文芸研究Ⅱ 下原ゼミ通信No.152

公開日: 

日本大学芸術学部文芸学科     2010年(平成22年)7月12日発行
文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.152
BUNGEIKENKYU Ⅱ SHIMOHARAZEMI TSUSHIN
                             編集発行人 下原敏彦
                              
前期4/19 4/26 5/10 5/17 5/24 5/31 6/7 6/14 6/21 6/28 7/12 
  
2010年、読書と創作の旅
前期の観察旅は、発表・合評(車中と日常) & 名作読み
7・12ゼミ
7月12日(月)の下原ゼミは、下記の要領で行います。ゼミ2教室
1.「2010年読書と創作の旅」、ゼミ誌編集会議
  2. 課題の提出作品発表 → テキスト「鳥取」読み
  3. 「大学を辞めたい」友人の悩み観察のアドバイス
4.「前期観察と後期への抱負」
      
気がつけば、前期終了、平均出席者5.7人
 気がつけば7月も早や半ば、前期もラストである。が、なにか実感がない。桜散るガイダンスからの月日、あまりに速すぎた。心持は、ようやく旅の支度ができた。まだ、そんなところにある。はたして、予定通り、計画通りの授業ができただろうか。なんとなく地に足がつかなかった。そんな気がする。反省点は、来週は、来週は、と全員の顔みせに拘り過ぎたところにあったようだ。ちなみに授業スタートの4月26日からの総出席者数は、6・28ゼミまでの9回で53名。平均5・7人の出席率であった。半数である。
6・28ゼミ観察 先々週6月28日のゼミは、以下の概要で行われました。         
     第一回ゼミ誌編集会議 竹下晃誠さんが編集長代行で
この日、第一回ゼミ誌編集会議が開かれた。ゼミの成果となるゼミ雑誌作成計画について、これまで正副編集長の出席を待ってと、先延ばしされてきた。が、リミット日ということで、参加編集委員で話し合いをもった。班長も欠席したため、編集長代行として竹下晃誠さんが、議場の司会進行を務めた。この日の出席者は以下の皆さんでした。
・越智美和さん   ・阿井大和さん    ・竹下晃誠さん
・藤重はるかさん  ・後藤大喜さん    ・高口直人さん
配布したもの・・・人生相談+課題2枚    第一回編集会議の報告は3頁に
藤重はるかさん司会で
提出課題読みと合評 & 「尾道幼女誘拐事件」裁判報告
 テキスト読みとして『鳥取』を準備していったが、時間の都合でできませんでした。この日は、藤重さんの司会で提出課題は2作品の読みと合評が行われた。併せて、模擬裁判の「尾道幼女誘拐事件」の判決報告もあった。後藤君から検察側が量刑を出していないことが指摘された。                    (合評・裁判報告とも詳細は5頁に)


文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.152―――――――― 2 ―――――――――――――
車窓雑記     SF「現代における罪と罰」を読む
 書店の店頭に積まれる新刊は、誰が選ぶのか。稀には、本好きの店長か店員が自分が読んで面白かった本を山積みすることもあるらしい。が、たいていは本社からの指令のようだ。その証拠にどの駅前書店をのぞいても、金太郎アメである。地方、都会関係なく、同じ新刊が並んでいる。いずれも、時が過ぎれば忘れ去られていく書物である。
先日、そんな山積みされた新刊書の中に気になる本を見つけた。「日本のSFを変えた不正出の作家」というセンセーショナルな見出し。作者は伊藤計劃(いとうけいかく)という35歳(1974-2009)で早世した作家。若いので同情もあったが、なによりも興味を引いたのは、もうひとつの中見出し「現代における『罪と罰』」の一文だった。
罪と罰とは、何か。週刊誌の見出しによくある誹謗中傷の「何何の罪と罰」の類か。それともロシア文学ドストエフスキーの『罪と罰』。アレだろうか、あれこれ考えた末、結局「ゼロ年代ベストSF」第1位の宣伝文句につられて買った。SFは、嫌いな方ではない。ベルヌ、ウェルズ、からハミルトン、クラークまで楽しみに読んできた。
余談だが『罪と罰』といえば、現在マンガ版『罪と罰』が第8巻まで出版されている。ドストエフスキー原作の『罪と罰』の現代版との触れ込みだったので、2、3巻まではみたが、あとはとてもついてゆけないしろものだった。原作の凡人、非凡人の問題が売春女子高生と暴力団からみの話になっていた。作者にちゃんとした『罪と罰』構想が、あるのかもしれないが、私がついゆけるのは2、3巻まで。『ばかぼんど』も、その類だった。
本屋の店頭に山積みされた新刊宣伝の「罪と罰」は、小説『罪と罰』関連だった。題名の『虐殺器官』から医療系小説にも思えた。が、まったく違かった。アメリカ軍の情報機関に所属する暗殺隊員が主人公。彼は植物人間の母親を選択で殺してしまったというトラウマをもっている。彼の仕事は、世界の紛争地域にいって、その国の独裁者や、市民を虐殺する権力者、暴徒の指導者を暗殺すること。物語は、この暗殺隊員、情報郡大尉が、新しい任務に向かうところからはじまる。彼が、足を踏み入れた中央アジアの内乱国家。「泥に深く穿たれたトラックの轍に、ちいさな女の子が顔を突っこんでいるのが見えた」そして、次々と目に入る子供、老人、男、女の屍。まさにいま大虐殺が行われている町に、彼は入っていく。民族浄化作戦をつづける反政府軍。交戦すれば、少しは市民を救うことができるかも知れない。が、彼はひたすら任務に忠実であろうとする。彼の使命は、この大虐殺を扇動している、一人のアメリカ人を殺すことだった。このアメリカ人が行くところ必ず大虐殺が起きた。彼はなぜ、紛争地域の人々をより憎しみと対立にかりたてるのか。その謎が、この作品のテーマとなっている。彼は、人間はもともと大量虐殺したいという器官としてもっていて、それを刺激すると人々は殺し合う、そんな仮説をたて、実践している。彼の行くところ死体累々が、それを証明している。しかし、彼は、なぜそんなことをするのか。
愛する者を守るため、だという。平和のための虐殺。読者には、なかなか解けない謎である。が、先進諸国の平和を守るためには、低開発国の犠牲は必要。そんな説明が『罪と罰』の非凡人思想を彷彿させる。標的のアメリカの元情報省の彼は、サラエボで爆発した原子爆弾で妻子を失ってから、その非凡人思想にとりつかれてしまった。先進国の平和と繁栄が続くには、中東や、イラク、アフガニスタンなどの紛争地域が必要とのこと。
「7月はじめの酷暑のころのある日の夕暮近く、一人の青年が、小部屋を借りているS
横町のある建物の門をふらりと出て、思いまようらしく、のろのろとK橋のほうへ歩きだした。」こんな書き出しではじまる、この小説のテーマは、人殺しの価値の問題である。現代においてヒトラー、ミロシュビッチ、フセイン、ポルポト、スターリン、東条英機らがなぜ有名か。作品ではナポレオンだが、主人公の青年は、歴史の英雄たちに思いをはせる。彼らは十万、百万人と、1千万人と人間を殺した。それ故に彼らは英雄として崇められている。これが1人か2人、いや10人でも、ただの殺人犯。凶悪犯でしかない。秋葉の事件もその一つといえる。『虐殺器官』の主人公は、何故に大量殺戮の扇動者となったのか。
―――――――――――――――――― 3 ――――― 文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.152
 2010年、読書と創作の旅
「ゼミ2」号乗員名簿
 「2010年、読書と創作の旅」に参加した皆さんは全員で11名です。時空船「ゼミ2」号で、最終目的「人間とは何か」を知るために、目下、読むこと書くことの習慣化を目指して旅しています。早三分の一日程を終えました。搭乗者は以下の皆さんです(順不同)
・越智美和さん   ・阿井大和さん   ・竹下晃誠さん
・藤重はるかさん  ・後藤大喜さん   ・高口直人さん
・塚本笑理さん   ・立川陸生さん   ・伊藤光英さん
・重野武尊さん   ・伊藤果南さん  
※記念撮影は、全員が揃ったときに撮ります。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「2010年、読書と創作の旅」班長・副班長
 ◎ 班長・立川陸生さん      ○ 副班長・後藤大喜さん
「2010年、読書と創作の旅」ゼミ誌作成編集委員
 ◎ 編集長・伊藤光英さん     ○ 副編集長・塚本笑理さん
  
 編集委員・越智美和さん  阿井大和さん  竹下晃誠さん
藤重はるかさん 後藤大喜さん  高口直人さん
立川陸生さん  重野武尊さん  伊藤果南さん
前期、ゼミ出席状況(4/26~6/28)
 4月19日  ゼミガイダンス 見学者18名 (立ち見1名)
 
 4月26日  ゼミ希望カード8名提出、ゼミ生 8名、出席8名  欠席0  
 5月10日 ゼミ希望カード2名追加、ゼミ生10名、出席7名、 欠席3名  
 5月17日  ゼミ希望カード1名追加 ゼミ生11名、出席8名、 欠席3名 
 5月24日  ゼミ生11名確定(男7、女4)  出席7名、 欠席4名     
 5月31日 ゼミ生11名  出席3名、 欠席8名            
 6月 7日 ゼミ生11名  出席5名、 欠席6名            
 6月14日  ゼミ生11名  出席3名、 欠席8名             
6月21日 ゼミ生11名   出席6名  欠席5名            
6月28日 ゼミ生11名   出席6名、 欠席5名            
   総計 57%
7月12日
文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.152 ―――――――― 4 ―――――――――――――――
名作観察・詩編紹介 二篇とも世界文学線上の名作です。
梅雨の季節に思い出す詩
雨の巷に降る如く   われの心に涙ふる
かくも心ににじみ入る  この悲しみは何やらん?
  やるせなの心の為に  おお、雨の歌よ!
  やさしき雨の響きは  地上にも屋上にも!
     消えも入りなん心の奥に  故なきに雨は涙す
     何事ぞ!裏切りもなきにあらずや? 
     この喪その故の知られず
        故しれぬ悲しみぞ
        実にこよなくも絶えがたし
        恋もなく恨みもなきに
        わが心かくもかなし
『無言の恋歌』「忘れた小曲 その3」ポール・ヴェルレーヌ(1844-1896)堀口大学訳
7月の歌
Sensation
夏の爽やかな夕、ほそ草をふみしだき、
ちくちくと麦穂の先で手をつつかれ、小路をゆこう。
  夢みがちに踏む足の、一あしごとの新鮮さ。
  帽子はなし。ふく風に髪をなぶらせて。
     話もしない。ものも考えない。だが、
     僕のこのこころの底から、汲めどつきないものが湧きあがる。 
     
        さあ。ゆこう。どこまでも。ボヘミアンのように。
        自然とつれ立って、
         ―― 恋人づれのように胸をはずませ……
『第一詩集』ジャン・アルチュール・ランボオ(1854-1891)金子光晴訳  
――――――――――――――――― 5 ―――――――文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.152
「2010年、読書と創作の旅」7・12プログラム
本日は前期ゼミ最終日です。下記の要領で行います。
「ゼミ通信152号」配布 点呼 11名全員いれば再度記念撮影 司会指名
 
1. ゼミ雑誌作成への第二回編集会議 (伊藤・塚本正副編集長)
※ 正副編集長欠席の場合は、竹下さん代行ですすめてください。今後の対策も
6・28編集会議での議案
前回、出席した6名の編集委員は、ゼミ誌のテーマについて、話し合った。いろいろな意見、提案があった。あげられた多くの候補のなかで討議された結果、制作の企画対象になったのは、次のものです。
① 自主制作 ② 提出課題 ③ 本棚紹介 ④ 車中観察・自分観察
⑤ 「ゼミ通信」1頁
◇本日の編集会議で決めること
○ テーマ           → 
 ○ 表紙デザイン、サイズなど  → 
 ○ 表題            → 
 ○ 締切日           →
2. 課題・人生相談「目的のために大学を辞めたい」。私のアドバイスは
 
  「大学を辞め料理人に」新聞の【人生案内】に、大学2年生の母親からこんな相談がありました。あなたは、どう答えますか。
(相談内容は、コピー配布。6月28日に配布したものです)
辞めるのに賛成なら  なぜ →  
辞めるのに反対なら  なぜ → 
※ 反対・賛成者は議論。一方的の場合は、半々に分かれる。
3. 社会観察「大相撲の野球賭博」の罪と罰
昨日11日から大相撲の名古屋場所が、はじまった。が、今場所は、前代未聞の番付となっている。幕内で6人、十両で4人、幕下以下8人の力士が野球賭博の廉で謹慎により休場するのだ。加えて、大関1人が、解雇された。日大の出身で、輪島以来横綱を期待された力士だったので残念である。新聞報道では彼は、恐喝されていた被害者(350万円とられたうえに1億円要求されていたという)らしい。それなのに、解雇という厳しい処罰は、最初に無実と嘘をついたことにあるようだ。が、それにしてもクビは重すぎる。市井の声である。今回の大相撲騒動の感想を述べてください。
文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.152―――――――― 6 ――――――――――――――――
今回の野球賭博における相撲協会の対処(2人解雇、18人休場、20数人謹慎)について、どう思うか。
妥当だった  →  理由は
厳しすぎる  →  どの程度の罰なら納得するのか
文豪ドストエフスキーは、ルーレットのギャンブル依存症だった。大関が、同じ病だったとしたら、気の毒というほかない。
たとえば『ギャンブル依存症』(2002年NHK出版)にこんな記述がある。「自分をコントロールできないほどギャンブルにふけるのは、意志の問題ではなく病気」なのだ。
しかし、この病、「受け入れてもらうのが難しい」という。大関は、たんにギャンブラーだったのか。それとも、底なしのギャンブル依存症患者だったのか。大関の日常生活の詳細が知りたいところである。
4. ある裁判観察 単純な事件だが、判決は難しい。裁判員だったら、どんな判決を
 昨年5月からスタートした裁判員制度。参加者は慣れてきたときくが、頭を悩ませるケースも多くなってきたという。前にも書いたが、先般、千葉地裁で無罪になった裁判もその一つだ。覚せい剤をチョコレート缶に隠し、マレーシアから持ち込んだ男(60)は、知らなかったと言い続けた。この男、覚せい剤疑惑の人物から報酬を約束されて、同じボストンバッグに偽造旅券も運んでいた。長期間、こうした密輸犯を追っているプロにとって、男は、確信犯以外の何者でもない。しかし、わずか3日かそこら関わる一般市民の裁判員にとっては、ただ男のボストンバッグに覚せい剤が入っていた。それだけでは、有罪とできないと判断するしかないらしい。男が知らなかったと言う以上、その男の人生、過去の犯罪歴にかかわらず、ちゃんとした証拠がなければ無罪とする他なかったようだ。狡猾な犯人からすれば、赤子の手をひねるようなものに違いない。
日本には、現在1億3千万近い人間がいる。そのうち未成年者は2300万人というから選挙権がある人、つまり有権者は、1億人前後いることになる。それで、自分が裁判員に選ばれる確率は宝くじより低い、などと思ってはいけない。単純計算すると人間一生のうち67人に1人が裁判員となる割合だ。
 平成元年以降生まれの人たちが多いゼミの皆さんも例外ではない。裁判員に選ばれたとき、困らぬために、日頃から、その目を養っておく必要がある。矛盾ない判決は、より繊細な観察と、無限大の想像力が必要。被告の頭と心のなかにどれだけ踏み込めるかである。
この前は、テキスト『兒を盗む話』の犯罪を立件して「尾道幼女誘拐事件」として裁いた。が、あれはあくまでも創作のなかの事件。事実は小説より奇なりの観点からみれば、裁き易い面もあった。被告の心の中が、全てわかったことで、有利に働いたともいえる。猥褻目的ではなかった、が読み手に伝わっている。それもこれも、この事件が創作だからである。
そこで、今回は実際にあった事件を裁いてもらいます。この事件は一見、簡単なようでその実、なかなか難しい事件です。
(この事件は、1876年ロシアの裁判で陪審員制度で裁かれました。ある意味で裁判員裁判の見本となる裁判です。)
「単純な、しかし、厄介な事件」(ドストエフスキー全集『作家の日記』上巻)
1876年5月ロシアのペテルブルグでこんな事件が起きた。
(情報が少ないため、事件発生時と現場状況について多少の推理・憶測があります)
――――――――――――――――― 7 ―――――――文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.152
事件の推移         どんな事件だったのか
 1876年5月×日、午前7時頃(推定)ペテルブルグの警察分署に、一人の若い女が出頭した。若い女は、応対した警官に、「たったいま、継娘を4階の窓から放り投げて殺してきました」と、言った。つまり殺人を自首してきたのである。継娘は6歳、4階の高さは地上から十数メートルある。驚いた警察は、現場に駆けつけた。遺体を確認してこなかった、と言ったが、誰もが最悪を思い描いた。この季節にしてはめずらしく、雪が道路のそこここに残っていた。女が放り投げたという4階の窓下にも、いくらかの雪がはき積もっていた。警察は被害者を探した。6歳の女の子は、まったくの偶然に、積み上げた雪の中に落ちて気を失っていた。怪我一つなく、奇跡的に助かったのだ。警察は、女を継娘殺人未遂事件の犯人として逮捕した。現在、日本のあちこちで起こっている幼児虐待事件の一つともいえる。
「幼女殺人未遂事件」当時の新聞には大きく報じられた。
犯人の身元        加害者は、どんな人物か
 自首した若い女は何者か。名前、エカチェリーナ・コルニーロヴァ。年齢20歳。職業、農婦。1年ほど前、妻が病死した子連れ男と結婚した。連れ子は6歳の女の子で、この事件の被害者となった。この夫婦は結婚当初から夫婦喧嘩が絶えなかった。
 被害者は、夫の連れ子と判明。女の継娘だった。事件は
「継娘殺人未遂事件」となった。
殺意の動機       継母はなぜ殺そうと思ったか
 自己中心的な夫への憎しみ。自分を親戚のところへ行かせず、親戚が来るのも嫌がった。喧嘩のたびに、死別した細君を引き合いに出しては、「死んだ妻の方がよかった」「あのころは、世帯向きがもっとうまくいっていた(米川訳)」など言葉の暴力を受けつづけた。
 このためいつしか愛情より憎しみが強くなり、復讐したいと思うようになった。復讐は、何がてきめんか。それは「亭主がいつも引き合いに出しては自分を非難した先妻の娘を、亡きものにすること」だった。夫に対する面当てから、なんの落ち度もない6歳の継娘を殺そうと計画し、実行したのである。
陳述・継母はこのように犯行を話した
 夫婦喧嘩では、夫にいつも怒鳴られていました。亡くなった前妻の方がよかったと責めるのです。罵られるたびに、連れ子の6歳の継娘まで憎くなってきました。それで、いつか、面当てに夫が一番の打撃になること、継娘を亡きものにしようと思っていました。このところ、ひどい喧嘩がつづいたので、ついに限界に達し、昨日、それを実行する決心をしました。しかし、昨晩は、夫が家にいたのでできませんでした。
 今朝、夫が仕事に出かけたので、計画を実行することにしました。私は、4階の窓を開け、草花の鉢植を窓じきの一方に寄せました。それから、起きたての継娘の名を呼びました。
6歳の継娘は、眠気眼をこすってやってきました。私は、
「○○ちゃん、窓の下を見てごらん」と、言いつけました。
 継娘は、朝っぱらなんだろうという顔をしました。が、窓の下にどんな面白いものが見えるのかと、思ったのでしょう。すぐに窓じきにはいあがりました。そして、両手を窓に突っ張って、下をのぞきました。ちっちゃな両足が、私の目の前にありました。その可愛らしいちっちゃな両足を私は、つかんで持ち上げ、窓外に放り投げました。娘は、宙にもんどり打って落ちて行きました。私は、すぐに窓を閉めて、着換えをすませ、部屋の戸締りをして警察に出向しました。これが犯行のすべてです。嘘偽りはありません。
文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.152 ――――――――8 ――――――――――――――――
検察・公訴 被告は、たびたびの夫婦喧嘩から、夫を憎悪するようになった。平素か
ら夫に仕返しすることを計画していた。夫への復讐は、何が一番有効かと考えた。その結果、
夫が、一番大切にしている6歳の継子の殺人を思い立った。6歳の可愛い継娘は、幸い奇跡
的に助かったが、その非道で惨酷な計画は、到底許されるものではない。
 有罪を宣告し重罪に課すべきである
  
弁護側の弁論 被告は妊娠中の身体で家庭内暴力(言葉による)を受けていた。
犯行は、憎むべきであるが、犯行に走らせた原因は夫にもある。可愛いさかりの継娘を殺そうと計画し、実行したことは、非情で惨酷なことだが、すぐ自首したことで、完全犯罪とは言い難く、温情な判決を望む。
継娘(6歳)殺人未遂事件裁判
 
この事件は前記で述べたような動機と経緯からの犯罪です。裁判員としては、どのような判決を下しますか。
被告は、「有罪」か 「無罪」か
有罪なら、なぜ。その場合、量刑は、どれほどか
「無罪」なら、なぜか。納得できるように弁護してみる。
主文を考えてみる。この事件の罪と罰は
よって、被告を、
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                      
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
5. 前期観察、読むこと書くことの習慣化をめざしたが
A、テキストとした志賀直哉の車内観察作品の読みはどうだったか。
Q. 70%のテキスト読みはできた。車内観察作品は残『鳥取』『灰色の月』
A. テキストを基盤としての書くことの日常化については。
Q. 課題の提出が少なかった。書くことの日常化としては20%の成長。
A. 社会観察、議論はできたか。
Q. 参加者が少なかった。出席者は、活発な意見。60%く゜らいか。
―――――――――――――――――――― 9 ――――文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.152
6・28ゼミ報告
 
出席者・6名
 
6月28日の出席者は、以下6名の皆さんでした。
 
・藤重はるか  ・後藤大喜  ・阿井大和  ・越智美和    
・竹下晃誠   ・高口直人  
○ 司会進行 = ゼミ誌編集会議は、竹下晃誠さんが編集長代行
         ゼミは、藤重はるかさん
1. 第一回ゼミ雑誌編集会議 
 1回目テーマ → 車中小説、犯罪、ゼミ通信1頁目、日本、宇宙、講演、自由制作、
本棚、講演、学校、TV、新聞
(1年のときの例「花」「草食系肉食系」「もだえ」「神話・昭和」など)
 2回目選別 → 自主制作、「ゼミ通信」1頁目、提出課題、本棚紹介、車内作品、
自分観察
                   
3.課題原稿発表と感想 【車内観察】1本【自分の一日】1本
◎ 越智美和作品「胎児に還れる場所」=車内観察
地下鉄、都営大江戸線の車内での、乗客観察と感想。
【合評】
文体 → まとめられている。
 → 反復が不自然でない。全体的に書き方がいい。
   → 全体的にまとまつていてよかった。
   → 感覚を大事にした。「鬱蒼」より「鬱屈」とした法が・・・
作者 → 指摘された反復が多かった。1回書いてから、書きなおした作品。
◎ 竹下晃誠作品「人とは欺くある物に非ず」=日常観察
朝、起きてから学校に行くのを迷うまで。普通の一日を観察している。
【合評】
文体 → 長い、句読点が少ない。まとめが欲しい。感傷的。
   → 「酸化した胃袋」など疑似用語が多い。新しい表現方法。
   → 諦観をくわしく。ユーモアの落ちがあればいい。
   → 気持ちの流れがわかりやすい
   → この作者の文体は好き。はじまりが安易。
作者 → 実際の6月21日の朝の自分を描いた。
文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.152 ――――――――10 ――――――――――――――――
ゼミ誌について
ゼミ雑誌発行12月15日を目指して
 ゼミの実質的成果は、決められた期日までのゼミ雑誌発行にあります。毎年、納品日の遅れが指摘されています。一年間の大切な成果なので、しっかり守って、よい雑誌をつくりましょう。本ゼミは、二人編集長と一人副編集長に四人の編集委員が、アシスト、全員が協力します。ゼミ誌は自分の作品でもあるので、全員一丸となって当たりましょう。
ゼミ誌原稿について
 ゼミ誌原稿は、そのために書くというより、日々の授業のなかで育てることをすすめます。締め切り前あわてて書くより、発表した観察作品を草稿として完成品に高めるよう創意工夫してみてください。合評したときの皆の印象や意見を参考に。
・編集委員長 = 伊藤光英
・編集副委員長 = 塚本笑理
・編集委員 = 藤重はるか 後藤大喜 立川陸生 重野武尊 阿井大和 越智美和
        竹下晃誠  高口直人 伊藤果南
※ 前回編集会議は、竹下さんが編集長代行でテーマを話し合いました
ゼミ誌作成予定は以下の通りです
○ 話し合うこと → 印刷会社を決める。             
    テーマ決めを決める → 7月12日に
    ゼミ誌表紙デザイン、奥付など → 
    原稿締め切り → 
    タイトル決め → 7月12日か夏休み明けに決める。
               
1. 5月25日 →ガイダンス ①「ゼミ誌発行申請書」の提出。出版編集室に
2. 6月28日 → ゼミ雑誌のテーマを話し合う
3. 7月12日 → タイトル、テーマ、締め切り日などを決める。
以上7月12日現在までの状況。
4. 9月末  → 編集委員にゼミ誌原稿を提出。具体的には9月27日
5. 10月上旬 → 編集委員は、内定の印刷会社から②「見積書」をもらう。
6. ~11月 → 「見積書」の提出。印刷会社と相談しながらゼミ雑誌作成。
7. 12月 → 15日までにゼミ誌提出、③「請求書」提出
注意事項!!
◎ ①【ゼミ誌発行申請書】、②【見積書】、③【請求書】
以上3種類の書類が提出されない 場合はゼミ誌の発行はできません。補助金の支払いも認められません。
印刷会社を決めるに際して
はじめての業者は避ける。わからないときは、編集出版局に相談する
―――――――――――――――――――― 11 ――――文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.152
「2010年、読書と創作の旅」の記録
4月19日 ガイダンス 嘉納治五郎の「読書のススメ」、志賀直哉「菜の花と小娘」読み
4月26日 司会=越智美和 担当決め(正副班長=立川・後藤 ゼミ正副編集長=伊藤・
塚本)自己紹介、ビデオ「おんぼろ道場再建」、「ひがんさの山」参加8名
5月10日 司会=立川、参加7名、車窓観察「沖縄米軍基地問題」討議、名作観察「空中
ぶらんこに乗った大胆な青年」、車内観察テキスト「夫婦」
5月17日 司会=阿井大和、参加8名、名作紹介、5月の詩編ランボー「谷間に眠る者」空想観察「フェッセンデンの宇宙」テキスト『網走まで』読みと感想
5月24日 司会=伊藤光英、参加7名、ゼミ合宿採決=無し、名作観察O・ヘンリー『心と手』、『網走まで』の「網走」解説、比較作品『三四郎』の読み、
5月30日 快晴 参加者3名 犯罪観察モーパッサン『狂人』、紙芝居口演『少年王者』
6月 7日 快晴 参加者5名、司会=竹下晃誠、草稿『網走まで』読みと評。提出作品発
      表・車内観察「女装趣味の男」重野作、一日観察「遠い目覚め」重野作、合評。
      バルザック『谷間の百合』紹介、冒頭読み。
6月14日、雨 参加者3名、NHKビデオ、司会=後藤、合評=竹下作品「府中本町間」、
テキスト「出来事」と対比作品「正義派」の読み。感想
      
6月21日 晴れ。司会=重野、発表・合評、『兒を盗む話』、「尾道幼女誘拐事件」裁判
6月28日 編集会議・竹下代行 司会=重藤 発表・合評=越智美和作「胎児のいた場所」
      竹下晃誠作「人とは欺くある物に非ず」、裁判報告執行猶予付き5年
提出課題一覧(~6月28日現在)
名前
越智
車内
1 一日
社会
  8 ゼミ誌
α+総計
藤重 1   6
後藤   7
立川   4
竹下 1 1   8
高口   4
重野 1 1   5
塚本   2
伊藤(光)   3
阿井   7
伊藤(南) 1   3
文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.152 ――――――――12 ――――――――――――――――
掲示板
テキスト読み一覧・志賀直哉作品
・『菜の花と小娘』・『網走まで』・草稿『小説網走まで』・『夫婦』・『出来事』
・『正義派』・『兒を盗む話』
名作読み一覧
・嘉納治五郎「読書のススメ」 (・下原『ひがんさの山』)
・サローヤン『空中ぶらんこに乗った大胆な青年』
・O・ヘンリー『心と手』 ・ハミルトン『フェッセンデンの宇宙』
提出課題一覧 前期は本日で終了します。6月28日までに提出された作品です。
・伊藤果南「青春老女」未発表 ・・・ 車内観察作品
・重野武尊「女装趣味の男」発表済み ・・・ 車内観察作品
・重野武尊「遠い目覚め」発表済み ・・・ 自分の一日観察作品
・重藤はるか「広いシート 狭いシート」発表済み ・・・ 車内観察作品
・竹下晃誠「府中本町~東所沢間」発表済み ・・・ 車内観察作品
・越智美和「胎児に還れる場所」発表済み ・・・ 車内観察作品
・竹下晃誠「人とは欺くある物に非ず」発表済み ・・・ 自分の一日観察作品
討議 社会問題などの討議
・米軍普天間基地問題 「私は、こう思う」
・人生案内【大学を退学して料理人になりたい】「私のアドバイス」
お知らせ
          午前10:00~午後4:45まで 
■ 8月14日(土)ドストエーフスキイ全作品を読む会第240回読書会 暑気払い
        「カラマーゾフのこどもたち」
        池袋西口・東京芸術劇場小会議室7 1000円(学生半額、セミ生0)
※ 詳細並びに興味ある人は「下原ゼミ通信」編集室まで
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
編集室便り
☆ 課題原稿、学校で直接手渡すか、下記の郵便住所かメール先に送ってください。
 「下原ゼミ通信」編集室宛
  住所〒274-0825 船橋市前原西6-1-12-816 下原方
  メール: TEL・FAX:047-475-1582  toshihiko@shimohara.net
□ゼミの評価基準は可(60~100)とします。評価方法は、次の通りです。
  課題の提出原稿数+出席日数+α=評価(60~100)
楽しい夏休みを過ごしてください ! 書くこと読むことを忘れずに。では、後期に会いましょう・・・・

シェアありがとうございます

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

コメントを残す

PAGE TOP ↑