文芸研究Ⅱ 下原ゼミ通信No.175

公開日: 

日本大学芸術学部文芸学科     2011年(平成23年)10月3日発行
文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.175
BUNGEIKENKYU Ⅱ SHIMOHARAZEMI TSUSHIN
                             編集発行人 下原敏彦
                              
9/26 10/3 10/17 10/24 10/31 11/7 11/14 11/21 11/28 12/5 
12/12 1/16 1/23
  
2011年、読書と創作の旅
10・3下原ゼミ
10月3日(月)の下原ゼミは、下記の要領で行います。ゼミ2教室
1. 通信174配布 出欠 連絡事項「前回ゼミについて」 司会指名
2. ゼミ雑誌編集(原稿提出)報告 他
 
 3. 提出課題発表・武田「私の夏休み」、會澤「寒い日」
4. 名作・家族観察『にんじん』読み、テキスト『剃刀』読み
    
9・26ゼミ報告
後期初日、7名出席でスタート(後半を占う参加率5・5割)
 連休の後の後期初日、出席者数が危惧されたが、約半数7名の参加者があった。この五・五割が、今後どんな線を描くのか、予想は難しいところだが、後期は、ゼミ誌刊行、三ゼミ合同発表と、出席率が必要とされるだけに、上昇を期待したい。
ゼミ誌『旅路報告』の原稿収集開始 9・26締切日延期
再度締切日10月2週目厳守 !!
 ゼミ初日の9・26は、ゼミ誌『旅路報告』の原稿締切日である。が、毎年の常で、締め切り厳守の人は少なかった。ゼミ誌編集長から延期の通達があった。再度の締切日は、10月2週目のゼミ。間に合わない場合は、前期の提出課題作品をゼミ誌原稿として代用します。
私の夏休み報告 司会進行・杉山知紗
 前半は、寒く後半は酷暑がつづいた今年の夏休み。地震の影響による風評被害、強力ノロノロ台風続出もありました。ゼミの皆さんの夏休み報告を聞きました。
・毎日小説を書いていた。1編は応募、現在も複数編を。・サークル活動、合宿参加、小説は2編進行中。・バイト、研修(途中棄権でした) ・名作読みに挑戦(果たせす゛)観劇。 


・自転車を買って乗り回していた。 などなど
□全体的に読書や創作で静かな夏を送った人が多かったようです。
 
文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.175―――――――― 2 ―――――――――――――
課題・私の夏休み
夢を見つけた夏
武田結香子
今年の夏休みは去年に比べるとずいぶん早かったように思える。本当にあっという間だった。本当に二カ月近くも時間が過ぎたのか、信じられない自分がいる。夏休みも相変わらず、私はよく芝居やミュージカルを観に行った。といっても片手で数えるくらいの回数しか行っていないが。
「ファントム」というミュージカルを観た。これは私が宝塚と出会うきっかけとなった作品で、今回は再演されることになったものだ。幕が開いてからずっと泣きっぱなしだった。一緒に来てくれた友人は少し引いていたと思う。多分。でもそれくらい素晴らしかった。セリフも、メロディも、すべてに感動していた。
次に観たのも宝塚。だが、これは東京ではなく本拠地となる兵庫県で観てきた。高校時代の友人と旅行することになり、神戸~宝塚~姫路とまわることになった。無理やり私の趣味を押し込んでもらったのだ。こちらもやはり泣いていた。「そこで泣くか?」という「場面で泣いていた。きっと鼻をすする音が一番うるさかったと思う。でも観ることができて、そこの空気を吸うことができて、一生忘れられない旅行になった。
私はこれまで将来について悩むことが多かった。今になって更に悩んでいる。だけど、この夏休みで1つ決めたことがある。それは演劇が関係する会社に入ること、だ。文芸学科にいる私ではあるが、私の将来を、私の夢を見つけさせてくれた世界に少しでも携わって仕事をしたいと思った。この夏は初めての経験もできて、将来の目標も少しだけ見えてきて、とても充実した日々を送れていたと思う。これを糧にしてこれからも頑張りたいと思った。
□ 夢が見つかった夏ですか。よかったですね。好きこそ物の上手なれ。きっと成就します。
課題・車内観察
寒い日
會澤佑果
黒のタンクトップにページュのニット、デニムのスカートの下には厚手のタイツ。靴下を重ねて履くのは、逆に足を冷やすと誰かがいっていたな、と頭の端で思い出しながら、かまわずタイツの上にアーガイル柄の短い靴下を更に履きこむ。温かい濃緑のジャケットを羽織り、首にマフラーをかけて、お気に入りの黒いショートブーツに足を突っ込む。
 一歩玄関から外に出ればリンと張りつめるような空気。息を吐けば途端に白くなるような日。口元まで隠れるようにマフラーを巻いてマンションを出る。
 素足に短いスカート、紺色のソックスに焦げ茶色のローファーを履いてきゃつきゃと笑っている女子高生を横目でみつつ改札を通る。
 女子高生というものは、いつ見ても寒そうだ。シャツの上にトレーナーを着てもタイツを何枚履いてもマフラーをしても手袋や耳当てをしていてもなぜか一様に寒そうな恰好に見える。それはスカートから覗く白い肌が、いくらタイツを履いても短いままのスカート丈がそう感じさせているのかもしれないし、昔、私が、女子高生だった頃の寒さと戦っている記憶に寄るものなのかもしれない。
 ホームに立ち、次に来る電車を待つ。当駅と前駅の表示の間で点滅する電車のマークをみながら、早くこい、早くこいと念じる。
 
―――――――――――――――――― 3 ――――― 文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.175
手をポケットに突っ込み、寒さに耐える。向かいのホームには曲がっている背中を寒さでさらにぎゅつとちぢこめながら歩く老婆がいる。ちょうど向かい側でたちどまった老婆は首
元に巻いている紫色のスカーフを少しだけ直す。木枯らしが吹きつけてくる。マフラーに深々と顔をうずめ、肩を強張らせてやり過ごす。向かいの側を見るとぎゆうと身体全体を強張らせてやり過ごす老婆の姿。その姿を見て田舎にいる祖母を思い出した。今日も大きくまがった背中に自分と同じ大きさもある竹かごを背負って畑に行っているだろうか。畑には霜が降りているだろう。水は凍っているだろうか。この前帰省したのはいつだったか。山間の緑に囲まれた祖母の家、畳の匂いを思い出して懐かしさに浸る。最近一段と冷え込むようになったから風邪をひいていないといいけれど。
 郷愁を打ち消すように、冷たい空気に響くアナウンスの声。ホームへと入ってきた電車は私の前で何両かが通り過ぎ、止まった。車両のドアが開き慌ただしそうに何人かが降りてくる。寒さから逃げるように早足で乗車する。車内は温かな空気に満たされていて外隔離されているようだ。ドアから一番近い端っこの席に座る。ほっと一息つき、強張らせていた身体を弛緩させ、左側にある手すりに凭れかかる。
 隣の席に座ったのは、初老の老人。座って早々鞄の中からカバーのかかった文庫本を取りだし、しおりを開いて読み始める。いかにも歴史小説や小難しい話が好きそうなこの老人がどんな本を読んでいるのか気になり横目で中身を覗いてみる。柱のタイトルは少し前にテレビで取り上げられ、ベストセラーになった作品もので、この老人が純愛小説を読んでいるなんてとても意外だと、胸の中で静かに驚く。
 車内はそこそこの乗客で駅に停車するたびに温かい車内へ吹き込む木枯らしが新鮮な空気を運んで来る。上京してここに住むようになってどれくらいの月日が経っただろう。車窓からの見慣れなかったこの景色も、読めなかった駅名も今では馴染みあるものになってしまった。晴れた日に、背の高いビル群を抜けて川にかかる橋を渡る瞬間が一番気に入っている。水面に太陽の光が反射し、川を通過する間は車内の明るさも少しだけ増す。一歩外に出れば冷たい風が吹き、寒さに身体をこわばらせるのに、電車の中で、ガラス一枚隔てて触れるこの季節は陽光がやわらかで暖かい。
 一度にたくさんの人が乗り込んできた。私の目の前にはイヤホンをした若い男性が吊革に掴まり電車の揺れに合わせて身体を傾かせている。スーツの上にコートを羽織り、手に持っていたビジネスバックは両足の間に置いた。足元は濃い茶色の革靴を履いていて、だいぶ履きこまれているのだろう、磨かれて光沢のある靴には深い皺が刻まれている。スラックスの裾までビシッっとアイロンのかかった、見ていて気持ちのいいスーツを着ている。ジャケットはふたつボタン。地は濃い灰色で縦に細かいストライプの入ったグレースーツに清潔感のある白いシャツ、シャツのボタンはきっちり首元まで留められている。量販店で吊るしてある大量生産のスーツとは違って、どこかのブランド物だろう、そこそこ値の張りそうなスーツだ。ネクタイには紺色にシルバーと臙脂のストライプが斜めに入っていて派手すぎず、地味すぎない。吊り革を掴む袖口にはさりげなく覗くシンプルなカフスを付け、手首にはシルバーの時計をしている。厭味のないおしゃれな人だ。年齢は二十代後半から三十代、どんな仕事をしているのだろうか。当人は目をつむりイヤホンで何か聞きながら電車に揺られている。黒ぶち眼鏡の奥の長い睫毛に嫉妬する。イヤホンの先、本体はスーツのポケットの中にある。アイポッドだろうなと思う、それ以外ならソニーのウォークマンか、それ以外か、考えても仕方がない。通勤ラッシュから少しずれた時間、遅い出社だなと思いつつ、病院に行っていたにしては早いし、フレックス出勤とかいうやつなのだろうかと思考をめぐらす。じっと長いまつげを見ていた。睫毛がかすかに動く。
 目があったら気まずい、視線だけを手に持っている携帯へ素早く移す。ついでにメールの問い合わせをする。特にメールはない。新しく携帯を変えてからいちいち問い合わせないとメールが届かないことがままあるので面倒だ。目の前の男性はスーツからアイポッドを取り出し操作して、またスーツにもどした。やっぱりアイポッドだったか、予想が当たった事で
文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.175―――――――― 4 ――――――――――――――
若干興奮しつつ、携帯でツイッターを開いた。
 ツイッターのタイムラインを眺めながら隣に座っている老人へ注意を向ける。小説を片手に持って、こくりこくりと船を漕いでいるのが面白い。ページとページの間に指を挟みながら読んでいるので読み進めたところは分かるのだろう。たまにはっと気づいては読む、そして船を漕ぐ、気づいては読むの繰り返しだ。本は落とさない様になっているらしい。この様子だと、ベストセラーの純愛小説はこの人の趣味ではないのかもしれない。隣に座る老人が奥さんか娘にその本を薦められ、自分の鞄に入れて持ち歩くのを想像すると微笑ましい。電車が大きく揺れた、こくりこくりと船を漕いでいた老人が電車の揺れによって私の肩に凭れかかる。途端に目を覚まし、申し訳なさそうにお辞儀をされる、私も大丈夫ですよの意味を含めて軽くお辞儀をする。
 目の前の男性が腕時計を確認し耳からイヤホンを外す、本体と一緒に鞄の中へ入れ、鞄のファスナーを閉めた。電車がゆっくりスピードを落としながらホームに入る。男性が鞄を持ち目の前から移動するのを待ち、私も立ち上がる。
 車両のドアが開いた。ドアの向こう側には身体を強張らせて少し怖い顔をしているような気がする人々が待っている。電車から降りて歩き始める。深く息を吸いこみ、冷えた空気が肺へと入っていくのを感じる。慌ただしい人々の一員となり、人ごみとと喧噪のなかへと歩いていく。
□ 寒い朝に外出した私が見た光景。ホームで待つ女学生、車内の乗客。服装、行動などしっかり観察されています。ここに想像が加われば物語がはじまりそうですね。
名作読み     児童虐待を考える
『にんじん』を読む
 前期のゼミ通信で、平成23年度「児童虐待防止」で標語募集をお知らせしました。テーマとしては「児童虐待問題に関する国民一人ひとりの意識啓発に資するにふさわしい標語」ということでしたが、挑戦した人はいたでしょうか。(11月厚生省HPで発表)
編集室応募「見逃すな ママ SOSと子のサイン」「何か変 思う心が 母子救う」他
 新聞には、毎日のように悲惨な事件・事故の記事が載っています。なかでも胸が痛いのは、子ども虐待のニュースです。実の両親に殺される子どもが後を絶ちません。なぜ母親と父親は、一番可愛い盛りの我が子を死ぬまで虐待してしまうのか。表面上には、いろんな理由、事情があると思います。が、人間の大きな謎です。
 ゼミ後期では、テキスト事件もの(志賀直哉作品)と併せて、名作『にんじん』を読み、この作品の家族を徹底観察することで虐待の闇を考えたいと思います。
 先週9月26日、後半スタートは、『にんじん』の最初の4話を読んでもらいました。「めんどり」「しゃこ」「犬」「いやな夢」です。これだけでは、まだ家族状態や親子関係はわからないと思います。が、とりあえず4作品における「にんじん」の感想を書いてもらいました。
「めんどり」都会では、夜が真っ暗ということはありません。が、昔の田舎は、一歩外に出れば、真っ暗闇でした。隣に回覧板を持っていくのが怖かった。兄弟のうち弱いものが行く。
「しゃこ」生き物を殺す。何か残酷に感じますが、子どもにとっては、それほどでもないのです。夏、小学校では理科の時間、カエルの解剖が普通に行われていました。
「犬」犬というと、最近ではペットとして大切に、人間の子ども同様に飼う人もいますが、昔は、ルピック家同様、犬は、蹴られたりたたかれたりしていました。
「いやな夢」母親が末っ子と寝るのは、どこの家庭にもある。。
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私が見た4作品のなかの『にんじん』
椎橋 萌美
*「めんどり」夜、閉め忘れた鶏小屋の戸を閉めに行くのは誰? にんじんの立場は。
中学生の不良グループの中にいる”おもしろいことをしてくれる役”的ポジション。自分はグループにいていい存在であることを確かめたいが、聞くことができないので、存在していようと行動している。
*「しゃこ」(やまうずら)父親のルピック氏は狩猟家でもある。散弾銃で撃つので、死なない獲物もいる。半死にのしゃこを殺すのは誰? にんじんの役目は。
母親による、”にんじん冷酷非道計画”にまんまとはめられる。
春日 菜花
*「めんどり」夜、閉め忘れた鶏小屋の戸を閉めに行くのは誰? にんじんの立場は。
面倒事を片付けてくれる、まるで雑役夫のようなものだと思えた。実の息子にここまで言えるのも、そうそう出来ないだろう。これならまた使用人のほうがマシではないのか。
*「しゃこ」(やまうずら)父親のルピック氏は狩猟家でもある。散弾銃で撃つので、死なない獲物もいる。半死にのしゃこを殺すのは誰? にんじんの役目は。
まだ子供であるのに、生きたままのしゃこを殺させるのは驚いた。父親も母親も、彼のことを息子とは思っていないのではないだろうか。命令されたから、実行したまでなのに、それに関してもまたとやかく言われてしまうのはあまりに理不尽だ。彼は奴隷のようだ。
*「犬」犬のピラムが吠えたててうるさいとき、「にんじん」はどうするか。
彼もされるがままではなくなってきたのか、ほんの少しの抵抗が垣間見えた。しかし、”命令されてもいないのに”というのは、もう何度も彼は同じように命令されたことがあり、その度に仕打ちを受けたように思えた。
*「いやな夢」客が来たとき、一緒のベットに寝る。このことから母親のルピック夫人は、特別に、にんじんを嫌ってはいないようだが・・・。
杉山 知紗
*「めんどり」夜、閉め忘れた鶏小屋の戸を閉めに行くのは誰? にんじんの立場は。
不思議だった。血が唯一繋がっていないのだろうか。扱いがひどい。別作品の名前を出すのもあれだが、ハリー・ポッターを思い出した。あれも親せきなど他にも多く邪険に扱われる設定があったが、「めんどり」の本文中ではまだ分からず、もやもやする。でもにんじんという愛称や容姿の限り、やはり血がつながってないんじゃないかと思う。
文芸研究Ⅱ下原ゼミNo・175 ――――――― 6――――――――――――――――
*「しゃこ」(やまうずら)父親のルピック氏は狩猟家でもある。散弾銃で撃つので、死なない獲物もいる。半死にのしゃこを殺すのは誰? にんじんの役目は。
嫌な役目を押し付けられてはいるが、性分的には向いているようだった。果たして単に向いているだけなのか。何か日頃のストレスなどをぶつけているのか、少し悩むところだ。しかし途中の文章を見るに、”一人やそこらの友達なら、片手でもって、もっと容易にしめ殺せるだろう”だの、最後の兄の台詞なので、単に向いているだけ、ただ恐ろしいほど、という感じがした。
*「犬」犬のピラムが吠えたててうるさいとき、「にんじん」はどうするか
にんじんはやっかいごとを全て引き受けさせられる人間らしいが、でもやっぱり人間なので、本当にすべてをそう引き受けているわけではない、という感じだった。3つの作品中、これが一番人間らしく安心した。
武田 結香子
*「めんどり」夜、閉め忘れた鶏小屋の戸を閉めに行くのは誰? にんじんの立場は。
本当に家族の一員なのか?と思うくらい相手にされていない立場。兄も、姉も、母親も、にんじんは面倒なことを押し付けられる便利な存在としか見ていない。もはや、人として見ていないのではないだろうか。それでもにんじんは褒めてもらいたくて一生懸命になる。最後の母親のセリフ後、彼はどんな表情をしているのだろうか。
*「しゃこ」(やまうずら)父親のルピック氏は狩猟家でもある。散弾銃で撃つので、死なない獲物もいる。半死にのしゃこを殺すのは誰? にんじんの役目は。
誰もがやりたくない立場(仕事)をまかされている。意見を言ってみても全部はねかえってきてしまう。認めてほしくて、褒められたくて、にんじんは作業をこなしていっているような感じがある。
*「犬」犬のピラムが吠えたててうるさいとき、「にんじん」はどうするか
「言われなくてもやる」のは、にんじん自身が「気がきくでしょ?」と言いたいような気持だからだと思う。最後の「犬のやつ、夢を見ていたたんだよ」というセリフは泣いているように見える。
藤塚 玲奈
*「めんどり」夜、閉め忘れた鶏小屋の戸を閉めに行くのは誰? にんじんの立場は。
母親と兄姉からめんどり小屋(鳩小屋)の戸締りをしてくるように命令される。
ここで問題なのは、にんじんがおだてられてそうなったということに気づいていない、ということである。押し付けられたのにも関わらず良い気になって仕事を引き受けてしまっていたので少々自業自得か。
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*「しゃこ」(やまうずら)父親のルピック氏は狩猟家でもある。散弾銃で撃つので、死なない獲物もいる。半死にのしゃこを殺すのは誰? にんじんの役目は。
しゃこをしとめる、という残酷な仕事。
普通なら、子供にはさせない仕事だが・・・。
*「犬」犬のピラムが吠えたててうるさいとき、「にんじん」はどうするか
家族に安心感を与えようと、頼まれてはいないが、犬の様子を見に行く。犬の様子を報告するが、家族は相手にしてくれない。
會澤 佑果
*「めんどり」夜、閉め忘れた鶏小屋の戸を閉めに行くのは誰? にんじんの立場は。
やっかい事、誰もやりたくない事をやらされる、口ごたえは許されず、面倒があるときばかり持ち上げられ、いいように使われている。
*「しゃこ」(やまうずら)父親のルピック氏は狩猟家でもある。散弾銃で撃つので、死なない獲物もいる。半死にのしゃこを殺すのは誰? にんじんの役目は。
けがをし、未だ生きていることしゃこをきれいに殺すこと。
*「犬」犬のピラムが吠えたててうるさいとき、「にんじん」はどうするか
家族をだまし、家の外を見て回らずに息を殺して家の中にいる。にんじんの反抗心がかいま見える。
内田 悠介
*「めんどり」夜、閉め忘れた鶏小屋の戸を閉めに行くのは誰? にんじんの立場は。
やっかい事、面倒な事などの誰もが進んでやろうとしないことをやらされるポジション。
*「しゃこ」(やまうずら)父親のルピック氏は狩猟家でもある。散弾銃で撃つので、死なない獲物もいる。半死にのしゃこを殺すのは誰? にんじんの役目は。
 手傷をうけたままでいる「しゃこ」の殺し。
*「犬」犬のピラムが吠えたててうるさいとき、「にんじん」はどうするか
家族から派遣された斥候の役回り。
いぜんとして彼は損で面倒な役回りだが、いささか不まじめになってきた。ただ、その不まじめさは効率よく楽しようなどという頭の使い方のいい者の特性ではなく、根本的な問題を解決せずに逃避して行われる、見ている方にとっては愚かしく馬鹿馬鹿しい類のもの。
◎ ルピック夫人の評判がよくありません。彼女の立場に立って発言できる人は、してください。弁護できる人は弁護してみてください。
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総評     「にんじん」一家の様子
「めんどり」「しゃこ」「犬」を読んでのゼミ参加者7名の感想は、「にんじん」の自業自得という感想もあったが、大方の見方は、この家族の歪みである。「にんじん」一人が家族から村八分にされている。そんな印象だった。血の繋がっていない子。母親からは、憎まれっ子。しかし、課題から抜けてしまったが、「いやな夢」では、母親は、「にんじん」と一緒に寝ている。もし本当に、嫌っているのなら、一緒に寝たり、いびきがうるさいからと、尻をつねったりしないだろう。このへんをどうとらえるか。
ちなみに「にんじん」一家の家族構成は、以下のようである。
郊外の一戸建て。畑はある。家畜は、ニワトリ、うさぎを飼っている。
ペットは犬のピラム。家族からは、蹴飛ばされている。
父親 ―――― ルピック氏・・・・・セールスマン
母親 ―――― ルピック夫人・・・・専業主婦
兄  ―――― フェリックス・・・・中学生ぐらい
姉  ―――― エルネスチーヌ・・・小学生高学年~中学生
弟  ―――― にんじん ・・・・・小学生2~3年(母親と一緒に寝られる年齢)
お手伝い ――― オノリーノ・・・・67歳
     ――― アガト(オノリーノの孫娘)オノリーノの後釜
*「いやな夢」は、客が来たとき、にんじんは母親のベットに母親と一緒に寝る。末っ子の扱いとしては当然のことにみえる。もし母親のルピック夫人の心にちょつとでも、にんじんを嫌ったり憎んだりする気持ちがあれば、とても同じベットで寝るとはおもえない。精神的に無理である。が、どうだろうか・・・。母親と末っ子の関係は、難しい。(たいていの場合は、甘やかしが原因であるが)。つぎの作品で「にんじん」とルピック夫人の関係をみてみることにする。
 
 その前に、作者ジュール・ジューナール(1864-1910)と『にんじん』作品について
1864年 フランスに生まれる
1881年 文学を志して大学進学を断念
1886年 歩兵連隊を歩兵伍長として除隊
1889年 フィガロ紙の記者になる
1894年 フィガロ紙を退社。小説『にんじん』を出版
『にんじん』の前扉に「ファンテックとバイイへ」とある。この二人は誰?
作者ルナールの長男と、長女である。
従って、この作品は、我が子二人に捧げられたということになる。
なぜ、残酷物語のようなこんな作品を我が子に・・・
これも大きな謎の一つである。
1897年 父、自殺する
1900年 戯曲『にんじん』初演
1909年 母、井戸に落ちて死ぬ。自殺の疑いも
1910年 5月22日未明、パリで死ぬ。46歳
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10・3ゼミ名作家族観察読み
10・3ゼミでの読みは、次の3作品です
「失礼ながら」「尿瓶」「うさぎ」の3作品です。
家族評 = まだ、ちょつと覗いただけですが、この両親の性格を考
えてみましょう。
Q.父親のルピック氏は、どんな人ですか
1.亭主関白  2.恐妻家  3.普通の父親  4仕事オンリーの.無責任パパ
5.尊敬できる父親  6.尊敬できない父親   7.その他(  )
Q.母親のルピック夫人は、どんな人ですか
1.カカア天下  2.良い妻  3.教育熱心  4.怒りっぽい   5.普通の母親
6.異常だ  7.その他
テキスト読み(志賀直哉作品)
 後期は車窓観察ですが、その一環として事件観察を行います。新聞記事にある事件簿を、創作作品とする練習をしていきます。挑戦してください。5~6枚。発表は、この通信で。
 テキスト読みする『剃刀』は、その見本のような作品です。(ちなみに前期の『車内観察』の見本は『夫婦』でした))
剃 刀
 この作品が、新聞記事をヒントにしたものだとすると、新聞記事は、おそらく、こんな見出しと記事だったのでは。(現在の新聞では)
理容師、顔剃りに失敗 男性客死亡
 ×月×日、午前11時頃、麻布六本1-2-3理容店「辰床」から男が大けがを負ったと119番通報があった。消防が駆けつけると店内の客椅子に若い男が咽から血を出してぐったりしていた。若い男は、出欠多量ですでに死亡していた。若い男は、この店の客で、日本太郎さん(23)理容師の芳三郎さん(30)が咽を剃っているとき、間違って切ってしまったとのこと。警察は事件事故の両面から関係者から事情を聞いている。
文芸研究Ⅱ下原ゼミNo・175―――――――― 10――――――――――――――――
私の夏休み          創作・46年前の夏休み
 毎年、夏休み明け学生たちに「どんな夏休みでしたか」と聞く。そのたびに、私は、学生だったときの夏休みを思い出す。いま私は、還暦半ばである。単純に、もう数十回余の夏があった勘定になる。そのなかで、いまも懐かしく思い出すのは46年前の、あの夏休みである。いまもはっきりと脳裏に思い出すことができる。
 大学1年だった。7月になったので考えた。はじめての大学生の夏休み、どんなふうに過ごそうか、と。しかし、先立つものは、まずお金。資金なくて何の計画。と、いうわけで、いまはあるかどうか知らないが、下落合にある学生援護会に行った。(下落合は東西線高田馬場駅の次の駅。)当時、そこで学生に部屋を斡旋してくれたり、バイトを紹介してくれたりしていた。会館の廊下にバイトの張り紙がずらっと並んでいた。1日800円が相場だった。たまに1000円があったが、朝8時から夕方6時までの長丁場だった。皿洗い、製本、配達、店番、掃除、等々どれもこれもぱっとしない。というか決めかねた。(当時私は日本石油のガソリンスタンドで住み込みのバイトをしていた。社員が帰宅する夕方の6時から翌朝出金してくる7時まで、更衣室での寝泊まり。一か月1万円)
 学生たちは、熱心に求人ビラを見つめながらも、廊下を行きつ戻りつうろうろしていた。一か所、学生が素通りするビラがあった。私は、そこに行って貼り紙を見た。
北海道の牧場で働きませんか 期間、夏の間
住み込み三食付き 一日500円
(往復の旅費は農協から支給されます)
 一度も行ったことのない北海道に、旅費をもらって行ける。まず頭にひらめいたのは、それだった。仕事内容も仕事時間も、夏の間というのは、いったいどのくらいの日数か。なぜかまったく気にならなかった。獲らぬタヌキの皮算用で20日働けば1万円か、と気楽に考えた。それで、深く考えもせず、よし決めた!となった。さっそく申込用紙をもらいに窓口に行った。
「北海道ですね」窓口のおばちゃんは、確かめるように言ってから急ににこにこ顔でつづけた。「ちょうどよかった、申込の学生さんたちには、これから説明会があります」
 説明会?!私は、ちょつと驚いた。説明会があるバイトなどはじめてだった。なにか面倒な気がした。しかし、乗り掛かった船。聞くだけ聞いてみよう。そんな気持ちで、教えてもらった説明会の会場に行った。驚いたことに大勢の学生がいた。40人部屋に十数日。
 初老の、ここの職員らしい男性が入ってきて説明会をはじめた。
「どうして、説明会を開くというと、このバイトは、はじめてからやめてもらっては困るからです」職員の男性は、面倒くさそうに言った。毎回であきた、そんな様子だった。
「いいかげんな気持ちで申し込まれては、困るんです。往復の旅費もありますが、酪農家の人たちは、大変あてにしているのです」
 せっかく採用して、現地に行っても逃げて帰ってしまう学生が後を絶たない。というのだ。仕事は主に干し草刈りと乳牛の世話。酪農農家に住み込んで、農家の人たちと同じ生活をする。労働時間は、10時間は覚悟の必要あり。たいていは、ここで半数がとりやめる。行った先で、また半数が逃げ帰る、らしい。
 大学に戻って、主任教授に話すと、教授は、急ににこにこ顔になって
「授業の一環にする」と言いだした。
「よろしい4単位あげよう」と気前がよかった。
つづく
―――――――――――――――――― 11 ――――― 文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.175
ゼミ雑誌『旅路報告』作成について
ゼミ誌は、ゼミ一年間の成果の証です。全員で協力して完成させましょう。テーマは、日常です。掲載作品は、課題から「車内観察」「何でもない一日」、自由創作です。
ゼミ雑誌編集長 → 武田 結香子さん  
ゼミ誌副編集長 → 藤塚 玲奈さん  
      ゼミ誌編集委員 → 他ゼミ員全員
Ⅰ ゼミ雑誌作成進行状況
   5月25日 ゼミ誌ガイダンス 武田編集長
5月29日 武田編集長より提案。自由創作も視野に
6月 6日 モチーフ『日常』、内容=課題・自由創作 頁300(一人20枚)
      業者=藤原印刷 写真・図案は無し
6月13日 ゼミ誌内容欠席者にメール、5名返信、武田報告
6月20日 題、レイアウトについて 
6月27日 題公募
7月25日 題「旅路報告」に決定
9月26日 原稿集め 10月二週目に変更
Ⅱ. ゼミ誌原稿、最終締切日10月17日(月)自由創作提出
自由創作&課題作品(課題作品は自薦)
Ⅲ. ゼミ雑誌の納付日は、2011年12月12日です。厳守のこと。
  
【① ゼミ雑誌発行申請書】【②見積書】【③請求書】
1.【①ゼミ雑誌発行申請書】所沢/出版編集室に期限までに提出 完了
2. 6月6日ゼミ雑誌題・型・頁・業者・内容(案)決まる。  完了
3. 9月末、ゼミ誌原稿締め切り。(原自由創作を提出してください)
4. 印刷会社を決める。藤原印刷に決まる。レイアウトや装丁は、相談しながらすすめる。
5.【②見積書】印刷会社から見積もり料金を算出してもらう。
6. 11月半ばまでに印刷会社に入稿。(芸祭があるので遅れないこと)
7. 雑誌が刊行されたら、出版編集室に見本を提出。
8. 印刷会社からの【③請求書】を、出版編集室に提出する。
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2011年読書と創作の旅(後期)の記録
□9月26日ゼミ 参加者7名、司会=杉山 提出=會澤『寒い日』、武田『私の夏休み』
         私の夏休み報告 ゼミ誌について 課題発表・春日「窓辺の光景」、
武田「2022年の車内観察」 名作読み『にんじん』4作品(提出7)
□10月3日ゼミ 
文芸研究Ⅱ下原ゼミNo・175―――――――― 12――――――――――――――――
掲示板
課題提出状況 2011・9・26現在 テキ=テキスト、一日=自分観察 
大野 純弥 →  4本 (テキスト2、一日2) □□□□
         
椎橋 萌美 →  4本(車内1、一日1、時事1、名作1) □□□□
         
會澤 佑果 →  4本(時事2、テキスト1、車内1)   □□□□
         
藤塚 玲奈 →  13本(一日5、時事3、テキ3、車内1) □□□□□□□□□□□
    
 春日 菜花 →  24本(車内3、一日8、時事4テキ6、創作2、) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
藤原 侑貴 →  2本(テキ1、夏休み1) □□
中村 俊介 →  2本(テキ1、時事1) □□
柳瀬 美里 →  9本(一日3、時事3、テキ3) □□□□□□□□□
杉山 知紗 →  20本(車内1、一日6、時事4、テキ7、創作1) □□□□□□□□□
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三矢 日菜 →  5本(一日2、時事1、テキ2) □□□□□
武田結香子 →  24本(車内2、一日9、時事4、テキ6、創作1) □□□□□□□□□
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内田 悠介 →  6本(一日2、時事1、テキ2) □□□□□
花井 三記 →  
※ 出席日数、課題提出の少ない人は、後期ゼミ頑張ってください。遅れ取り戻せます。
お知らせ
■ 10月22日(土)ドストエーフスキイ全作品を読む会第246回読書会
作品『主婦』池袋西口・勤労福祉会館 第7会議室 (下原ゼミ生0円)
※ 詳細並びに興味ある人は「下原ゼミ通信」編集室まで
■10月8日(土)~23日(日)「写真・童画家熊谷元一回顧展」清瀬市郷土博物館
10月15日(土)午後1時~ 講演「熊谷元一を語る」国立静岡大学・矢野敬一教授
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編集室便り
  住所〒274-0825 船橋市前原西6-1-12-816 下原方
  メール: TEL・FAX:047-475-1582  toshihiko@shimohara.net
提出原稿は、メール、FAXでも受け付けます。(送信でもらえると二度手間と間違い打ちがなくなるので助かります)
ゼミ評価は、以下を基本とします。
出席日数 + 課題提出(ゼミ誌原稿)+α = 100~60点(S,A,B,C)

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