん     他


文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.136 ―――――――― 2 ―――――――――――――
・時事評賞「ダム建設反対か賛成か・・・」清水理絵さん
     「ダム問題は誰のもの」塩崎真佑さん
□ お願い、第二稿は16日ゼミまでに
□ 企画(新語)は、追加可能です。随時受け付け
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【時事評】 新政権発足以来、マニフェストの一つダム建設中止が、大きな混乱を呼んでいる。推進派は、ダムは是非とも必要だという。治水、利水といっても都会に住んでいる私たちは、よほどの水飢饉がない限り、わからないところではある。「ダムがあってよかった」のか、「中止してよかった」のか、はっきりするのは20年先、50年先、いや100年先だろう。今の若い人たちは、そのころ、影響を受けるかも知れないが、現在、議論している人たちのほとんど、そのころは、もうこの世にはいない。国家百年の計か、毎日の生活か。2作品の提出があった。
課題1.発表     ダム建設は必要か、必要でないか 時事評     
 
・清水理絵「推進派の住人、新政権の考え、どちらも分かる」
 合評=「ラフな語り口調で、清水さんの持ち味がよくでている文章」「自分が、その地の
    住人だったら、村興しになるなら、建設に賛成だが・・・」、「ムダと言われればム
    ダのような気もする」、「中立では困る」、「週刊誌のコラム欄になりそうな作品」
・塩崎真佑「ダム問題、教訓として 自然は二度と戻らない      
 合評=「塩崎さんの作品は、いつも意見と提案がしっかりしている」「作るなら、将来性
    のあるものを。そしてダムづくりは、これで最後にして欲しい、と釘を刺すところ
    がいい」、「新聞の解説や論評に使えそう」
課題2.発表   幼女誘拐犯の心理と犯行 新聞記事から創作へ
・清水理絵「好きな人ができました」
 合評=「甘い言葉に不気味さがある」、「『貧しき人々』を彷彿した」、「作者らしい作品」
     
・塩崎真佑「つなわたり」
 合評=「大人の子供に対する気持がよく書けている」「犯行にリアリティがある」
 
【雑談】テキスト『児を盗む話』の前に、自分の体験談が話された。
 子供のころから現在まで、怪しい男に声をかけられた経験がある人が多かった。千葉県松戸市で起きた千葉大女子大生殺人事件。島根県で起きた県立島根大学女子大生死体遺棄殺人事件。こうした事件は、前兆があるようだ。模倣犯もでてくる。アメリカでも10人以上の女性を自宅で殺害した犯人が逮捕された。猟奇的事件は、地方では、いつまでも伝えられるが都会は、すぐに忘れ去られていくようだ。いつのときも気をつけましょう。
 怪しいと思ったら観察を。車の色、ナンバーはすぐに控えて届ける。
――――――――――――――――― 3 ―――――――文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.136
2009年読書と創作の旅
11・16ゼミプログラム
1.「通信」配布、出欠、連絡事項
  ゼミ誌編集委員 → ゼミ誌刊行に向けての報告。
            
2.司会進行指名 (司会 → 授業進行、朗読者の指名など)
3.愛読書紹介&テキスト読み
  まだ発表していない人(内田さん、永井さん)
  テキスト読み(前ゼミのつづき『子を盗む話』)
4.課題の発表 新聞記事から
社会問題・振り込め詐欺「タカシ」・・・・・・・・・・・・・河西杏子
時事問題・米軍基地について「折りたたみ傘」・・・・・・・・慈剛寺徳子
時事問題・米軍基地について「米軍基地を笑うとき」・・・・・塩崎真佑
記事創作・SF「アルディの一日」・・・・・・・・・・・・・慈剛寺徳子
記事創作・SF「アルディの森」・・・・・・・・・・・・・・塩崎真佑
社会問題・振り込め詐欺「詐欺電話」・・・・・・・・・・・・白川達矢 13頁
社会問題・振り込め詐欺      タカシ
河西杏子
 肌寒くなった秋の夕暮れを、窓の紅葉から感じながらハツはため息をついた。秋の夜長は、孤独な一人暮らしの老人には忌々しい物でしかない。入れたばかりの煎茶は、もうもうと湯気を立てていた。こんな寂しい時を迎えると、ハツは「長生きなんてするもんじゃない」と思ってしまうのだ。
 じいさんは早々にお空に召されてしまったし、息子は働き盛り。孫なんて何年も顔を見ていない。テレビを付けてみたところで、ハツには意味の分からない言葉を話す喧しい人間達が、馬鹿笑いを繰り広げているだけで耳障りなのだ。
「つまらない」
 ハツの口癖はそうだった。
 RRRRR……RRRRRR……
 滅多に鳴らない電話が喧しく鳴り響いた。ハツは、どうせつまらない勧誘電話か何かだろうと、面倒になって食べ終わったミカンの皮を、少し離れたゴミ箱へ投げ入れた。ミカンの皮は、手前で落ちてハツはぶつぶつと文句を言いながらゴミ箱に捨て直す。
 RRRRR……
 電話はまだ鳴り響いていた。ハツは仕方なく、のっそり歩きながら電話台のそばまでやってきて、受話器を耳に当てた。
「はい、もしもし?」
 もう大分遠くなった耳を押しつけて相手の声を聞こうと思ったが、一向に相手は話し出そうとしない。
「もしもーし」
文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.136 ――――――――4 ――――――――――――――――
 もう一度聞いてもうんともすんとも言わない相手に、ハツは受話器を置こうとした。
『……ばあちゃん?』
 消え入るような若い男の声が、そう呟いた。ハツは、受話器を置くのをやめ、「タカシかい?」と聞き返した。
『うん』
 相手はそう返すと、『久しぶり』と少し照れくさそうに言った。その声に、ハツは心が温かくなるような気がした。ハツは急いで受話器をしっかり当て直すと、電話の相手に話しかける。
「何年ぶりだろうねえ、お母さんは元気かい」
『うん、ピンピンしてるよ。ばあちゃんは元気してる?』
「元気だともさ。百歳まで生きられるよ」
 ハツの軽口に、タカシがクスクス笑う様子が受話器越しに感じられる。人との会話がこんなに楽しいと思ったのは何年ぶりだろうか。すっかり寂しさに卑屈になった心が、タカシのおかげでほぐれていくような気がする。
「それにしても、どうしたんだい。いきなり電話してきて」
 ハツは、電話をこたつの上に置くとすこしぬるくなった煎茶を飲み干した。
『ああ……なんでもない』
 急に声を落とすタカシに、ハツは何だか嫌な予感がして「なにがあったんだい」と聞き返した。
『うん、我が家で少しお金が必要になっちゃって。母さんとかは、ばあちゃんに知らせるなって言うんだけど』
「お金かい? どのくらい入り用なの」
『五十万ほどって言ってたかな』
 タカシはそう言って、その事は決して両親には言わないでくれと念を押してきた。孝行心から来るタカシの優しさに、ハツは益々聞き入ってしまう。
「残念ながら、今は手元にまとまったお金がなくてね。もう少しすれば年金が入るから、少しは渡せるんだけど……」
『そっか、急にばあちゃんに電話してごめんね。また、家の様子見て連絡するよ』
「そうかい? また、何かあったら電話をおくれよ」
 ハツは、タカシの役に立てない事に酷く悲しい気持ちになった。そんな気持ちと、タカシから来た久しぶりの電話を嬉しく思いながら、ハツは受話器を置いた。そうして、ゆっくりとまたコタツに潜り込むと、散らかしたままだった机の上の住所録を片付け始めた。面倒くさいと思っていた年賀状だが、ハツはタカシにだけは送ってやろうと思い、パラパラと頁をめくる。そうして見つけたタカシの名前に、ハツの指は止まり、同時に身震いをして住所録を放り投げた。
 住所録の項目には、「息子」と書かれた文字がやけに大きく載っていた。
□ オチがいいですね。
    ※            ※           ※
時事・米軍基地について   折りたたみ傘
 慈剛寺徳子
 
 戦後六十年以上経っているというのに、沖縄は占領されたままなのでしょうか?
 今の状態は、「占領」と呼べるのでしょうか。確かに、アメリカが戦争に勝ったから、米軍基地は沖縄にあるのです。しかし、今の米軍基地はある意味、虎の威をかる~の、虎です。
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日本は戦争に負けたから、武装も禁止されました。ですが、島国一個全体がまるで武装していなかったら、武装した他の国の餌食になります。それを防いでいるのが、米軍基地。アメリカが核武装しているからこそ、日本は核武装しなくても、北朝鮮がおいそれと手を出すことができないのです。
 沖縄県民は、騒音とか、米兵士の犯罪被害だとか問題を指摘しています。確かに、おつらいのでしょう。
 対等外交。日本もアメリカにもの申すことができるようになってきました。
 核に反対して、核の傘に隠れる。確かに矛盾はしていますが、米軍にはいてもらって、核の傘を広げ続けてもらった方が、安全だと思います。世界が核を放棄するまで、いまある核は利用すべきです。勿論、能動的な意味でなく、防御の意味で。実際に行使するという意味ではないですが。
 沖縄県民さんは、辛いでしょうが、折りたたみ傘を持っていただきたいです。雨が降ったら、させるように。とても重い折りたたみ傘ですが、本当にすいませんが、持っていてはくれないでしょうか。              了
□ あまりに直截的ですが…。「男はつらいよ」の映画で寅さんの常套句があります。「それをいっちゃあおしまいよ」のセリフです。日本政府の辛いところは、そのおしまいよ、がいえないところにあります。いまもどこかでドンパチをやっている世界情勢。そのなかにあって徒手空拳の日本。国民が拉致されたとわかっても取り返すことができない国です。オロオロしたふりをして時間を稼ぐ。米軍と沖縄県民双方にいい顔をする手段は、いまのところこれ以外に作戦は、ありそうにありませんね。
米軍基地を笑うとき
塩崎 真佑
多くの国家に駐留する米軍を把握するのは困難である。世界中にどれくらい、どの国にあるのかを知っている人は少ないだろう。基地と隣り合わせで生活をしている人でなければ尚更だ。
米軍基地を調べていくうちに「お笑い米軍基地」という沖縄出身の芸人に行きついた。驚いたことに、彼らは米軍基地をネタにして漫才をするのである。例えば、米軍ヘリ墜落事件をとりあげ、沖縄と本土の人の受け取り方の違いを、熱く語れば語るほど滑稽にみせるといった芸だ。残念ながら実際にその漫才を耳にしたことがないので、面白いのかどうかは分からないが、米軍基地を逆手にとった上手さがある。
 基地が生活の一部になっている人にとって、良い悪いも受け入れなければいない状況がある。しかし、ジェット機の墜落事故が続く限り、何より武器を持っているという怖さがある限り、米軍基地は必要とされない。
 米軍基地を笑いにとって皮肉るのも一つの手かもしれない。
□ 知りませんでした。「お笑い米軍基地」漫才、あったら見てみたいですね。
日本と米国
 日本各地にある米軍基地は、現在、日本が抱える最大級の政治問題だ。なかでも島のほとんどが米軍基地という沖縄は、より深刻である。1972年5月、前年の沖縄返還協定により、沖縄の祖国復帰は実現したが、地位協定はじめさまざまな面で、いまだ半植民地化の感は否めない。そもそも、米軍は、なぜ日本にいるのか。どうして大挙して沖縄にいるのか。
 日本とアメリカとの関係は、1854年3月3日、神奈川、横浜村において米全権大使マシュー・ペリー提督と時の政府・徳川幕府(儒学者・林あきら、江戸町奉行・井戸覚弘ら)が日米和親条約を締結したことにはじまる。この条約は、12条からなるが、日本にとっては
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屈辱的条約。幕府は受理を渋ったが、大砲発射などの威嚇行為に屈した。そして、1858年(安政5年)に日米修好通商条約をむすんだ。(治外法権、関税自主権のないもの)
 日米修好通商条約の主な不平等条約箇所は下記の通りである。
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第三条 下田箱館港の外次にいふ所の場所を左の期限より開くべし・・・・双方の国人品
   物を売買すること総て障りなくその払方等に付いては日本役人是に立ち会わず。
第六条 日本人に対し法を犯せる亜米利加人は亜米利加コンシュル裁断所にて吟味の上亜
   米利加の法度を以って罰すべし、・・・・
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 貿易現場には役人は関係するな。アメリカ人が犯罪を犯しても、日本の法で裁くなと何とも一方的である。が、150年以上も前の話、当時の世界情況を思えば、仕方なかったかとも思う。(後年、日本はこれをまねして中国に、21か条を押し付けている)が、それらは前世紀の遺物となった。だがしかし、この21世紀の現在でも、沖縄では、この同じ法がまかり通っている。立派な日本国憲法(1946年11月3日公布)があるにも関わらずである。
沖縄と米軍基地
 何ゆえに沖縄は、そうなのか。総てが、あの日の出来事からはじまった。太平洋戦争終盤、1945年(昭和20年)3月下旬、約55万のアメリカ軍は、日本本土の要を突破すべき、沖縄攻略作戦を開始した。しかし、迎え撃つ日本軍は9万6000の兵隊。津波のように押し寄せる米軍の物量戦の前に沖縄はひとたまりもなかった。6月末までに沖縄守備軍はほぼ壊滅した。12万人をこえる一般市民も犠牲になった。(米軍死者約12000人)
 焦土となった沖縄に米軍は、そのまま居残りそこを極東の最前線基地とした。
日米安保
 第二次大戦後、世界は東西冷戦の時代を迎えた。アメリカにとって日本は、アジアに睨みをきかす最重要基地となった。それ故に沖縄は、そのまま占領しつづけた。(1972年5月まで祖国復帰はなかった)。アメリカは日本の平和憲法を守るという口実で、「日米相互協力及び安全保障条約(新安保条約)」の樹立を必要とした。日本政府もそれを望んだ。かくて1960年6月、反対運動で騒然となるなか自然承認により同条約は成立した。(死者1名)
 日米相互協力及び安全保障条約(新安保条約)抜粋
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第四条 締約国は、・・・・日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅
    威が生じたちきはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する。
第六条 日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与する
    ため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域
    を使用することを許される。
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 ちなみに1960年のときは、デモ隊が国会突入して死者までだして反対した安保闘争だったが、1970年の改定のときは、すっかり熱が冷めてしまっていた。自分で守るより金を払って守ってもらった方が得とわかってきたのか、日本人特有の熱しやすく冷めやすいか。
 
日米同盟深化で一致
 
 13日、初来日したオバマ米大統領は、鳩山新首相と会談。今後の日米関係について話し合った。その結果、より親密な日米同盟を強めるために「新しい協議のプロセス」をすすめることで一致した。両首脳の共同会見の骨子は次の通り。(11月14日 朝日新聞)
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・日米安保50年に向け、同盟深化のためのあらたな協議を始めることで一致
・米軍普天間飛行場移設問題で、鳩山首相が早期解決を目指す考えを表明
・オバマ大統領が広島、長崎を将来訪問できれば「非常に名誉」と発言
・「核」のない世界を目指すことで一致
・温室ガスを2050年までに80%削減合意
・アジア太平洋における米国の存在の重要性を確認
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 1853年にペリー司令官がアメリカ東洋海域艦隊をひきいて強引に開国を迫り不平等条約を押し付けた。1945年、連合国最高司令官マッカーサー(1880-1964)が日本を占領。財閥を解体、農地改革を断行した。民主化もすすめた。が、日本各地に基地も置いた。
 当時と、いまとどこが違うのか。言葉としての友情、愛情、親密感はある。が、肝心要のところはあまり変わっていない気がする。
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課題.最古の人類「ラミダス猿人、アルディの一日」
時空郵便局440万時間着付
親愛なるアルディへ
拝啓 
右の新聞(といってもわからないでしょうが)
仲間に伝えるお話です。いまは太陽が数えきれな
いほど昇り沈んだあと、440万年もすぎました。
あなたのことがようやく、わかりかけてきました。
 右のものは、そのことを、あなたの子孫たちに
知らせる話のようなものです。
 それによると、あなたは絵のような容姿だ
ったことになります。間違いないでしょうか。
 違う、こんな猿のようではない、と怒られても
困ります。なにしろ、あなたのことは、まだまだ
わからないことばかりです。お月さまに水があると
わかったのに!あの空にある月にですよ。
 そんなことがわかるのに、わたしたちは祖先が
どこからきて、どこにいくのかも未だわからない
のです。なぜ森から出てきたことも、です。
 ですから、あなたの1日を想像してもらいました。
むろん、あなたの子孫たちにですよ。
 ちなみに、いまわたしの目にうつる景色をお知らせ
します。あなたが生まれ育った森は、荒れ果てています。
木は乱伐され、焼かれみるも無残です。あなたの前に
ひろがっていた緑豊かな草原もひどいものです。コンク
リートの建物や道路、砂塵の舞う荒野です。
 いったいだれが、こんな世界にしてしまったのか。
話ずらいところです。が、まだ希望はもっています。
 きっと、つぎによい報告をします。それまでお元気で。 
文芸研究Ⅱ下原ゼミNo・136―――――――― 8――――――――――――――――
アルディの一日
慈剛寺徳子
 朝、起床。家、洞窟、中。
 外、雪。空腹。雌、昨日、死。自分、雄。子供、死。どうして、死。鹿、逃げた。実、枯れた。食料、ない。自分、死、近い。
 子供、雌、隣。息、ない。臭い。汚い。愛しい。自分、目、水。子供、雌、抱え込む。腐った、肉、ちぎれる。
 仲間、雄、自分、の、洞窟、来た。花、雌、上、置く。ひもじい、言う。仲間、同じ、雌、子供、死。抱き合う、目、水。空腹。
 一緒、猟、行く、言う。自分、いいよ、言う。槍、弓、持つ。家、出る。
 
 空腹。足、弱い。走る、できない。兎、遠く、いる。追いつく、できない。鹿、いない。象、いない。鼠、いない。
 仲間、いい村、知ってる、言う。自分、行きたい、言う。空腹、辛い、歩く、着く。
 村の人、言葉、よく分からない。考える、覚える。食べ物、あった。体、動く。
 言葉、段々、理解。
 私は、この村に来て、初めて文法というものに触れました。今まで単語の羅列でしかなかった私の言葉の何と貧しいことか。
 私は妻を愛していましたし、妻も私を愛していました。妻に、文法というものを教えたかった。私が妻のどんなところが好きで、愛しているか、美しい言葉で表したかった。今私は、木の棒で地面に絵を描いています。「人、家、←」これで、「帰る」という文字にしようと、村の長老が言いました。文字。文法さえなかった以前の私には考えつかないものです。
 妻に、「愛している」と、文字で書いてみせたかった。妻は死んでしまったのですが、天にいます。地面に描きます。「人、人、太陽」片方の人は、私で、もう片方は妻です。太陽が今も昔もこの先もあるように、私たちの霊魂は、今も昔もこの先もあり続けます。太陽の下で。
 再び、太陽の下で巡り会おう。愛しいあなたへ。
□ 言葉の着想、面白いです。
                             
アルディの森
塩崎 真佑
 無花果の花が散って実が熟れて、ラミダス猿人達はそれをそっと運び出す。
毛むくじゃらの身体に葉っぱをからませて、べたりとついた二本足はクマのように遅く、ゆっくりと進んでいく。木々の間は細長く続き、疲れ切った男達は時折その場に座り込み、その実をガブリと噛んだ。
その間、登り切ったまま木の上から降りてこない女達はごわごわとした体毛を整え、朝の日光浴をするように子供とのんびり過ごしている。
「アルディ」
そんな声が聞こえたときに、やっと女達はその薄い目を開け、差し出されたものを見た。そして、その実をひと口齧ると途端に手を止めてしまい、相手の目も見ずにふいっと他所を向いてしまう。すると、相手のラミダス猿人は何も言わずにその幹を降りて行き、再び木と
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木の間に消えていく。
アルディはそれを片目で見送ってから、先ほどの実に手を伸ばしゆっくりと味わうように飲み込んだ。
「こんなものをよこしたの」
とトガリネズミを見せるものや親指のつま先に棒をはさんで遊ぶもの、追いかけっこをする子供達は木から飛び降り、母親はそれを止めもせずに仲間のうちでお喋りを楽しんでいる。そして、孔雀が舞い降りる瞬間などは大いに喜んで見せた。
木の上でじっと相手の帰りを待っている女達だが、相手が遅いとみるとするりと木の下に降り地団太を踏む。なぜなら、ラミダス猿人はいなくなってしまうものの存在を知っていたからである。なぜだか急に動かなくなる仲間がいることも知っていて、それを思い出すようによく遠くを見た。そして、何べんまわってもこの森が変わらないことを祈り続けたのかもしれない。
 森の外縁にはシュロの木が生え、その先には平野が続いている。
 アルディは、そのようにいつも森の中を見張っていたので、いち早く相手が帰ってきたことを知った。そして、何事もなかったように目を瞑って見せた。
□ 場景が読み取れます。
森暮らしの最古の人類のニュースに想う
 およそ440万年前、アフリカ北部の森から1匹の、いや1人の人間が現れた。彼か彼女は、地平までひろがる草原を二本の足で歩き始めた。その時から、現在までの人間の道のりは想像できるし、ある程度証明もされた。が、それ以前のことは、依然として謎である。人間は森の中で何をしていたのか、なぜ森からでてきたのか。誰もわからない。
 人間はどこから来て、どこに行くのか。今日まで人間は、脳を活性化させ知恵を絞って文明を進歩発展させてきた。幾多の帝国の興亡があった。数え切れないほどの発明と発見、想像と創造があった。だが、なぜ人間はいるのか。宇宙は存在するのか。この謎は、未だ解けぬままある。
1839年のロシアで一人の高校生が、この謎に挑むことを宣言した。
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 …人間と人生は、いかなる意義を有するのか…人間とは秘密です。その秘密を解き明かさなければなりません。それを解き明かすのに生涯かかったとしても、時間を空費したとはいえません。ぼくはこの秘密に取り組んでいるのです。なぜなら人間になりたいと思っているからです。  兄ミハイル宛への手紙 1839年8月16日 
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 1968年に公開され話題を呼んだSF映画の名作「2001年宇宙の旅」は、まさにその謎に挑戦した作品である。原作『前哨』を書いたアーサー・C・クラーク。映画を作ったスタンリー・ー・キューブリック監督は既にいない。宇宙船ディスカバリー号が旅立った2001年も、すでに遠い。人間の謎は解けたのか。この10年、人間は相変わらず、自分が何であるか、どこに行くのかもわからず時間の河を無為に彷徨っている。あるものは宗教のために、またあるものは民族や思想のために、またあるものはカネのために。この星は、平和と幸福という名の下で愛の名を借りて欲望と戦争と差別を蔓延らせている。。
 あの日、森を出たアルディは、未来の祖先たちに現在のこんな運命が待っていようとは想像だにしなかったろう。日本は、いまだダム建設の是非でもめている。荒れ果てた森。破戒された失われつつある自然。人間は、ふたたび森に帰ることがあるだろうか。
文芸研究Ⅱ下原ゼミNo・136―――――――― 10――――――――――――――――
 164年前、アメリカで森に帰ることを試みた人がいた。彼は、なぜ森に入り、森で何をしていたのか。これからの長い人生、文明文化生活に疲れたら疑問をもったら読んでください。
ヘンリー・D・ソロー著 真崎義博訳 JICC出版局
『森の生活 WALDEN,OR LIFE IN THE WOODS 』
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【ヘンリー・ディヴィト・ソロー】1817年7月12日、米国マサチューセッツ州コンコードに生まれ、その地で育つ。生涯のうち、カナダへの小旅行と、西海岸へ旅したときと、数回に及ぶメリマック/コンコード川探検旅行を例外として、ほとんどすべてのときをコンコードで過ごした。コンコードのあたり一帯は一面の緑地で、森も多くソローはこのような環境のなかで、自然の「愛」と、自然を敬う心とを学んできたのだった。そしてそのことこそが、彼が生きている証でもあった。12歳になったとき、当時のアメリカではかなり名のはせた自然主義者であるアガシーズと出逢い、目を開かれた。ハーヴァード大学を卒業してもそのまま大学に残り、学位を修めるために勉学にはげむかたわら、執筆活動と講義をすることにも力を注いだ。そして1845年、アメリカがまだその百歳の誕生日を迎えないうちに、輝かしい経歴をいっさい捨て去り人里離れたウォールデン湖ののほとりに自ら建てた小屋へ引きこもり、彼がこれほどまでに愛し熱をこめて語っている自然の小鳥や動物や魚たちとの、とてもシンプルな暮らしをはじめたのだ。1847年にウォールデンからコンコードの街に帰り、いくつかの肉体労働をして生活費を得ながら執筆をつづけそれから100年以上も未来に生まれる緑色世代が暮らしの暮らしの教科書として愛読、活用することとなる本、『森の生活――ウォールデン』を書き記す。いちばんの親友は哲学者のエマーソンであり、そのこと
をあらわすかのように、彼ソローは、エマーソンの墓のすぐわきで、いまも静かに眠りつづけている。彼の子供たちが、彼の愛した自然を愛し続けている限り、『森の生活』は新しい世代に読みつがれていくだろう。ソロー1862年没 45歳
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課題 「告白」
想像力と推理力は、どこまで現行・実像に迫れるか
 11月10日に逮捕された市橋容疑者ですが、黙秘をつづけているようです。不明の逃走経路や疑問点は、今後の取り調べで追々判明していくと思いますが、先取りしてみてください。
 1.逃走径路は
 2.なぜ逃げるのか
 3.なぜ食事しないのか
 4.犯行動機は
本人になり代わって真相を話してください。
「アルディの一日」
引き続きアルディの生活を書いてください。
―――――――――――――――――― 11 ――――― 文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.136 
新聞観察     課題関連その後の新聞報道です
 
 先般のゼミでは「振り込め詐欺撲滅月間」ということで、この詐欺犯罪について被害者・加害者の深層心理を考えた。一向になくならない犯罪。なぜ振り込むのか謎は深い。
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2009年11月10日 火曜日 朝日新聞
「オレオレ詐欺」被害急増
警視庁まとめ 10月は前月比4割増
 昨秋から減り続けてきた「オレオレ詐欺」の被害が今秋、再び増え始めた。警視庁のまとめによると、今年5月には04年のピーク時の2割程度にまで減ったが、10月は前月の4割増となった。
                
新聞観察 八ツ場ダム問題で申し入れ書 11月14日読売新聞
 八ツ場ダム建設に負担金を出す1都5県の知事は13日、「治水・利水効果の再検査」の実施を表明した前原国土交通省に緊急申し入れ書を提出した。主な内容は以下のもの
① 建設中止を決めた具体的根拠を明示する。
② 来年度予算編成案可決までに、検証結果について6都県と地元住民の理解を得る。
③ 検証する専門チームの人選に6都県知事の意向を反映させる。
④ 検討過程で関係都県に情報を提供し協議に応じる。
・・・・など6項目
文芸研究Ⅱ下原ゼミNo・136―――――――― 12――――――――――――――――
5. 名作・ジュナール『にんじん』家族観察
 先週、10日に英国人女性遺体遺棄容疑で指名手配されていた市橋容疑者が、逮捕された。2年半の逃亡生活だった。逃走資金は、まだ不明なところはあるが、犯罪を重ねていたのではないようだ。とすると、根っからの悪党ではないのかも。英国人女性殺害は、欲望と興奮にかられての突発的犯罪だったのか。しかし、それならなぜ逃走したのか。なぜ自首しなかったのか。いろんな点で疑問が残る事件である。それらの謎は、今後の取り調べて、解明されていくに違いない。が、この事件のニュース観察で、なぜか「にんじん」作品を彷彿した。
 市橋容疑者の両親は、事件発覚時、父親が外科医、母親が歯科医と方どうされていた。二十歳を過ぎた犯罪者であるから、両親は関係ないが、たいていの事件の場合、早い段階で両親が短いコメントを寄せるのが常である。市橋容疑者の両親の場合それがなかった。それ故、逃走を助けている。そんな疑惑もかけられたようだ。会見で、心外だと話していた。
 両親の会見をみていて、気になったのは、その饒舌さと客観性だった。医者という立場から、そう演じなければならなかったのかも知れないが、違和感があった。テレビレポーターの取材で事件前の容疑者の生活を知った。それによると大学卒業後は、地方にいる両親とは疎遠だったようだ。ペットの犬が死んだとき帰って大泣きしたとのこと。両親が医者の家に長男として生まれたが、医者になれなかった。そのことがプレッシャーになったのか。しかし、子供のころの、この家庭は、傍目には裕福な、幸福な家族に見えたに違いない。
 「にんじん」の家庭も、大金持ちとはいわないが、中流以上の幸福な家庭である。父親と母親も傍目には問題ありそうにない。兄と姉も優等生タイプ。にんじんだって、末っ子の甘えっこ。そんなふうにみえなくもない。お手伝いさんもしっかりもの。いったい、この家のどこに問題があるのか。
推薦図書 
戦争観察の傑作ルポ
石川達三『生きている兵隊』(中公文庫)571円+税
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 南京虐殺があったと言われる南京攻略を描いたルポタージュ文学の傑作。四分の一ほど伏字削除されて、昭和13年『中央公論』に発表されたが、即日発売禁止となる。・・・・
    (解説・半藤一利)
 日支事変については軍略その他未だ発表を許されてないものが多くある。従ってこの稿は実践の忠実な記録ではなく、作者はかなり自由な創作を試みたものである。部隊名、将兵の姓名もすべて仮想のものと承知されたい。(作者)
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モーパッサン短編集1~3』
 田舎・都会・恐怖・戦争・人生。人間の深層をこれほど面白く的確に描いた作品は、他にない。 短編の名手、モーパッサンの作品は、人間の心の闇を照射したものも多い。
『狂人』も、そのなかの逸品である。鋭い人間観察。
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 …私も小説を書き出しの頃はモウパッサンの影響を受けた。私の場合は話の筋は私自身のものであるが、短編構成の技法は色々教えられた。自分の力が充分でないと、兎に角、考えた話を短編の形式にはめ込むと、どうか、物になった。私は初めの頃、その形式を一番モウパッサンに学んだ。題名なども、うまく浮かんで来ない場合、アフター・ディナー・シリーズという一冊50銭の英訳モウパッサン選集を沢山持っていて、その目次を一つ一つ見ていくうちにふと、うまい考えがうかんだりしたこともある。… 志賀直哉
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―――――――――――――――――― 13 ――――― 文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.136 
11・9ゼミ報告
出席者=清水理絵、塩崎真佑、河西杏子、白川達矢
司会進行=清水理絵
1.ゼミ誌進行状況 掲載原稿2稿締切日11月16日
2. 課題発表・「」を巡る問題 創作・塩崎真佑「登録」
3.犯罪談議、
  
4.テキスト読み『子を盗む話』途中まで
 
ゼミ誌作成における進行状況
ゼミ誌関係についての連絡 → 河西編集長 kosai@msf.biglobe.ne.jp
11月中旬  みつわ印刷会社に入稿。
12月14日 刊行された
      ゼミ誌『下原先生と、ちょっと不愉快な仲間たち』
      を雑誌編集室に提出。
12月14日は納品期限日です。厳守!!
課題発表・追記
              詐欺電話
白川達矢
「事故起こしてしまったのさ」
 たいして気にした様子もなく、あっけらかんとした声。夫はおっちょこちょいだから、よくあちこち車にぶつけてくる。
「お金、なんぞよくわからんけど振り込んでくれないかな、向こうさんにお金はらわにゃいかんらしいの」
 いくら。
「十万だって、まあ」
 娘が学校から帰ってきて、誰と話してるの、と電話をもぎ取る。
「十万振り込んでったらぁ」
 娘が頷いて、かの有名な詐欺だね、と言って喜ぶ。ついにうちにも来たんだ、と。
 この事件は彼女にとってステータスで、一つの話題の主役になれるチャンスな訳だ。わたしにはなににもならない、あるのは日常だけだけれど。
 本物の振り込め詐欺にあったのは今日が初めてだけれど、夫が婚約前にいってた甘い言葉はどこへ。最初から信じていなかったから、何の問題もないけれど。
 手洗いうがいをきちんと済ませて、ランドセルも部屋に置いてきた娘にステータスをぐぐんとアップさせる出番をよういしてあげた。
 どうしたらいいのか、娘は最初はわからなかったようで、電話のコードをぐるぐるやっていたけれど、車、といってあげると気がついたようで、
「昨日うちの車は家のガレージがつんとぶつかって壊れて、動かないんだよ、残念でした」
「ちげーよ、俺がぽいすてした空き缶にオートバイが躓いて、他の車にも被害が及ぶ大事故になったんだよ」
 わたしと娘はぎょっとして、顔を見合わせた。
文芸研究Ⅱ下原ゼミNo・136―――――――― 14――――――――――――――――
土壌館・実践的投稿術 ⑤
 
 文章力修業として投稿も、その一つの手段といえます。投稿は、投稿者が多ければ多いほど採用される確率は低くなります。が、そのことは即ち投稿作品の質の向上にもなります。様々なものへ観察・興味を抱く要因ともなるので、投稿は一石三鳥ほどの価値があります。
 もっとも投稿といっても、小説・論文投稿から標語まで多種多様です。が、ここでオススメするのは新聞投稿です。新聞は、毎日投稿できます。政治・社会・生活観察・自分の意見と幅もあります。また、時流や出来事のタイミングも重要となり自然、書くことの日常化・習慣化が身につきます。文章力研磨にもってこい場ともいえます。
 土壌館では、文章力を磨く目的はむろんですが、社会への疑惑や自分の意見・感想を伝えるために新聞「声」欄に投稿をつづけています。なぜ「声」欄かというと、500字という字数は、人が飽きなく読む字数であるということと、文体を簡潔にできるからである。
 目下、国会は「仕分け人」と予算を要求する各省庁の官僚との攻防がつづいている。長年にわたって膨大化した予算。新政権の政治生命は、新年度概算予算から無駄を、いかに多く洗い出せるかにかかっている。権力は必ず腐敗する、の格言どおり、生活習慣病となってしまった国体。ぜひ、仕分けチームには是非とも頑張ってもらいたいところである。が、「狙いは分かるが手法が問題だ」(読売新聞「社説」11月13日)にあるように張り切りすぎにも注意して欲しい。金銭的に無駄に見えても、心の役に立っているものもあるのだ。事業仕分け作業のニュースを聞いて、ふと14年前の投書を思い出した。
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◆ 1995年(平成7年)9月24日  朝日新聞「声」欄 下原敏彦
団地建替え 住めぬ人びと
 私が住む団地の前庭に1本のカシの木がある。建物近くにあるので、建物の入り口が暗くなることと、落ち葉がゴミになることで評判がよくなかった。
 「役立たずの木」誰ともなくそう呼ばれていた。いつだったか、この木を公団に頼んで切ってもらおうという話がもちあがった。
 しかし、どうしてか木は伐採されず、枝が払わられるだけにとどまった。そのことを同じ棟に住むお年寄りがたいそう喜んだ。
「この木だって、ちゃんと役に立っているんですよ」と、自慢そうに教えてくれた。毎年、キジバトが巣をつくるのだという。
 今年になって団地の建て替え計画が決まった。築30年。高度成長期を支えてきた住人が大半である。それだけに定年間際の人と年金生活者が多い。この地で老後をのんびりと、と考えていたが、現家賃から二倍三倍にハネ上がるため、多くのお年寄りが子供のもとに引越して行った。お年寄りも「役立たずの人間だからねえ」。そう言ってさびしそうに長年住み慣れた団地から去って行った。
 公団はさかんに新しい町づくりを強調している。明るい未来図を宣伝している。だが何か気持の晴れないものがある。「老齢で役に立たない」ものは残れないとは、今年もまたキジバタが巣をつくりはじめた。
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 必要か必要でないか、ムダかムダでないか。役立つか役立たないか仕分けは難しい。
名作紹介 日本文学最高峰作品
       日本文学のなかで最高峰作品といえば太宰、三島、川端文学でもない。まし
     て村上春樹作品でもない。
佐藤春夫『田園の憂鬱』
―――――――――――――――――― 15――――― 文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.136 
ゼミ日誌記録
2009年読書と創作の旅の記録
□4月20日 ゼミガイダンス(40分)、見学16名。「おんぼろ道場再建」ビデオ不調。
□4月27日 参加5名、司会・河西杏子 ゼミ誌編集委員決め、読み嘉納治五郎『青年
      訓「精読と多読」、世界名作サローヤン『空中ブランコ』、「憲法・前文と九条」
□5月11日 参加5名、司会・塩崎真佑、テキスト読み『菜の花と小娘』『網走まで』
       『菜の花』の解説、課題観察作品発表・清水理絵「黄金週間」途中まで。
□5月18日 参加4名、司会・白川達矢、テキスト読み『或る朝』、手本『放浪記』
       課題発表・清水理絵「黄金週間」、河西杏子「爽やかな憂鬱」、塩崎真佑「私
       の一日」、白川達矢「女王」、社会観察「政治家の世襲について途中」
□5月25日 参加3名、司会・清水理絵、試験解答、テキスト比較名作読み『三四郎』
      課題発表・白川達矢「覚える」、塩崎真佑「視線」
□6月 1日 参加4名、司会・河西杏子、ゼミ合宿の有無、ゼミ雑誌ガイダンス報告、
      「大学構内教授殺人事件」容疑者調書、第一審判決と量刑。河西「楽しい電車」
□6月 8日 参加5名、司会・内田すみれ、ゼミ誌テーマ決め「種」、名作詩編ヴェルレ
       ーヌ「雨が・・・」、課題発表=清水理絵「勝手に人生相談」、白樫知佳「水
       とバタ」、清水理絵「ちょとつ妄想」、塩崎真佑「新インフルエンザ」、表現
       稽古・紙芝居「少年王者」
□6月15日 参加5名、司会・長井志穂、ゼミ誌タイトル決め「下原先生とちょっと不愉
      快な仲間たち」、テキスト読み志賀直哉『夫婦』、課題発表=永井志穂「不快指
      数の充実」、清水理絵「呪われた木曜日」、塩崎真佑「マナーモード」、塩崎真
      佑「自分の一日」、白樫知佳「カウント」。土壌館『網走まで』解説・途中。
□6月22日 参加3名、司会・白川達矢。ゼミ合宿9月12、13日塩原に決定。テキスト
      読み『濠端の住まい』。課題発表=白川「コインランドリイと」、清水「弁当箱
      を探して」、塩崎「待合室」。名作読み・ヘミングウェイ。『殺し屋』
□6月29日 参加4名、司会・塩崎真佑。ゼミ誌表紙について。ゼミ合宿予備知識。ドス
      トエフスキーとは何か」(『ギャンブル』国文学別冊)読み。課題発表=河西「苦
      い水」、清水「面白くない」、白川「キキ」「ジョジュア」
□7月13日 参加5名 司会・清水理絵 ゼミ誌&ゼミ合宿について、タイ焼で祝う。
○9月12日 ゼミ合宿・那須塩腹、参加5名 『貧しき人々』朗読 司会=白川
□9月28日 参加5名、司会・白川、愛読書発表(清水・白川・塩崎)『出来事』読み
□10月19日 参加4名、司会・河西 課題発表、『正義派』読み、名作『あしなが』
□10月26日 参加3名、司会・塩崎 課題発表「登録」塩崎作品、『灰色の月』読み
□11月 9日 参加者4名、司会・清水、課題発表「登録」、「つなわたり」
       テキスト読み『子を盗む話』途中
文芸研究Ⅱ下原ゼミNo・136―――――――― 16――――――――――――――――
後期提出作品内訳
「2009年読書と創作の旅」⑨ 新聞記事から創作
・白川達矢「ポカリ」(電車事故)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・発表済み
・塩崎真佑「窓」(電車事故)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・発表済み
・慈剛寺徳子「死にかけた」(電車事故)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・発表済み
・塩崎真佑「登録」(社会問題)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・発表済み
・清水理絵「私は中立」(ダム問題)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・発表済み
・塩崎真佑「ダム問題は誰のもの」(ダム問題)・・・・・・・・・・・・・・・発表済み
・清水理絵「好きになったんです」(新聞記事創作)・・・・・・・・・・・・・発表済み
・塩崎真佑「つなわたり」(新聞記事創作)・・・・・・・・・・・・・・・・・発表済み
・清水理絵「沖縄米軍基地」(時事・コラム)・・・・・・・・・・・・・・・・未発表
・慈剛寺徳子「アルディの一日」(SF・新聞記事創作)・・・・・・・・・・・未発表
・河西杏子「タカシ」(社会問題)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・未発表
・塩崎真佑「米軍基地を笑うとき」(時事)・・・・・・・・・・・・・・・・・未発表
・塩崎真佑「アルディの森」(SF・新聞記事創作)・・・・・・・・・・・・・未発表
・白川達矢「詐欺電話」(社会問題)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・未発表
土壌館日誌
 先般(11月1日)、新聞で「ロ大統領、スターリン批判」の中見出しをみて安堵した。それというのも、それ以前の新聞で最近、ロシアでスターリン復活がおきているという記事を読んでいたからである。たとえばモスクワの地下鉄駅で、修復した壁にスターリンをたたえるソ連国歌歌詞が表示されたというもの。なぜいまになってスターリンを。原因は、「若い世代の多くがソ連時代の大弾圧について知らない」ことにあるようだ。グルジアの貧しい靴職人の倅だった彼は、160㌢の小柄だったが、野心家だった。人間は皆平等で幸福になる権利がある。そんな人類の理想ユートピア社会建設を利用し、大量の自国民を抹殺した。ヒトラーはユダヤ人虐殺だが、スターリンは、都合の悪い人間は手当たりしだい殺した。ポーランドでは将校を2万人以上も虐殺した。自分の父親も犠牲になったこの出来事をアンジェイ・ワイダ監督は映画化した。『カチンの森』がそれだ。日本では来月から公開される。
 日本でも同じようなことが起きている。第二次大戦でアジア周辺国に迷惑をかけ日本人の血を500万人近く流しヒロシマ、ナガサキ、オキナワの悲劇をつくりだした人間が、未だ軍神として靖国に祀られている。メドベージェフ大統領は自らのブログで「自国民を抹殺した者を歴史見直しの下で正当化することは許せない」と述べた、という。鳩山さんも同じことが言えるだろうか。かって志賀直哉は、その罪を忘れないために銅像を建てろと書いた。
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編集室便り
☆ 原稿、歓迎します。学校で直接手渡すか、下記の郵便住所かメール先に送ってください。
 「下原ゼミ通信」編集室宛
  住所〒274-0825 船橋市前原西6-1-12-816 下原方
  メール: TEL・FAX:047-475-1582  toshihiko@shimohara.net
□ゼミの評価基準は可(60~100)とします。評価方法は、次の通りです。
  課題の提出原稿数+出席日数+ゼミ誌原稿+α=評価(60~100)
新聞 文化審議会国語分科会の漢字小委員会は11月10日、「改定新常用漢字表」
   に関する試案を承認した。
 それによると1945字からなる現行の常用漢字表に「挨(あい)」など196字を加え、「銑(せん)」など5字を外す予定で、新漢字表は2136字になる。
来年秋に内閣が告示
 試案は今月末から一か月間、文化庁のホームページなどで公開し、一般から意見を募る。10年春に文部科学省へ答申、同年秋に内閣が新漢字表を告示する。
追加・除外で196字が候補、来春答申
削除の4字 = 聘(へい)、憚(タン・はばかる)、哨(ショウ)、諜(チョウ)
追加の9字 = 柿(かき)、哺(ホ)、楷(カイ)、睦(ボク)、釜(かま)、錮(コ)
        賂(ロ)、勾(コウ)、毀(キ)
※ カタカナは音読み、ひらがなは訓読み(太字は送りがな)
161字の常用漢字紹介(161+追加の9字-削除の4字=196字)
ア行 = 挨(アイ)、 曖(アイ)、宛(あてる)、嵐(あらし)、畏(イ/おそれる)
     萎(イ/なえる)、椅(イ)、彙(イ)、茨(いばら)、咽(イン)、
     淫(イン/みだら)、唄(うた)、鬱(ウツ)、怨(エン・オン)、
     媛(エン/ひめ)、艶(エン/つや)、旺(オウ)、岡(おか)、臆(オク)
     俺(おれ)
カ行 = 楷(カイ)、潰(つぶす・つぶれる)、諧(カイ)、崖(ガイ/がけ)、
     蓋(ガイ/ふた)、骸(ガイ)、柿(かき)、顎(ガク/あご)、葛(カツ/くず)
     釜(かま)、鎌(かま)、韓(カン)、玩(ガン)、
     伎(キ)、亀(キ/かめ)、毀(キ)、畿(キ)、臼(キュウ/うす)、
     嗅(キュウ/かぐ)、巾(キン)、僅(キン/わずか)、錦(キン/にしき)
     惧(グ)、串(くし)、窟(クツ)熊(くま)、詣(ケイ・もうでる)
     憬(ケイ)、稽(ケイ)、隙(ゲキ/すき)、桁(けた)、拳(ケン/こぶし)
     鍵(ケン/かぎ)、舷(ゲン)
     股(コ/また)、虎(コ/とら)、錮(こ)、勾(コウ)、梗(コウ)、
     喉(コウ/のど)、乞(こう)、傲(ゴウ)、駒(こま)、頃(ころ)、痕(コン/あと)
※ サ行以下、当通信紙面にて順次紹介していきます。
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前期提出作品内訳
「2009年読書と創作の旅」① 5・11発行
・清水理絵「黄金週間」(一日観察)・・・・・・・・・発表済み
・河西杏子「爽やかな憂鬱」(一日観察)・・・・・・・発表済み
・清水理絵「勝手に相談」(生物観察)・・・・・・・・発表済み
・清水理絵「政治献金について」(社会観察)・・・・・発表済み
「2009年読書と創作の旅」② 5・18発行
・永井志穂「不快指数の充実」(車内観察)・・・・・・発表済み
・白川達矢「覚える」(車内観察)・・・・・・・・・・発表済み
・塩崎真佑「視線」(車内観察)・・・・・・・・・・・発表済み
・河西杏子「楽しい電車」(車内観察)・・・・・・・・発表済み
・白川達矢「水とバタ」(店内観察)・・・・・・・・・発表済み
・白川達矢「女王」(一日観察)・・・・・・・・・・・発表済み
・清水理絵「ちょとつ妄想」(雨日観察)・・・・・・・発表済み
・塩崎真佑「新型インフルエンザ」(社会観察)・・・・発表済み
※ 塩崎真佑「自分の一日」(発表済み)は、『ゼミ通信124』に収録。
          「2009年読書と創作の旅」③   6・1発行
・清水理絵「呪われた木曜日」・・・・・・・・・・・・発表済み
・塩崎真佑「マナーモード」・・・・・・・・・・・・・発表済み
・塩崎真佑「自分の一日」・・・・・・・・・・・・・・発表済み
・白堅知佳「カウント」・・・・・・・・・・・・・・・発表済み
「2009年読書と創作の旅」④ 6・8発行
【大学構内教授殺人事件】犯行の動機。実際の審議と平行してみていく。
〈容疑者の調書〉A、B、C、D・・・・・・・・発表済み
「2009年読書と創作の旅」⑤ 6・15発行
・白樫知佳「コインランドリと「女性」の雑誌と男」・・・・・・発表済み
・河西杏子「苦い水」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・発表済み
・清水理絵「弁当箱を探して」・・・・・・・・・・・・・・・・発表済み
・塩崎真佑「待合室」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・発表済み
「2009年読書と創作の旅」⑥ 6・22発行
・永井志穂「22歳の恥」⑥・・・・・・・・・・・・・・・・・・未発表
・河西杏子「小池騒動記」⑥・・・・・・・・・・・・・・・・・未発表
・塩崎真佑「夜の向こうへ」⑥・・・・・・・・・・・・・・・・未発表
・清水理絵「道化者」⑥・・・・・・・・・・・・・・・・・・・未発表
    「2009年読書と創作の旅」⑦
・永井志穂「生焼けの朝」⑦・・・・・・・・・・・・・・・未発表
・塩崎真佑「一日観察」⑦・・・・・・・・・・・・・・・・未発表
・清水理絵「あさりちゃん」⑦・・・・・・・・・・・・・・未発表
・塩崎真佑「車内観察」⑦・・・・・・・・・・・・・・・・未発表
・白樫知佳「自分観察」⑦・・・・・・・・・・・・・・・・未発表
・白樫知佳「車内観察」⑦・・・・・・・・・・・・・・・・未発表
【中大殺人事件告訴】
・塩崎真佑「重罪を」⑦・・・・・・・・・・・・・・・・・未発表
・白樫知佳「無期」⑦・・・・・・・・・・・・・・・・・・未発表

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