文芸研究Ⅱ 下原ゼミ通信No.247

公開日: 

 

 

日本大学藝術学部文芸学科     2014年(平成26年)9月22日発行

 

文芸研究下原ゼミ通信No.247

BUNGEIKENKYU Ⅱ SHIMOHARAZEMI TSUSHIN

編集発行人 下原敏彦

9/22 9/29 10/6 10/20 10/27 11/10 11/17 12/1 12/8 12/15 1/30 1/21

2014年、読書と観察の旅への誘い

 

「読むこと」「書くこと」の習慣化を目指して

 

9・22下原ゼミ

 

9月22日(月)の下原ゼミは、下記の要領で行います。文ゼミ2教室

 

1.本日のゼミ  → 夏休み報告 ゼミ誌について 連絡「お知らせ」

  1.  読むこと → 脚本『ぼた雪』か『獅子と白菊』
  2.  書くこと → 課題 ドキュメント「夏休み感想」

 

 

後期はじまりました

今年の夏は、はじめ冷夏の予報だった。が、反して前半は猛暑がつづいた。もっとも沖縄はじめ九州や四国、西日本は、台風と、集中豪雨に襲われ、大きな被害をだした。9月に入ってからは東京の代々木公園で見つかったデング熱騒動がいまもつづいている。

異常気象と蚊の羽音に振り回された夏だったが、どのように過ごしたでしょうか。

1.旅行に行ったか。 何処へ

2大雨の.災害にあったか。どこでどんな被害に。

3.読書はしたか。 記憶にのこった本。

4.映画か演劇を観た。どんな

5.記憶に残った出来ごとは。

 

後期目標 ゼミ誌作成(11月はじめに入稿)、「一年生」感想、3ゼミ合同発表稽古

お知らせ  熊谷元一写真賞コンクール最終選考会見学について

右写真は、昨年の最終選考会の様子。

「大賞は、これでしょう」と指差しているのは、昨年から新しく選考委員なにられた飯沢耕太郎先生(日芸講師)右から「熊谷元一写真童画館」の岸田館長、下原、ゼミ生の大野君、地元新聞の佐々木記者。後ろ「写真保存会」の原会長。

月 日 9月30日 午後1時~5時

会 場 新宿ホテル市ヶ谷 JR市ヶ谷

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夏休み報告(日記)  2014年の夏休み、どんな過ごし方をしましたか

 

下原(8月1日~15日まで)、『黒板絵』編纂作業。時々地域福祉活動と読書、孫の子守り。

 

8月 1日(金)映画「望郷の鐘」10枚予約、写真童画館『還暦』27冊売れた。故郷・長野県伊那谷の友人から連絡。いま村は、映画「望郷の鐘」の撮影終盤で賑やかい。友人もエキストラで出演とのこと。近所に住む息子の4歳児を預かる。孫、泊る。

 

82日(土)9時30分、小学2年と3歳男児の孫を迎えに駅へ。母親は用事で東京に。

公園で一緒に遊んだあと、部屋でDVD「ようかいウオッチ」を見せる。よくわからないが

人気があるらしい。黒板絵。夕方5時2人を最寄り駅に送る。夜、4歳児の孫を送る。

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深夜BSで時代劇映画「のぼうの城」をみる。水攻めで降参しなかった武将の物語。

8月3日(日)朝9時~11時半まで柔道指導。小学1年(6歳)と父親(38歳)が入門。

父親は有段者。小学生全員。つたやDVD返却。夜、『黒板絵は残った』作成作業。

 

写真に撮られた大量の黒板絵。が、本に掲載し紹介できるのは、僅かな作品だけ。

 

84日(月)終日『黒板絵』写真編纂、作成。夕方、駅前にでて日高店で夜食。店内で後期高齢者のFさんを見かけ声をかける。安否確認(訪問・連絡活動)。

85日(火)『黒板絵は残った』写真整理。「読書会通信145」作成作業に入る。4歳児孫。

86日(水)『黒板絵は残った』「あとがき」「読書会通信145」作成作業。柔道指導。

87日(木)中央図書館 6冊返却 『黒板絵』編纂、「読書会通信」作成作業。

88日(金)「読書会通信145」作成。熱中症予防対策配布。柔道指導。

89日(土)自治会活動(お知らせ84戸配布)、孫(4歳男児)預かる。

810日(日)朝9時~11時15分まで柔道。『ガロ』特集の校正原稿メールで届く。校正して送付。夜、4歳児孫を自宅に送る。

8 11日(月)「読書会通信145」完成。8月読書会のお知らせ。愛幸堂印刷所へ。印刷を依頼。明日、引き渡し125部(20頁)。『黒板絵は残った』編集作業。

812日(火)愛幸堂「読書会通信145」受け取り。9700円支払い。発送作業。

8 13日(水)「読書会通信145」発送。105通。『黒板絵は残った』編纂。柔道

814日(木)歯肉痛あり。康子湿疹。午後、民生委員児童委員協議会。50名、25年度高齢者名簿回収。振り込め詐欺対策について。痴呆対策について

8 15日(金)歯肉痛回復。黒板絵のコピーをとる。京葉ホームセンターで名札板購入。

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後期ゼミについて

後期前半ゼミは、以下の三つの目標を支柱にすすめていきます。

 

○.ゼミ雑誌作成

 

○.11月の研究報告として「岩波写真文庫『一年生』の感想」

 

○.12月合同発表 戯曲『地下生活者の手記』から「ぼた雪」公演稽古

 

この3本柱の内容としては

 

.ゼミ雑誌作成について

 

ゼミ授業の時間中に校正、レイアウトを考える。今後の手順

 

  1.  9月末、ゼミ誌原稿締め切り。
  2.  印刷会社を決める。レイアウトや装丁は、相談しながらすすめる。
  3. 【②見積書】印刷会社から見積もり料金を算出してもらう。
  4.  11月半ばまでに印刷会社に入稿。(芸祭があるので遅れないこと)
  5.  雑誌が刊行されたら、出版編集室に見本を提出。

6 印刷会社からの【③請求書】を、出版編集室に提出する。

 

注意 : なるべくゼミ誌印刷経験のある会社に依頼。(文芸スタッフに問い合わせ)

はじめての会社は、必ず学科スタッフに相談すること。

 

12月12日(金)厳守

 

.11月研究報告

 

以前、配布の『一年生』(コピー)をみての感想、自分の小学生時代との比較。

課題として書いてきて、校正・訂正・加筆しながら発表できるものにする。

 

校外授業計画(案) (ゼミⅡ、ゼミⅢ)許可下りれば以下の日程で

 

月 日 11月8日(土)~9日(日)

 

場 所 熊谷元一写真童画館、「写真保存会」総会参加。

 

交 通 高速バス → 新宿 → 双葉(休憩)→ 昼神温泉郷「写真童画館」

JR  新宿「あずさ」 → 岡谷 高速バス → 「写真童画館」

報 告 岩波写真文庫『一年生』を読む 自分の感想

写真から伝わる実践教育

童画から知る山村文化の伝承

 

 

 

 

 

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3.1215日後期前半最終日3ゼミ合同発表を目指して寸劇の稽古。

 

だしもの

『范の犯罪』か『地下生活者の手記』の脚本化の演劇。読んでから決める。

 

「ナイフ投げ曲芸師美人妻殺害疑惑裁判」判決は有罪か無罪か

「ぼた雪 地下室男VS現代日本の風俗嬢」勝者はどっち

 

「ぼた雪」脚本中 ドストエフスキー『地下生活者の手記』から

 

脚本・下原

ぼた雪(黒字は米川正夫訳)

 

季節は3月はじめの新宿の深夜、街には大きなぼたん雪が降りつづいているっている。人通りの絶えた歌舞伎町の風俗店通りに19世紀ペテルブルグからタイムスリップしてきた地下男が、黒犬に導かれてあらわれる。

 

地下男  ここが、その未来のセンナヤ広場か ?

黒犬   の、ようなところでっさ。

 

雪の中二人の酔っ払いが「雪の降る町」を歌いながら通りを歩いて行く。

 

ゆきのふる町は ゆきのふるまちは

思い出だけが通りすぎてゆく

 

地下男  思い出だけが通りすぎてゆく、か。チクショーなんて歌詞だ。思いだすぜ。あの頃を。いつの時代も変わらぬものが酔っ払いか。体を振って雪を払う。

ひどい雪だ、ロシアの雪の方がよほどましだ。

 

けばけばしいネオンのある風俗店の前にくると黒犬は、止まって地下男を振り返った。

 

黒犬  ここにしますぜ。どこの店も同じことだ。頼んますせ。センナヤ広場の穴倉酒屋の連中はみんなおまえさんに賭けている。おまえさんのクドキのテクニックを信じている。はたして20世紀の極東の海千山千のリーザに

「子供が自分の大好きな人に、物をねだるような目つき」

をさせることができるか。

「宝物のように、大事にしまっていた」

恋人の手紙をとりに駆けださせることができるかどうか。

みんなできるって方に賭けているんだ。お前さんの勝ちに。

地下男  まかしときなって。未来だか、日本だか知らないが、女はみんな同じさ。口先三寸、見栄え三寸でイチコロさ。

黒犬   大きなこと、いいなさんな。二度目のときは大恥かいたじゃないか。

地下男  あー、あのとき・・・。あのときは住所を教えたのが失敗だった。今回は、二度とふたたび会うこともない。

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黒犬   なにか心細いな。おまえさんの負けに賭けなおそうか。

地下男  バカ云え!

黒犬   算段はあるんだろうね。

地下男  そんなものはない。最初のときと同じだ。

「それは愛情もなく無恥粗暴な態度で、本当の愛の栄冠となるべき行為から、いきなりことを始めるのだ」

     それで十分。

黒犬   便りにしてまっせ。じゃあ、このへんで、検討を祈る。

客引き  なんだ、この犬は、蹴っとばして追い払う。地下男に近寄ってきて。

これは、社長さん、保健所が怠慢でこまりますね。あんな野良犬、いまどき珍しいですよね。うちには、野良はいません、みんないいこです。

地下男  社長さん?! なんだ、オレは、地下室人だ。それに、いいこってなんだ ?

客引き  いやですよ、お客さん。カマトトぶって、素人さんですよ。

地下男  素人がいいこ ?

客引き  なんだっていいんです。社長さん濡れますから。腕をとってだ。

 

<彼女はわたしの視線を受けながら、名声を伏せようともしなければ、その限差しも変えもしなかった...>

-<お前の名はなんというんだい?>

-「まだ、決まってないのよ。何かないかしらいい名前。

最初が肝心でしょ。姓名判断でみてもらおうかしら。女

優の名前って難しいから」

じ、女優だって! 何なんだこの明るさは。

-<どこから来たの?>

-「原宿からってことにしとくわ。都会の娘に見えるでしょ。フフフ、遊びに釆たら誘われたの。やってみないかって。ちょうどヒマしてたから、面白そうだし。それで冷やかしにちょっと来たのよ」

-<えっ、それでいきなり撮ったのかい。>

-「そうよ。別に演技いらないっていうから」

地下人間、口をあんぐり。

-<前からここへ釆てるの?>

-「今日からよ。この世界、新しい娘の方がもてるんだつてね。やたら褒められちゃったわよ。わたしそんなに魅力あるかしらハハハ」

うっ、この明るさ、この陽気さは何なのだ...これでは<いっこうに無愛想な調子に、だんだんぶっきら棒になって>いかないではないか。

早くも地下人間に焦りの色があらわれた。

-<お父さんお母さんはいるかい?>

-「いるわよ、二人とも元気よ。どうして、そんなこと聞くの。わかった! わたしがAV嬢だから、ちゃんとした両親がいないと思ったのね」

 

-<どこにいるの?>

-「東京よ。田舎かも知れないけどフフフ、訛りがないのね、あたしの言葉」

-<いったいどういう人なんだい?>

-「ちゃんとした人よ。地位があって教養があって、教育者とか聖職者みたい」

そ、そんな家庭の娘さんがなぜなんだ?!

―<親の家に暮らしていたら、どんなにいいかもしれないじゃないか!>

-<なぜきみは親もとを離れたんだい?>

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-「一人で住みたかったからよ。干渉なんかされたくないわ。もう大学生でしょ。だから自由に生活したいのよ。自由に」

ム、ム、ム、ム...自由とAV出演とどんな関係があるんだ。それに<娘たちの中には、家で暮らすのが愉快でたまらないというのがいるよ!>という娘がいるのに。この娘は一体何者だ。地下人間、早くも形勢危うしである。こうなったら...そうだあの話をしてやれ、これなら少しはこたえるぞ。

-<きょうあるとこで棺を担ぎ出していたが、あやうく取り落とすところだったよ>

-「棺って、葬式の?!エーッ見たかったわ。どこで?そのとき死体転がり出たの? そんなのめったに見られないんじゃない」

めったに見られない、だって! どんな性格してるんだ!ここは堪えて

-<...いやな臭いがしてね。胸が悪くなるようだったよ>

-「あら、いやだ。腐ってたの」

-「そうさ、夜の商売で一人で暮らしていたからね。あの売春婦、もしかしたらエイズにかかっていたかも知れないな。頬が痩せこけていて顔じゅう班点だらけで、そりゃあひどいものだった」

-「ふうん、物好きね。そんなに詳しく見るなんて。悪趣味ね」

-<今日あたりの埋葬はいやだなあ!>

-「あら、どうして」

-「雪が降ってるだろ、こんな日に限って葬式が多いんだ。道路は渋滞するし火葬場は満杯だ。どうせ身元不明の遺体なんか一番最後に回されるから運搬していった市の職員たちなんか不満たらたらさ。そのうち遺体にだって当たりだすよ。帰りが遅くなるだの、パチンコする時間が減るとかいってね。それとも以前その女のビデオを見たことがあるとか、何とかいってみんなでげらげら笑っているかね」

-「フン、死んでしまえば他人が何いおうが勝手よ」

-<いったいきみはどうだってかまわないのかい。死ぬってことが?>

-「そうよ。だって、なんのためにわたしが死ぬのよ。そんなこと考えなきゃいけないのよ」

-<そりゃ、いつかは死ぬさ。ちょうどさっき話した死人のように、あれと同じ死に方をするのさ。あれもやはり...きみと同じような女だったんだ...>

-「ちょっと! 違うわよ。あなたの見たのは商売女でしょ。わたしは女優よ。まあ、アダルトだけど、そのうち将来はちゃんとした映画に出るわ」

-<現在、きみは若くて、奇麗でいきいきしているからうんと高く買ってもらえるけど、こんな生活をもう一年つづけていたら、きみもすっかり変わってしまって、しなびてくるに決まってる>

-「おあいにくさま、わたしだってこの仕事、長くやるつもりないわ」

-「そうかい<いずれにしても一年たったら、きみの相場は下がってくるよ>次々と新しい女の子たちが入ってくる。きみのビデオはあきられ、きみはもっとハードなものを要求されるようになる。そして、結局のところ別の仕事にくらがえしなくちゃあいけないんだ。テレビや映画に出れる娘なんて、殆どいやしないさ。たいてい風俗営業の方に流れていくんだ。月百万、二百万とっていた娘が、元の十万、二十万の仕事なんかできっこないからね。スト

リッパーになるかソープランドかSMクラブ。そんなような職場で働くしかなくなるね。 そうやって<だんだんと低みに落ちてゆく。七年ばかり経ったら、いよいよセンナヤ広場の穴蔵まで行きついてしまうわけさ。それだけならまだしもだけれど、そのほかに何か悪い病気でも背負いこむとか...こんな生活をしていると、病気はなかなか早く癒らないから、とっついたら最後、もう離れないかもしれないぜ。 こうして、とどのつまりは死んでしまうのだ>きみは一年間に身元不明死体が何体でると思う。二万以上さ。そのうちの半分が女性だ。誰も知らず引き取り手もなく死体置き場のプールの中にぷかぷか浮かんでいるのだ」

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-「あ、そう。そうなったら、そうなったよ。心配なんかしてないわ。平気よ」

まったくどんな神経をしてるんだ。あの女の場合、リーザのときなんかもっと深刻だった。沈黙、深い沈黙があったし。<彼女はもうすっかり毒々しい調子で>答えていた。

-<だってかわいそうじゃないか>

-「だれが?」

-<命がかわいそうなのさ>

-「命? なによ、それ?」

-<魂さきみの。体とは別なものだからね>

-「あ、そう。わたしそんなこと全然思わないわ」

なんということだ? 人がこんなに優しくしてやってるのに、この女は

-<いったいきみは、どんな気でいるんだね? まっとうな道を踏んでるとでも思っているのかい、え?>

-「どんな気って、関係ないでしょ。AVがなんで悪いのよ。じゃあ、ヌード写真集を出版したタレントはご立派というわけ。裸で勝負してるんじゃないの。おんなじよ。違うっていえる」

地下人間、たじたじとなって額の汗を拭う。どうも、まっとうな道の定義が変わってきているようだ。ご時世の違いかも...

-「しかし<きみはまだ若くて、器量もいいんだから、恋をすることもできようし、結婚することもできる。幸福な身の上にもなれるというものだ...>」

-「あきれた、まだそんなこといってるの。<お嫁にいったものが、みんな幸せだとも限らないわ> 第一わたし女優になる夢があるんですからね」

地下人間、思わずかっとなって怒鳴る。

-「きみは本気で思っるのかい。女優になれるって。それを目指すんなら道が違うんじゃないのかい。まずはじめは演劇の練習からだろ」

-「バカじゃない、知らないの、テレビに出ているたいていのタレントはいきなりスカウトされるのよ。それから女優になったり歌手になったりする勉強するんじゃない。あなた時

代遅れよ。頭が古いのよ」

-「時代遅れだって! いいかい人間の心は文明のように進歩しないんだ」

-「あっそう。もしかしてわたしのビデオファン。それでごちゃごちゃ説教たれるのね。そうでしょ<まるで本でも読んでいるような話し方をするんですもの>」

-<よしてくれ、本がどうのこうのと、いってる場合じやないよ。いったい、いったい、きみ自身こんな所にいるのが、いまわしくはないかい?>

-「男なんかみんな同じね。<なんでもわかる一段えらい人間だと思>われたくて偉そうなことを言うだけよ。ほんとは寝たいと思ってるだけでしょ。頭の中はそれで一杯なだけよ。図星でしょフフフ」

-「きみ、そ、そんな...」

地下人間、顔を真っ赤にして俯いた。

-「いいわよ。あなたにその気があれば、付き合ってあげてもいいわよ。たっぷりサービスするわ」

AV嬢は勝ち誇ったように席を立って妖しく歩み寄る。

「や、やめてくれ」地下男、たじたじして後ろに下がる。

AV嬢は、笑い声を残して去っていく。

がっくり肩を落とす地下人間。もはや現代において

<ダイヤモソドにも等しい処女の宝>である愛は道化に過ぎないのか。負けたのである。

 

 

 

 

 

 

 

夕日の謎を解くどころか彼女の魂にも近づくことができなかった。もはやなす術もなく佇む地下人間の脳裏にふと夕日を眺めてわけもなく泣くAV嬢たちの姿が浮かんだ。するとそのとき不意にある光景が蘇った。

もうとっぷり日が暮れたネヴァ河の傍らで足を止めて、河の流れに沿いながら、冷たくどんより曇っている遠方に鈍い視線を投げているアルカージイの姿を。労役の合間、丸太の上に腰を下ろし、荒涼とした大河を隔て、遥か彼方に広がる草原を眺めるラスコーリニコフの姿を。その途端、彼はすべてがわかった。

そうだ!彼女に夕日を眺めさせていたのは、涙を流させていたのは。それはリーザの魂だったのだ。あくなき人間の欲望の下に埋もれてしまっていたリーザの魂。その魂が夕日の中の真理に呼びかけていた。身も心もビデオの中にさらけ出して生きる彼女たちの心理の奥に潜む魂。その魂を呼び覚すことができるのは、沈む太陽の

やけただれた鋭い閃光でしかなしえないのか。もはや地下人間など出る幕ではないのかも。所詮、人間の魂を癒せるのは自然のカだけかも。そう思うと地下人間は寂しい気がした。しかし、なぜか敗北感はなかった。彼は再びリーザの魂を知って満足だった。その存在に一種感動さえしていた。どんなに時が移ろうと、どんなに魂が堕落しようと人間は不変の真理を持っている。

彼は安堵の笑みを浮かべて夜の闇に消えていった。

<真理だ...おれはそれを見た...この日でちゃんと見た...真理の栄光を...> そんなつぶやきを残して...

 

 

 

 

16日(土)朝柔道強化練習

17日(日)朝柔道強化練習

18日(月)朝柔道強化練習

19日(火)朝柔道強化練習 猛暑 「黒板絵」編纂作業 西日本、北日本記録的大雨。

20日(水)夕柔道強化練習

21日(木)

22日(金)朝柔道強化練習

23日(土)

24日(日)朝柔道強化練習 谷津干潟マラソン

25日(月)

26日(火)

27日(水)夕方柔道強化練習

28日(木)

29日(金)柔道

30日(土)

31日(日)朝柔道

9月 1日(月)

2日(火)

3日(水)夜柔道強化練習

4日(木)

5日(金)夜柔道稽古

6日(土)

7日(日)朝柔道稽古

8日(月)

9日(火)

10日(水)

11日(木)民生委員・児童委員協議会。「振り込め詐欺」

12日(金)

13日(土)

14日(日)千葉県少年柔道大会 千葉市天台武道館 4、5、6年1回戦敗退。

 

9月15日(月)

16日(火)

17日(水)

18日(木)「読書会通信146」入稿、125部(20頁)、24日上がり、中央図書館

19日(金)「むつあい通信」作成、60通発送、

20日(土)

21日(日)千葉県柔道道場柔道大会

 

レンタルビデオ店に行くと必ずといってよいほど奥まった場所にアダルトコーナーという一角がある。世の男性諸氏なら一度は覗いてみたい場所である。だが、入るとなると誰もが逡巡するらしい。昼間はほとんどといってよいほどそのコーナーには人影がない。では夜はというと、やはりまばらにしか入っていない。いつの時間帯も混雑している一般コーナーに比べ常に閑古鳥が鳴いているのだ。そうでなくとも狭いスペースの店内、全く無駄な空間のように思えるが、実際は店の経営にとってなくてはならないコーナーらしい。業界ではこの産業、あっと言う間に急成長を遂げ年間何億もの売上があるそうだ。伸び過ぎて近ごろ過当競走に入ったとはいえ、やはり大手なのである。ビデオを年間一千本以上制作し、出演す

るAV嬢も年(月)間、五百人は下らないという。そうして、今現在も予備軍の若い女性が後を断たないということだ。実に不思議な商売である。そこが風俗産業の所以であろうか。

ところで何故にこんな話をはじめたかというとこのビデオに出演するAV嬢について一つ、気になっていることがあるからだ。それは彼女たちの日常生活の中のある不可解な表現についてである。それは意味のないつまらない、なんでもないことかも知れないが、その表現は、なぜか解けぬ謎としてある。

ドストエフスキーは作品に登場する多くの女性、ソーニャやナスターシャ、ワルワーラたち、それに『作家の日記』で扱った<単純な、しかし厄介な事件>のコロニーロヴァや<私人からの手紙>のカイーロヴァ女史たちの深層心理を地下男的手法で掘り起こし、探り当て、ときには事件の究明にも役立ててきた。

彼の手法を借りれれば現代風俗嬢嬢にみた謎を明らかにすることができるだろうか。ここは是非、ペテルブルクの地下男に登場を願って解明を試みてみたい。

さて、その謎とは・・・ いつだったか病院の待合い室で退屈しのぎにスポーツ新聞を見ていたら芸能紙面の隅にAVに関する小さな見出しをみつけた。ある硬派の男優(寺田某という名前だ)がアダルトビデオの監督をはじめたという記事だった。その男優の役歴の印象から意外に思った。もっともそれで記事になったのだろうが。十数行の内容は、元々この手のビデオファンだったこと。見るのに飽き足らず自分でも撮ってみたくなったなどの動機の他、実際に製作に携わってみた感想がのべられていた。そのコメントが興味を引いた。彼の印象はAV嬢の方が映画やテレビにでる女優より光り輝いているという。素人にはわからないところだが、想像するに多分、彼女らが持ち得るすべての心理、野心とか欲望とかいつ

た煩悩を何のオブラートもなしに直接だしてしまうからでは-と解釈した。彼女らがAVに出演するきっかけを何かの雑誌で読んだことがある。それによるとAV嬢は街でキャッチされたり自分から飛び込んでくる娘が大半。理由はお金が欲しいから、退屈してたから、有名になりたいから、誰か芸能人と知り合いになれるかもしれないから。などとまちまちだ。つまるところ若い女性の持ち得る心理そのものがすべて有機体と化して集合したのがAV嬢たちなのである。少し話がそれるが、こうした風俗的なものに群がる女性の心理状況はいかなる体制下で生じるかというと、どうやら二通りあるようだ。政治が混乱した時期と経済が繁栄の極に達した時期がそうだろう。現在崩壊した旧ソ連邦のモスクワにおいて女学生に希望する職業をたずねたら驚くことに夜の商売と答えた女学生が多数いたという。もっとも彼女たちの目的はただ一つドルである。故にその心理は複雑ではない。ソーニャのように神に祈れば済むことだ。これがAV嬢となると事情が違ってくる。彼女らが出演して得る金は古典的のそれではない。金、名声、好寄心など彼女らの動機は様々で複雑だ。時間と規律の中で生活していた男優監督は現場において奔放な彼女らの掌握に頭を悩ましたそうだ。その苦労を後日テレビの深夜番組でも語っていた。「彼女たちはときどきふっといなくなるんですよ。どこに行ってきたのかと聞くと、夕日を眺めに行ってきたというんです。ぼんやり夕日を見ながらおいおい泣きじゃくってきたというんです。どうして泣きたくなるのか彼女たちもわからないらしいんです。ただ夕日を眺めていると無性に涙がでてくるというんです。

別に悲しいとか辛いとか後悔するといった感情とは一切無関係らしいですよ。これはいったい何なんでしょうかねえ」男優監督はそう言って首をひねった。その疑問は新聞で感じた疑問を改めて思い起こさせた。夕日をぼんやり眺めて、おいおい泣く。短絡的、楽天的、虚無的かつ衝動的にみえる彼女たちの心の底にあるものはいったい何であるのか。彼女たちの何が夕日を見に誘わせ意識のない感慨を引き起こさせるのか...果たして彼女たちの「深層心理以前にあるものは」 - この謎を解く手段としてまずは地下人間対AV嬢の問答を聞くことにしよう。その結果、

地下人間は彼女に<子供が自分の大好きな人に、物をねだるような目つき>をさせることができるだろうか。<宝物のように、大事にしまっていた>恋人の手紙をとりに駆けださせることができるだろうか。では、お願いするとしよう。

どのように切り出すか、<それは愛情もなく無恥粗暴な態度で、本当の愛の栄冠となるべき行為から、いきなりことを始めるのだ。>

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