文芸研究Ⅱ 下原ゼミ通信No.340
日本大学藝術学部文芸学科 2018年(平成30年)5月21日発行
文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.340
BUNGEIKENKYU Ⅱ SHIMOHARAZEMI TSUSHIN
編集発行人 下原敏彦
4/9 4/16 4/23 5/7 5/14 5/21 5/28 6/4 6/18 6/25 7/2 7/9 7/16
土壌館創作道場 2018年、読書と創作の旅
テキスト読み(志賀直哉作品・他) &熊谷元一研究(情報)
熊谷元一研究・写真展情報 テーマ:あそぶ 下左・20回大賞作品
右・熊谷元一作品
熊谷元一写真賞コンクールは、昨年2017年で20回を迎えました。この節目を記念して第1回から第20回までの上位入賞作品80点の展示を日本カメラ博物館(東京都千代田区一番町)隣りにある「JCIIクラブ25」で開催します。
観察・記録・継続。熊谷が追求した「グラフの社会性」。20年間の応募作品から厳選された80作品。熊谷のカメラ理念の浸透をご観賞ください。
□熊谷元一(1909-2010)大東亜省(撮影班)満州国満蒙開拓団撮影(空襲で焼失)、岩波写真文庫『一年生』『写しつづけて69年』『会地村』『日本の写真家17』など多数。
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熊谷元一研究・「JCIIクラブ25」案内図
月 日 2018年5月29日(火)~6月3日(日)
会 場 JCIIフォトサロンクラブ25(東京・半蔵門)
○下原が在館(10:00~18:00)している日時5/31、6/1
△午後 5/29
△5/29日(火) 13:00 ~ 18:00
5/30日(水) 10:00 ~ 18:00
○5/31日(木) 10:00 ~ 18:00
○6/ 1日(金) 10:00 ~ 18:00
6/ 2日(土) 10:00 ~ 18:00
6/ 3日(日) 10:00 ~ 15:00
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5・21ゼミ
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村瀬 琴さん 下原講師 西村美穂さん
5・14ゼミ 社会観察、世界名作紹介、テキスト読み
西村美穂さん 村瀬 琴さん
《社会観察》新聞記事考察 5月13日(土)朝日新聞
「政府は今国会でカジノ解禁につながる統合型リゾート(IR)実施法案の成立をめざしている。が、依存症への懸念は根強い。」
記事内容 「いまも依存症を克服できずにいるという大相撲元関脇の貴闘力さん(50)に聞いた」もの。(配布の新聞記事コピー参照)
見出しは、ギャンブル依存症 気づけば地獄 カジノの側だけもうかる
【ギャンブル依存症とは何か】(朝日5/13)推計70万人「疑い」
パチンコや競馬、宝くじなどの賭け事にのめり込み、家庭や仕事に問題が出ているのにやめられない状態。国際的な診断分類で「ギャンブル生涯」とも呼ばれる。患者の受け皿となる専門の医療機関が少ないという現状がある。
厚生労働省は昨年、過去1年間にギャンブル依存症に疑われる人は全国に約70万人、生涯で一度でも依存症になった疑いのある人は訳320万人との推計を発表した。
■ギャンブル依存症から抜け出すことはできるのか。テキスト依存観察の読み。
下原の「ドストエフスキーとギャンブル」(學灯社)を音読。
本論はドストエフスキーのギャンブル依存は、なぜ治ったかを推論。
《世界名作紹介》 「精読と多読」のススメ 米文学
ウィリアム・サローヤン『空中ぶらんこに乗った大胆な若者』1934年
原題 The Daring Young Man on the Flying Trapeze 古沢安二郎訳 早川書房
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5・14ゼミ この日のテキストは、志賀直哉がはじめて小説を書いた気がするといった作品『或る朝』の読みと感想。
《テキスト感想》 2018年5月14日提出
最後の涙は、自分が切なくなったのか
西村美穂
朝、少しでも長く寝ていたい時に、妙に変な小細工をしてでもお起こしに来てくれた人をやりすごしたいという気持ちは、人類共通のわがままなのだろうか。最初は眠さから抵抗していたのがいつしか意地っ張りになって。でも時折り聞こえる妹や弟の「年下」の存在に自己嫌悪がでてくる。それがわかっているからこそイライラしてしまって、ついには旅行にでも行ってもっと構ってほしいと思う。最後の涙は、ごめんと言いだせない自分のふがいなさか。許してくれた祖母に対して自分が切なくなったのか、いずれにせよ共感の嵐である文章だった。
■もっと寝かしておいてあげたいが、そうもいかない。祖母の気持ち。二人の心の葛藤を理解した感想。
時々甘えたくなる姿を描いた
村瀬 琴
何気ない日常にある幸せを感じさせる作品だと思った。時には、うっとおしいと感じるが、相手が居てこそのけんかや、やり取りな訳だから、家族が幸せや温かさを感じることが出来た。何度も起しに来る祖母に対して反抗しているような信太郎だが、それは祖母に心配をかけたい、気を引きたいという甘える心だろう。作中、何人か下の弟や妹が出てきて信太郎は長男らしいから、普段は甘えることが出来ないのだろうか。母親もおらず長男なら日常、年を張っていることが多いはずだから、そんな信太郎の「時々、甘えたくなり、またしばらくして”兄”に戻る姿」を描いたように思うった。
■簡潔に描かれた信太郎の気持ちと機微のずれの表現。よく観察できています。
《自分の一日》
私の変身術
村瀬 琴
今日は気持ちが落ち込み気味だったから、フリルが多い服を着た。好きな服を着ると、まるでよろいをまとったような気持ちが強くなったように感じる。
■女性にとっておしゃれは、重大なんですね。もっと簡潔なら、キャッチコピーになります。
シルバー世代のシルバーとは何か 編集室
シルバー世代といえばお年寄り世代だが、このシルバー、白髪からと思っていたが、そうではないらしい。先日NHKのテレビ番組で知った。なんでも国鉄時代(JRになってからもう半世紀近くなるが)、お年寄りへのサービスで優先席のシートの色探しで、一番余っていたのがシルバーだった。それで優先席の布をシルバーにした。それで、優先席に座る人、主にお年寄りのことをシルバー世代と呼ぶようになった。そんな話でした。
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社会観察 先週から今週にかけて、大きなニュースが二つあった。
一つは、残念だが母校日大のアメフト選手の愚行。プレー中の信じ難い暴行傷害事件である。もう一つは、憎んでも憎み切れない新潟で起きた学校帰りの女児誘拐殺害事件である。
【アメフト選手のラフプレー】
連日マスメディアで報じられる、日大アメフトの不祥事。後手後手の対応に日本大学の体質も問われている。いまやこの問題は、現役学生だけではなく全ての日大出身者の身にもふりかかっている。日大をまた、あの暗黒時代に戻してはいけない。地に落ちた日大を救う道は、ただ一つ。それは関係者全員の一新。その覚悟と潔さがなければ日大は再生できない。
大相撲では、新小結の遠藤は休場したが、先の全日本柔道では、原沢選手が優勝して雪辱を果たした。社会で活躍する多くのアスリートたちのためにも。全現役日大生のためにも、そして全国にいる日大OBのためにも、日大は、誠意をもって答えなければならない。
【今回の問題、解決はあるのか】
権力は必ず腐敗する。昨今のスポーツ界、政治の世界をみていると、この故事、ことわざの確かさ、予見性を信じたくなる。
人間は勝利を重ねると、次第に独裁者に変貌する。近頃の政界やスポーツ界、世界の情勢をみていると、そのように思えてならない。1975年に200万人近い自国民を殺したカンボジアのポル・ポトも、元は、穏やかな微笑みをたたえるやさしい小学校教師だった。
【女児誘拐殺害事件】
またしても起きた、女児誘拐殺害事件。犯人は前月、未成年者連れ回しで書類送検になっていたという。だとすれば、この悲劇、防げたかも…考えるのは空しいが。それにしても、いたいけな女児が犠牲になる事件が後を絶たない。なぜか。
幼女が犠牲になり近隣住人が逮捕された主な事件
読売新聞 2018年(平成30年5月15日火曜日)
■2008年9月千葉県東金市 保育園に通う女児(5歳)殺害、無職男 懲役15年
■2014年9月 神戸市長田区 小学1年女児(6歳)殺害、無職男、2審で無期懲役
■2015年2月 福岡県豊前市 小学5年女児(10歳)殺害 土建業 無期懲役確定
■2017年3月 千葉県我孫子市 小学3年女児(9歳)殺害 保護者会会長 6/4初公判
《テキスト読み》 志賀直哉『兒を盗む話』1914年(大正3年)『白樺』
1914年、今から104年も前だが、この時代にも幼女の誘拐事件はあったのか。多くの人たち、医療・犯罪関係者が専門家の立場で分析するが、なくならない。いつのときも犯人の内面奥にまで踏み込めていないのが実情。心の闇で終わっている。
小説の神様、志賀直哉は、この犯罪にも向き合った。そうして、容疑者の心の奥を想像して描いた。本日テキストとした『児を盗む話』は、そうした一冊。
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観察編・依存 創作 依存からの脱出の記録 前号の校正2回目
この記録は、「下原ゼミ通信」編集室に寄せられたノートに書かれていたものである。誤字
脱字の他、判読不明の文においては、編集室の想像と加筆で訂正、解読した。
ちなみに、推理・想像したところ、ノートの持ち主の家庭は、団地住まいで母親は、勤め
人、父親は、自営業(あるいは無職)のようだ。二つ年上の兄がいる。四人家族。
創作「透明な存在」との闘いの記録
―あるシンポジュウム会場に置き忘れていたノートに書かれていた記録―
編集・「ゼミ通信」編集室
娘が生まれたとき、野原を元気に飛び回る子に育つようにと、ノノと命名した。その名の通り、ノノは、元気に明るく育った。高校2年生までは、何の問題もない健康優良児そのものだった。ちなみに二つ年上の兄は、人の上に立てるようにと将太と名付けた。筆者
【前哨】1997年 忍びよる悪魔
1月27日(月)ノノ、剣道の寒稽古はじまる。ノノ参加。父とスーパーへ。
1月31日(金)ノノ寒稽古最終日。5時41分~14時まで
2月3日(月)ノノ、歯科と接骨医に出掛ける。
2月8日(土)ノノ、部活へ。骨が痛い。
2月11日(火)ノノとスーパー。家族4人でとんかつ定食。「和幸」
2月12日(水)ノノ、4時帰宅、体調悪いとすぐ寝る。
2月13日(木)ノノ、学校休む。昨日の4時から眠りつづける。剣道部顧問からの電話最近、元気がない。保健室の「先生が心配していて、ノノにも聞いた」かなり激やせしている。本人は元気という。
2月14日(金)ノノ、もう一日休む。4時、スーパーに買い物。
2月15日(土) ノノ、学校に行く。
2月16日(日) 母親、ノノにケーキづくりのことで、4時「とんでん」で食事
2月19日(水)10時20分、ノノ参加。天台でマラソン大会。8時ノノ帰宅すぐ寝る。
2月28日 ノノと駅迄散歩20分ダイエーでうどん食べる。
3月1日(土) ノノ、夕食作る。
3月20日(木)ノノ、肉まんつくる。
3月22日(土)ノノ、生理四カ月来ず、母親と仲村医院で診察。甲状腺が腫れている。もしかして拒食症かもの診断。それほど深刻にとらえず。注射をうってもらう。そのあとダイエーに食品の買い物。
3月24日(月)ノノ、学校~電話。合宿どうするか。木曜日に診てもらう
3月26日(水)ノノ、部活に行く。つかれたので審判をやった。
3月27日(木)剣道部、今日から合宿だが不参加にする。東邦大学佐倉病院へ。問診、血液、尿検査。甲状腺、バランス崩し。ノノ、「気力がでないから頑張ろうと思っていた」 米国でカルトの39人自殺。宇宙服姿で
ノノ、昨年の夏頃からケーキ食べず。夜7時から9時にかけてほとんど食べない。修学旅行以後、急激にヤセた。症状はこのようである。①時間が長く感じられる。②疲れる。③気力がない。しかし、睡眠はある。
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3月28日(金)1時、デニーズでノノ野菜スープ。ノノ、ダイエットの失敗と明かす。
3月29日(土)ノノ、朝のうち元気だが、そのうちうつ状態になる。食事メニューを眺めるだけになる。
3月30日(日)少年柔道大会。ノノ、バナナジュース。帰り路、デパート書店で偶然『思春期やせ症の世界』アーサー・H・クリスプ 高木隆郎、石坂好樹訳を見つける。症状がそっくりで驚く。
3月31日(月)ノノ、バナナジュース、剣道稽古は休む。
4月1日(火)ノノ、ひとりで東邦大佐倉病院へ診察に。
4月2日(水)鬼怒川温泉に家族旅行、ノノ、42・5㌔
4月4日(金) ノノと学校、CD「光の道」買う。作曲者佐藤一美氏にサインしてもらう。ノノ、作曲者に直接サインをもらったと喜ぶ。
4月7日(月)ノノ、3年A組26番。顧問に相談。
4月8日(火)ノノ、友達と映画。
4月23日(水)ノノ、4時半帰宅。かなり疲労の様子。買い物は行かないで眠る。甘いものに狂いは、いっさい口にせず。体重42・6㌔。食事観察
朝食 パン2切れ、イチゴジュース、紅茶 トマトにカッテチーズをのせたもの。昼は弁当、全部たべたといっているが?夕食 おかゆ、ゴマ豆腐、サトイモ
4月24日(木)ノノ、元気なし。保健室で相談。
4月27日(日)ノノ、母親と買い物。体重42・2㌔
4月28日(月)ノノの担当医体調不調で診察は6日に延期。
5月9日(金)ノノ、登校。
5月10日(土)ノノ、仲村医院、注射。
5月12日(月)ノノ。7時半登校、5時帰宅。
【不登校はじまる】その存在を見せはじめた悪魔
5月13日(火)7時半登校時間になってノノ体の不調を訴える。だるい、体が重い。はじめて学校を休みたいという。学校に電話、その旨を伝える。ノノ、そのまま眠る。1時に起こし昼を食べさす。そのあと何かしている。九州で地震。夕食は、家族四人で。ノノ体重42㌔。
5月14日(水)ノノ、学校へ行く支度をするが、出がけになって体がだるいとぐずる。泣き出す。そのまま寝かす。微熱あり。37度。2時に起こして昼食を食べさす。担任の岡田先生から電話。様子。夕食、ノノ食べず。この頃から食べ物のことを話すと拒絶反応をみせるようになる。
5月15日(木)ノノ食べられず。ジュースも残す。フラフラ状態で学校に行く。夜8時ノノ調子悪くペソ状態。夕食「食べたくない」の一点張り。ノノと母親3人で「デニーズ」に行く。ハンバーグ注文、食べると元気でる。
5月16日(金) 7時半、ノノ、なんとか登校。4時半帰宅。弁当、少し残す。
5月17日(土) 晴れ、蒸し暑い、夕方、烈しい雨、雹も。7時半ノノ登校、両親、保健室で保健の先生と話す。
5月18日(日)晴れ、蒸し暑い、柔道大会、夕方「デニーズ」でノノ、母親3人で夕食。
5月19日(月)雨、やや肌寒し、ノノ、体調悪いと訴える。体がだるいといいながら登校。4時雨のなか帰ってきて、すぐ寝る。
5月20日(火)くもりのち雨 ノノ体だるいと訴え、布団も引かず寝転んでそのまま眠る。母親、勤め先から電話。「摂食障害の会」の電話わかった。12時、ノノと駅前の「ジョナサン」へ。ノノの昼食、生ハム、生野菜、スープ、パン一つ、コーヒー。8時半から11時ノノ、母親と愚痴話。
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5月21日(水) くもり、ノノ中間テスト。やっとのことで登校。1時、駅から電話。定期券を買いたいがお金をもっていない。電車で駅に行く。お昼、ヨーカ堂の7階の大食堂に行くが、気に入らず、「デニーズ」に行く。ノノ、ステーキのみを注文するが、食べられず、豆腐サラダを食べる。愚痴話を始める。母親のため息についてはなしていたが途中から話をわかってくれないと泣き出す。4時店をでる。バス停で中学時代の男友達と会い、少し元気に。バスの中ぐったり。セレンジン2錠のんで眠る。
5月22日(木)晴れ、風、やや涼しい。ノノ、ぐったり状態で登校。12時、ノノ、帰宅せず。行動に椅子を運んでいたとのこと。疲れて、食べるのもうごくのもイヤと言った感じ。セレンジン1錠のんで眠る。3時バスで「ジョナサン」へ。ノノ、生肉野菜、アスパラ。ノノ愚痴る。死にたいともらす。中学時代の友人たちに助けてもらうよう話す。父、つかれからうたたね。
5月23日(金)くもり、肌寒い ノノ、少し元気になって学校へ。剣道部、卒業アルバムの写真撮影。ノノ、気が進まない様子。
あの元気で健康そのものだった娘ノノは、どこへいってしまったのか。なぜ食べることを嫌うのか。なぜひたすらヤセたいと願うのか。ノノの心を蝕んでいく悪魔の正体は何か。これまでは、まだ何かわけのわからない病気になってしまった。そのうちなおるだろう。それほど深刻ではなかった。筆者 次回に
応募要項 2018年 第21回熊谷元一写真賞コンクール
写真の好きな人、南信州の星降る村「阿智村」を撮りたい人は挑戦してみてください。
【第21回写真賞コンクールについて】
テーマ 「はたらく」第一回「働く」の初心に帰ってのお題です。
締切 2018年9月末日
最終審査 10月12日(金)
ドストエフスキー情報
ドストエーフスキイ全作品を読む読書会
6月9日(土)PM2:00~4:45
池袋・東京芸術劇場小会議室7
作品『未成年』 報告者:國枝幹生さん 司会進行 小山 創さん
懇親会PM5:00~ 「だんまや水産」
連絡090-2764-6052 下原