文芸研究Ⅱ 下原ゼミ通信No193

公開日: 

日本大学芸術学部文芸学科     2012年(平成24年)6月11日発行
文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.193
BUNGEIKENKYU Ⅱ SHIMOHARAZEMI TSUSHIN
                              

編集発行人 下原敏彦

                              
4/16 4/23 5/7 5/14 5/21 5/28 6/4 6/11 6/18 6/25 7/2 7/23
  
2012年、読書と創作の旅
6・11下原ゼミ
6月11日(月)の下原ゼミは、下記の要領で行います。文ゼミ2教室
1. 出欠・配布  → 前回ゼミ報告・班長報告・ 指名
2.  提出課題発表 → 自分の一日観察 車窓(社会)観察   
3.  読むこと → 『出来事』(車内観察)
4.  書くこと → 社会観察(オウム事件について) 
6・4ゼミ報告     夏日で、参加者激減、4名
6月に入った。4日は梅雨入り前の何とやらで、快晴。気温もぐんぐん上がり夏日となった。先週の局地雷雨と同じ異常気象か。天気の影響かどうかは知らないが航空公園2時45分発の大学バスは、空っぽ。貸し切り同然。ゼミ参加者も、最小の4名だった。
・吉岡・根本・石川・志村・古谷の皆さん。
貯まった課題、一気に発表 司会進行は石川舞花さん奮闘
課題提出率のよさと、ゼミ雑誌ガイダンス報告もあって、提出課題が山と貯まっていた。この日、司会進行の石川舞花さんが奮闘。大方、片付けた。4名だっただけに参加者の負担は多かった。ご苦労様。発表された課題は以下の作品でした。
〈テキスト『或る朝』の感想〉
石川舞花、吉岡未歩、根本留加、志村成美、鞆津正紀、古谷麻依
〈擬人化創作〉
矢代羽衣子「赤毛の少女とリンゴの木」、古谷麻依「かくれんぼ」、石川舞花「すみれ三姉妹」、志村成美「春待ち」、疑心化創作関連としてテキスト研究で『菜の花と小娘』について。
読むことの習慣化 
『網走まで』比較で夏目漱石『三四郎』の車内観察を読む
読むことの習慣化として夏目漱石『三四郎』の最初の章を読んだ。まったく同時期に発表


された(『三四郎』は、1908年9月1日から新聞小説として)、書かれた(『網走まで』は、1908年8月末に)作品。無名の文学青年と、時の流行作家が書いた二つの作品だが、どちらも時代を写す鏡として書かれている。それ故にどちらも脈々と読まれている。
文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.193―――――――― 2 ―――――――――――――
課題発表(掲載できたものから順次)
自分の一日観察
課題10.「連休中の一日の記録」
〈志村成美〉     夢は、布団のなかので
 私が今、切実に求めるもの、それは「睡眠」だ。せっかくの連休を寝ることに費やすなん
て勿体ないと思うかもしれない。私も思う。普通は旅行に行ったり近場でも買い物に行って
ゆったり過ごすのだろう。けれど、そんなリアルが充実しているよりも、私は布団の中で過
ごしていたかった。
 しかし、私の連休はゆっくり布団の中にいることを許してくれなかった。何故か、それは
春祭に向けて販売する部誌用の漫画原稿が終わっていなかったからだ。締切は連休明けの7
日。全12頁中4頁はペン入れ済み、残りは下書きとも言い難いラフで筆を止めていた。 
 もっと計画的に進めていれば、この連休は、6W(ゴールデンウィーク)になったのだろ
うが、私は見事に6W(原稿ウィーク)になってしまったのだ。その原稿以外にもやるべき
ことは勿論あり、それらのせいで思うように原稿は進まない。挙げ句、母に(無理やり)羽
田空港まで連れて行かれ一日を潰した。ここで飛行機を見ている暇があるなら布団の中でゆ
っくりしたかった、なんて思ったが口には出さなかった。そんなことを思っている娘なんて
気にも止めず母は飛行機が飛び立つのを見て満足した顔をしていた。何かしらに追われ気が
つけば連休は終りを告げた。今年の連休はまともに休んだ記憶がなかった。来年こそは布団
の中で過ごしたいと思う。ちなみに私の原稿は終わることなく、次の週末まで6W(原稿ウ
ィーク)は続いてしまった。
□課題もあるし、当分はのんびりできませんね。頑張ってください。
課題14. 「車内&一日」
〈梅津瑞樹〉        自宅(周辺)観察 
 朝、窓の外の騒々しい声で目が覚めた。朝っぱらから何がそんなに楽しいのか。僕は起こ
されてしまったことへの腹立ちから、映画「シャイニング」のジャツク・ニコルソン顔負け
の狂気に満ちた表情で窓の隙間から顔を出した。
 窓のすぐ下には6,7歳ぐらいの子供たちとその保護者らしき大人数人が皆一様に目にフ
イルムのようなものをあてて鶏のような声で、歓声をあげていた。連中が見つめている空の
一点ふり返り、ようやく全てを理解した。しかし苛立ちは、その日、家をでるまで治まらな
かった。
□この日、千葉県地方は曇り。朝はだれもいない公園に大勢の人がいて驚きました。
〈石川舞花〉         寸借詐欺と私
 自転車をいつもの場所に停め、最寄りの駅に向かって歩いていた。5月だが風が肌寒い朝
である。まだ開店していないショツピングモールの前で声をかけられた。50代後半位の歳
の女性だ。船橋の駅まで行きたいが定期を忘れてしまったので500円貸して欲しいという。
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 最寄駅津田沼から船橋までわずか2駅。いくら定期を忘れてしまったとは云っても明ら
かに不自然だ。ここはしっかり、きっぱり断る場面である。
 だが、なにぶん付き合いと対話能力に欠ける私である。かろうじて「今は持ち合わせがな
いので」と言ったが、相手の請うような視線が痛い。うまい言葉も見つからず瞳の力に半ば、
強制されるように財布を出す。小銭入れをのぞくと全く入っていない。500円玉も100円
玉も、10円玉すら入っていないのだ。
「小銭を全く持っていないのです」
しぼり出すように言った。これで済めば、小銭を持っていなかったことは幸運だったと言え
る。
 だが、相手の誌千の圧力は続いている。とうとう私は千円札を取り出した。私の携帯番号
と名字は伝えたが、相手の名前も連絡先も知らない。社会を渡っていく能力がないとはこの
ことだ。500円貸して欲しいと言われ、1000円渡しているのだから。
 あれから1週間近く経つが、何の音沙汰もない。私の1000円はどこに行ってしまったの
だろう。そして、この先、私は社会を渡っていけるのだろうか。我がことながら不安である。
□人が困っていたら、助けてあげたい。その気持ちは無くさないでいて欲しいと思います。
だが、残念ながらこの世は、いい人を騙す人もいるわけです。そんな人にとって、善意は甘
い汁です。次々犯罪を重ねていくでしょう。と、いうことは自分の善意が多くの被害者を作
っていくことになります。防犯委員をやっている私の助言としては、この場合「電車賃でお
困りでしたら、駅員さんに相談してください」こう、きっぱり話すことです。
〈石川舞花〉       折り紙の世界
近頃、折り紙に凝っている。幼い頃から折り紙が好きで、大きくなってからも無性に折り
紙が折りたくなることが、1年に1、2度ある。今回も、またそんな時期が巡ってきたというわけ。特に『ユニット折り紙』を好んでやっている。6個なり12個なりのユニットをつくり、それを組み分けて立体を作るのだ。ユニット1個につき1枚の折り紙がを使うので1つの作品で沢山の折り紙を消費する。
 そういう訳で、折り紙を買うためにユザワヤへ行った。千代紙や両面折り紙など種類が豊富で楽しい。目移りしつつ、結局選んだのは「両面フローラ折り紙だ」片方が単色、片方が花柄の両面折り紙だ。花柄を全面にだして折るもよし、単色の中に花柄が顔をのぞかせるよう折るのもよし、で、バリエーションが広がる。
 今度は何を折ってみよう。買ったばかりの折り紙を手に家路につきながら私は次なる作品
に思いをはせた。
□作った折り紙作品は、どうしているのですか。見てみたいものですね。
〈吉岡未歩〉       喧騒のなかの孤独
 部活活動の日、江古田の校舎での活動なので、3限で授業が終わった私は一人江古田に
向かう。他の部員はほぼ4限まで授業があるので着いたらのんびりしようと思っていた。
 江古田の部活はあまり一人で訪れたことがなかったので、少し緊張しながら足を運ぶ。恐
るおそる扉を開けてみる。案の定、部室には誰もいない。なんだか周りは賑やかで、どうや
ら隣の部室ではゲームか何かで盛り上がっているようだった。どの部屋からも楽しそうな笑
い声が聞こえてきた。私は、その盛り上がりの中、急に一人取り残されたかのような気持ち
になった。そうだ、この空間には、3、4年生しかいないのだ。私をしっている人がここに
文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.193―――――――― 4 ――――――――――――――
は、いないのだ。
 私は落ち着かなくなって寝っ転がってみたり、カバンの整理をしてみたり、髪を結び直したりトイレに行ったりした。最後には耐え切れず、その日、家から直接部活に来るという友達にメールした。数十分後、友だちが到着した。外から向かってくるあの時の足音がどれほど待ち遠しかったか。そして、自分の寂しがりやさに、少し驚かされた日であった。
□誰も知る人がいないところで一人待つ心細いですよね。お年寄りの孤独死問題を思い出しました。
車窓(社会)観察
課題12.「振り込め詐欺はなぜなくならないのか」
 地域の防犯委員をやっている。集会でいつも警察が説明するのは、「引ったくり」「押し売り」そして「振り込め詐欺」の三つの犯罪についてである。防ぐのは、どうしたらいいか。「引ったくり」と「押し売りは」は、注意と1週間以内の返品という防止方法がある。が、目下、お手上げ状態なのは「振り込め詐欺」だという。このところ私の地域だけでも億単位の被害がでている。自分は大丈夫と思う人ほど危ないとのこと。人は、なぜ、振り込んでしまうのか。考えてもらいました。
そんな電話を直接、聞いた人。知り合いに被害を受けたひとは・・・・
〈古谷麻依〉   決して許せるものではない
 身近な人物になりすませてお金を騙し取る振り込め詐欺は、見破られる度に巧妙に手口を変え、これから先もなくなることはないと思う。言い方はよろしくないが「最も楽な騙し方」、だからだ。人の弱味でなく、善意につけ込む手口は、決して許せるものではない。
〈鞆津正紀〉   疑心暗鬼は嫌だが、もう少し疑う心を
 逆に、なぜ人はいつまでも振り込め詐欺にひっかかるのか。思うに誰も振り込め詐欺に引っ掛からなければ、すぐにすたれると思うのだが。
 この詐欺のポイントは、最初に相手の判断力を奪う所からはじまる。見うちの不幸などを突き付けられた被害者たちはパニックになり、相手の正体を見極められなくなるのだとか。であれば、現代人には、まず落ち着かないのだろう。
 一度落ち着いて考えれば不審な点も見つかるはずだ。NHKの集金やら給食費やら、好きなだけ踏みたおせばいいじゃないか。実際、NHKの集金だと訪ねてくる人間が本当にNHKの職員かどうか判然としないと感じるのは私だけだろうか。疑心暗鬼の社会も嫌だが、もう少し相手を疑ってもよいのではなかろうか。
〈梅津瑞樹〉     古典的な盗みや、演劇的装いに・・・
 振り込め詐欺の手口は、一様に「なりすまし」という形式をとられる。
 電話越しに突然「もしもし、俺だけど」ではじまる「オレオレ詐欺」は、一世を風靡した。もちろん皮肉である。しかし、当時、僕はこの詐欺の手口に何だかただならぬ美しさを感じた。それは、幼少時、一心不乱に読みあさった江戸川乱歩の『少年探偵団』シリーズに登場する、あの「怪人二十面相」のような、古典的な盗みや騙しの、あの演劇的な装いを見てと
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れたからだ。「プリキュア」や「仮面ライダー」が今も流行しているように、人は誰も変身願望を己の心底に眠らせているのかもしれない。
〈石川舞花〉     世渡りを身につけること
 身も蓋もない言い方をしてしまえば、ひっかかる人がいるからなくならないのだと思う。詐欺師がいくら仕事をしようと思っても誰も引っかかってくれなければ仕方がない。良いカモがいるから商売繁盛し、さぎがなくならないのである。
 では、どういう人が引っかかりやすいのか。「小金を持っている中流の世間知らずの高齢者」だと思う。ない袖は振れないので、貧乏過ぎる人は引っかかりにくく、超のつくお金持ちは、自分で勝手に振り込んだりはできない。「お金と自由を持っていて、社会とかかわりの薄い人」というのが該当すると思う。そして、これをなくすためには世間を知ること、人間と関わること、つまり世渡りを身につける必要なのではないだろうか。
〈吉岡未歩〉   被害を抑えるのは難しい・・・・
 被害者側から考えると、やはり身内に何か起きた時、いちいち疑っているほど冷静さを保てるか、難しいからではないかと思います。
 これだけ注意しろと言われているので、大丈夫だろうと思いがちですが、普段あまり触れないようなことを言われるとどこをどう疑っていいか、確かめようがないので被害を抑えるのが難しいのではと考えます。
□昔「オレオレ詐欺」、いまは「振り込め詐欺」、犯人たちの手口はさまざまです。何億、何十億円と入ってくることから組織化され、騙しのテクニックを覚える学校まであるそうです。彼らがなりすますのは、孫、夫、成人した子供のようです。
理由は、孫は、ただただ可愛さから、夫は、世間体、会社倒産の心配、成人した息子は、愛人問題、痴漢、会社の金の使い込みなどがあげられている。
 相手の身分は、友人、知人、役所、警察、銀行員、弁護士。最近は、税務署を名乗る人もいる。現金の受け渡し方法は、携帯誘導でのコンビニからの振込、公的機関の人間を装っての訪問。弁護士、系観は示談の話と言ってくる。
防犯会議で報告された事例をいくつか紹介してみよう。幸い未遂に終わった。
ある主婦の場合
朝、10時頃、電話。夫は会社、子供たちは学校か仕事。家には主婦一人。
電話鳴る
主婦「はい、――でございます」
犯人1「おれだけど、まずいことになった」息を切らせて
主婦「なんですの、あなた、何です ? 」
犯人2「お電話、代わりました。弁護士の――です」
主婦「弁護士さん?!」
犯人1「いま、――のコンビニの事務所におります。警察の方も来ています」
主婦「コンビニ ?! 会社じゃないんですか」
犯人2「ご主人さま(息子さん)、今朝、こちらで軽犯罪に触れる行為をされまして、いまお話をお聞きしているところなんです」
主婦「軽犯罪って?! なんです」
犯人3「はい、電話代わりました。○○交番の巡査長です。こちらの店内で痴漢行為が発生したといことで緊急出動しています。まだ示談の余地ある事件なので連絡しました」
 主婦は、すっかり信じてしまい、早く解決しよう、そのことに心を奪われた。
文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.193―――――――― 6 ――――――――――――――
テキスト研究 
テキスト『網走まで』について
同時期に新聞連載となった『三四郎』と日本の社会
 前回、夏目漱石の『三四郎』の前半(車内観察個所)を読みました。大学に入る為に上京する学生が、同席した大人の男と女にいろいろと教えられる話。
『網走まで』は、日光に遊びに行く学生が、同席した母子に同情を寄せる話。
この両作品には、当時の社会のことが織り込まれていると感じ、このころ社会になにがあったのか。若き志賀直哉はなにを思っていたのか。
 『網走まで』は、明治四十三年(1910)に『白樺』第一号に発表された。が、実際に書かれたのは二年前の明治四十一年といわれている。作者が25歳のときである。明治三十九年七月に学習院高等科を卒業。九月に東京帝国大学文科大学英文学科に入学している。
 この時代、明治四十年代は、どんな時代だったのか。日清日露戦争に勝利した日本は、韓国併合(1910)を目指して大陸侵攻の準備を着々と進めていた。ポーツマス条約、明治三
十九年(1906)には南満州鉄道会社を設立するなど富国強兵政策をますます強めていた。
 しかし、華々しい国策の裏で暗い出来事が次々起きていた。明治四十二年には伊藤博文がハルビン駅で暗殺された。また四十三年には、大逆事件が起き、幸徳秋水ら二十四名に、死刑、の判決がくだった。そのうち十二名が減刑され無期懲役となったが、幸徳秋水はじめ12名が絞首台の露と消えた。
 大逆事件は知識人に大きな衝撃をあたえた。森鴎外、永井荷風、石川啄木、与謝野鉄幹らのおどろきと打撃はかれらの作品に書きのこされている。(『高校日本史』実教出版)
 
 大逆事件(明治天皇の暗殺を計画したとされる嫌疑)は、明治四十四年(1911)二月十八日に上記の判決が下った。この死刑宣告の判決について、志賀直哉は、その感想を二十日金曜日の日記にこう書きしるしている。
二月二十日 金曜日
 ・・・一昨日無政府主義者二十四人は死刑の宣告を受けた。日本に起つた出来事として歴史的に非常に珍しい出来事である。自分は或る意味で無政府主義者である、(今の社会主義をいいとは思わぬが)その自分が今度のような事件に対して、その記事をすっかり読む気力さえない。その好奇心もない。「其時」というものは歴史では想像出来ない。
 これより20年も後、1927年(昭和2年)に「なんとなく不安」と芥川龍之介は自殺したが、志賀直哉が『網走まで』を書いた時代も、何やらきな臭さを感じる不穏な時代であった。優れた作家は、いつのときも敏感に時代を感じとり、作品に織り込む。漱石もまた、しかり。先週、読んだ『三四郎』は明治四十一年(1908)九月一日から十二月二十九日まで、百十七回にわたって東西の朝日新聞に掲載された。『網走まで』は明治四十一年(1908)八月十四日と執筆年月日が明記されていることから、両作品は、いろんな点で比較になり得る。
まず作者だが、『三四郎』を発表したときの漱石は四十一歳。前年、明治四十年(1907)一切の教職を辞して朝日新聞社に入社。すでに『草枕』を発表し、『我輩は猫である』『坊ちゃん』などを相次いで出版。押すも押されぬ大流行作家となっていた。
一方、『網走まで』の志賀直哉は、小説家には程遠い駆けだしの文学青年。まったく境遇の違った両者だが、両作品は遜色ない。両作品は、奇しくも日本の危うさを訴えている。
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「・・・いくら日露戦争に勝って、一等国になってもだめですね・・・」 日本についても「滅びるね」と即答している。
ちなみに『三四郎』を発表した年、明治四十一年の年譜をみると、このような文学活動をしている。
1月1日より4月6日まで『坑夫』を朝日新聞に連載。
『虞美人草』(春陽堂)出版。友人、森田草平に小説『煤煙』の執筆を勧める。
6月13日より21日まで『文鳥』を大阪朝日新聞に連載。
7月から8月にかけて『夢十夜』を東京・大阪朝日新聞に連載。
9月1日より12月29日まで『三四郎』を朝日新聞に発表
 なぜ、『三四郎』を持ち出したのか。この作品も出だしは車内観察からはじまる。子ども連れではないが、子持ちの女と同席する。『網走』は、同情と純情だが、『三四郎』は新聞小説だけに色っぽいところもある。直接的な時代批評もある。そして、主人公の目的地、東京での生活が長編で描かれている。
 この作品が、単なる新聞小説で終わることなく、いまも読みつづけられているところはなぜか、『網走まで』を知るうえで、この作品の車内観察部分を読んでみることにする。
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『小説 網走まで』を読む
【課題・11 テキスト『網走まで』感想】
〈梅津瑞樹〉
列車が走るなか、淡々と家族の観察が描かれる。しかし、読んでいると些細なところでも己のフェティシズムをくすぐられるような気がした。
〈石川舞花〉
 電車の中のどこにでもありそうな一コマを切り取ったものだが、「自分」と「女の人」の関係が神秘的な気がした。「女の人」が、子持ちの色っぽさをかもし出していると思う。それが、最後の手紙の件をドキドキさせる要素となっているのではないだろうか。手紙の宛名が男宛と女宛1通という所に不思議さがある。男宛2通というロコツさがないのも魅力だと思う。
〈古谷麻依〉
 主人公の男性は、乗客の女性を随分つぶさに観察しているものだと思ったが、まさかそれから彼女の夫にまで連想が及ぶとは。彼の目には、彼女がそれだけ魅力的に映ったのかもしれない。子どもがいなければ、なおよかったのかもしれないが、そうすると彼女に声をかけるきっかけは失われていたように思う。
〈吉岡未歩〉
 親子を見比べていると感じ、父と母とを見比べて類似のないのを不思議に思うというところを読んで確かにそうだと感じました。
 また、小さい子どもの扱いにくさや、気むずかしさが如実に表れていて、少しヒヤヒヤしながら読みました。
文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.193―――――――― 8 ――――――――――――――
〈志村成美〉
 最後のシーンで「自分」に託された手紙の男宛と女宛の手紙がとても気になりました。
『網走まで』研究  ――――――――――――――――――――
【題名の謎・課題18「なぜ『網走』としたのか」】
〈石川舞花〉
 網走があまり知られていない土地だから選んだのではないか、と私は思う。『網走まで』という作品では、女のかげりのある色気を感じた。誰も知らないような北の地へ女と子どもだけで行く。そこに神秘的な香を感じる。
 青森や函館、札幌など名が知られていて、賑わっている街では読者が先入観を持ってしまう、という問題もあるかもしれない。
未知の土地へ行く。という状況が一見なんでもない車内の物語をドラマにしているのでは
ないだろうか。
【課題18・この作品を『帝國文学』は、なぜ没にしたのか】
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掲示板
ゼミ雑誌作成について(石川・後藤編集担当委員報告)
これまでわかっていること
①【ゼミ雑誌発行申請書】上記申請書を期限までに所沢/学科事務室に提出してください。夏休み明けみまでに編集作業をすすめ、印刷会社を決め、そうていレイアウトを相談する。②【見積書】印刷会社から見積もり料金を算出してもらい、期日までに学科事務室か出版編集室に提出する。編集作業をすすめ、11月半ばまでには印刷会社に入稿する。
ゼミ雑誌納品は12月7日(金)厳守 !
 ゼミ雑誌ができあがったら、12月7日(金)までに提出。③【請求書】印刷会社から請求書をもらい学科事務室に提出。以上で終了です。
ゼミ雑誌作成企画・・・(仮題)『車内観察』 頁数…150 版型…A6 ?
  
編集室便り
○課題原稿、メールでも可 下記アドレス
□住所〒274-0825 船橋市前原西6-1-12-816 下原方『下原ゼミ通信』編集室
  メール: TEL・FAX:047-475-1582  toshihiko@shimohara.net
読むこと書くことの習慣化を目指して 
ゼミ日誌
月曜日5時限目の記録 (文ゼミ2教室)
□4月16日 参加8名、ゼミ説明 はじめての試みとして紙芝居風の紹介にした。が、DVDの取扱に戸惑ったりして反応はイマイチだった。伝わっただろうかの懸念。
 しかし、後日、13名の希望カード届く。(1名辞退)
□4月23日 12名、自己紹介、班長・ゼミ誌作成委員選出 テキスト読み
司会=梅津
出席=梅津、後藤、鞆津、山野、小妻、小野澤、吉岡、矢代、根本、石川、志村、古谷
読み=テキスト『菜の花と小娘』、嘉納治五郎「精読と多読」、編集室「読書のススメ」
撮影=1年間無事の旅を祈願して全員で写真撮影。
読むことの習慣化 → 『菜の花と小娘』
書くこと=「課題1.愛読書」 → 根本、志村、石川、梅津、山野、古谷
課題2.自分について」 → 根本、志村、石川、梅津、山野、古谷
「課題3.憲法問題」 → 梅津、石川、山野、
     「課題4.『菜の花と小娘』感想」→ 梅津、石川、山野
      
□5月7日 5名、届2名 ゼミ合宿の件 課題発表 テキスト読み
司会=吉岡未歩
出席=吉岡、根本、石川、志村、古谷 届出=矢代、鞆津
討議=ゼミ合宿の有無決め。次ゼミ5・14に持ち越し
―――――――――――――――――― 9 ――――― 文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.193
発表=ゼミ通信188号掲載分
読むことの習慣化 → 『ある朝』
書くことの日常化 → 『ある朝』感想 課題9~10
□5月14日 8名 ゼミ合宿採決 課題発表 テキスト読み
司会=古谷麻依
出席=梅津、鞆津、吉岡、矢代、根本、志村、石川、古谷
発表=「ゼミ通信189」掲載分
読むことの習慣化=テキスト『夫婦』『網走まで』
書くことの習慣化=配布→テキスト感想・創作 「車窓観察」、「車内・一日観察」
□5月21日 5名 1名病欠 課題発表 人生相談、
司会進行=鞆津正紀
出席=鞆津、吉岡、志村、石川、古谷
読むことの習慣化=提出課題読み
客観性を育てる=人生相談「元気をだせるには」
書くことの習慣化=課題15~17配布
□5月28日 6名 ゼミ雑誌ガイダンス報告、ゼミ合宿について、解釈・国語問題
ゼミ誌ガイダンス報告=石川舞花 構成企画案=後藤啓介
出席=梅津、鞆津、後藤、志村、石川、古谷
課題配布=18・19・20
□6月4日 4名 課題の読みと感想。テキスト関連作品の読み
司会進行=石川舞花
出席=吉岡、根本、石川、古谷
読むことの習慣化=テキスト関連で、夏目漱石『三四郎』の車内観察の部分。
課題配布=21・22・23
土壌館日誌
□6月9日(土)雨 梅雨入り
 朝9時30分に自治会館へ。平成24年度の自治会の総会。今週は役員期目の選考委員会が何度もあった。自治会という体質がもともとそうなのか、毎回、なにかはっきりしない。最近わかってきたのは、問題は、なるべく話しあいで解決しようということらしい。
書くことの習慣化・日常化を目指して6・11
                     
名前
課題24.車窓観察「オウム事件」についての感想
              
最近、連日のようにオウム事件に関するニュースがあります。17年前の事件ですが、感想を書いてください。どんなふうに理解しているのか、宗教問題はどうしたらよいかなど。                                 
                              
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書くことの習慣化・日常化を目指して6・11
                     
名前
課題25.テキスト『出来事』感想
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文芸研究Ⅱ下原ゼミ 提出随時 6・11配布
名前
課題26.「自分の一日の記録」
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