文芸研究Ⅱ 下原ゼミ通信 No.409

公開日: 

日本大学藝術学部文芸学科     2020年(令和2年)10月27日発行

文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.409

BUNGEIKENKYU Ⅱ SHIMOHARAZEMI TSUSHIN
                              編集発行人 下原敏彦
                              
9/29 10/6 10/13 10/20 10/27 11/10 11/17 11/24 12/1 12/8 12/15 1/12 1/19 1/26   
観察と創作

2020年読書と創作の旅

10・27下原ゼミ

10・20ゼミ報告  対面8名、zoom1名、9人参加

 10月20日(火)ゼミは、対面8人、ズーム1人でした。この日の配布資料は、以下のコピーでした。1.テキスト「にんじん」2.提出課題「4日間家族観察の感想」。
この日、対面とズーム参加者は以下9名の皆さんです。(順不同 敬称略)

鎌田泉  藤井智也  又野沙耶   野島至  小原遥夏

研菜々美 正村真一朗 大野璃子 zoom 参加は、長内優紀、  

ゼミ雑誌について

・編集委員、正村真一朗さん、小原遥夏さからの報告。

・原稿収集 → 順調 全員提出済み。コピー提出。

・制作予定 → 校正 11/3入稿  11/20確定 12/1納品

・印刷所決まる → エグズデザイン

ゼミ授業報告

□児童文学作品観察、高校入試国語問題実施。埼玉県立高校第二次試験
 
□『にんじん』家族観察2回目 
「失礼ながら」「尿瓶」「うさぎ」「鶴はし」

10月21日、直哉忌 10月21日は下原ゼミⅡでテキストにしている〈小説の神様〉志賀
直哉(1882-1971)の命日。
これまでとり上げた作品『菜の花と小娘』『児を盗む話』『剃刀』『范の犯罪』
※千葉県我孫子市に旧宅跡がある。感染小説『流行感冒』(1919)にコロナ時代を感じる。

テレビ特集観察 日本テレビ夕方の特集番組 「漂流する少女たち」

【居場所のない少女達。生きるのが難しい】学校にも、家にも居場所がなくなった少女達は何処へ行くのか。重い先の見えない特集だった。学校に居場所がないなら、休めばいい。行かないという選択肢がある。しかし、家の中で居場所がないとなると、悲惨だ。多くの少女達は、居場所のない原因は「親の虐待」にあるという。幸せな家族では、考えも想像もつかないが、父親、母親が、虐待する。暴力をふるう、暴言を浴びせる。兄弟姉妹と差別する。様々な虐待行為から、家をでて漂流する。

「にんじん」家族は、虐待家族だろうか。目下のところ暴力を受けているわけでも、暴言をあびせられているわけでもない。
「人間は、なぞです。その謎は解かねばならない」と宣言したのは、17歳のドストエフスキーです。「にんじん」家族に謎はあるのか。観察では、あるようだが、肉体的な虐待は、いまのところみられない。。
この文を書いている最中でも、つけっぱなしのテレビから赤ちゃんを川に投げ捨てた女性(35)のニュース。

にんじんに居場所はあるのか

ルピック家では、鼻つまみ者にされている、にんじん。この家に彼の居場所はあるのか。家族の行為は虐待にあたるのか。
もうすこし観察をつづけてみよう。

10・20ゼミⅡ授業報告 

ルピック家 →  郊外の一戸建て、畑もある 暮らしは中流上、5人家族。
ルピック氏 → お父さん セールスマン、亭主関白
ルピック夫人 → お母さん 口やかましい
フェリックス → お兄さん 中学3年生ぐらい 性格 長男の甚六 
エルネスチーヌ → お姉さん 中学2年生ぐらい 性格 調子いい
にんじん → 主人公、小学校4~5年 性格 わんぱく坊主
オノリーヌ → 家政婦(67)
ピムラ → 犬の名前
家畜 → ニワトリ、うさぎ

ルピック家第二回目家族観察報告

□長内優紀(zoom参加)

『失礼ながら』
こんなことをするなんて理解に苦しむ。慣れきってしまったにんじんの心境については想像できない。

『尿瓶』
夫人の行動が気色悪い。にんじんを虐めて、自分も被害者ぶって楽しんでいる?

『うさぎ』
前二つの話を読んだあとでは感覚がおかしくなってしまうが、自分の好き嫌いを押し付けるというのは酷いことだ。

『鶴嘴』
兄の自業自得でしかなく、にんじんの方が重傷であるのに、心配されるのは兄の方で咎められるのはにんじんという、この家族における普通の狂った構図。

□研 菜々美

『失礼ながら』
前回の話を読んだ上で読むと、この家族は本当にこういうことをやりかねないな、と思う。倫理的にどうかと思うし、これで笑える精神状態は異常といっていいだろう。にんじんも自らの意志では何も感じないように感情をコントロールしてあきらめているように見えた。

『尿瓶』
にんじんは自分なりに解決策を考えて実行しているのにそれを気付かないどころか水泡に帰すような行いをするのは、やはり残酷だと思う。

『うさぎ』
人間で自分の息子のはずのにんじんよりも家畜のうさぎのほうが尊重されている。

『鶴はし』
ケガをした、にんじんに一応の介抱はしてあったので安心した。死なれたら面倒とか体裁のためかもしれないが・・・・。

又野沙耶

『失礼ながら』
幼少期にこんなことをされたら、まちがいなくトラウマになると思う。読んでいるだけで不快感があった。

『尿瓶』
どんなに理不尽なことをされても必至で言い訳をする姿が痛ましい。何をしても親にねじ伏せられる未来しかない。

『うさぎ』
好き嫌いはそもそも他人に指定されるものではない。

『鶴はし』
痛みの感覚をコントロールできるようになりつつあるのが危険。

□大野璃子

『失礼ながら』
いじめられている。何故こんな扱いを受けているのか。しかもそれに気付いていながらも全て分かっていたような反応を見ると犯行する気力も失われてしまうほど長い間、酷い扱いを受けてきたのだろうか。

『尿瓶』
大人のくせに姑息である。どうしてそんなに彼が気にくわないのか。幼いながら必死に自衛するにんじんが不憫でしかたなく思う。

『うさぎ』
母に従わなければと健気に思う彼に切なくなった。それでも小さなことに楽しみを見つけるような努力をしなければならなくなるのが可哀そうだ。

『鶴はし』
怪我をしているのは自分なのに注意されるのが理不尽でしかたない。前の3つと合わせると本当に味方も救いもないなと思う。

□小原遥夏

『失礼ながら』
前回の話を読んでいるからか、私もなんだか、この話に慣れてしまった気がしている。ものごとは慣れてしまうと、ついには、もう滑稽なことでもなんでもなくなってしまう、とは本当なんだなあと思った。
※人間はどんなことにも慣れる(ドストエフスキー)

『尿瓶』
可哀そうだなという気は、もうあんまりしなくて、ただ1人の楽しみを味わう夜って私も好きだなと思った。

『うさぎ』
メロンを与えられないにんじんはうさぎ以下の存在なのだろうか、と思ったけど、こういう時間って幸せだったりするなあ、とも思った。

『鶴はし』
この家の人たちは悪い意味で冷静だな、と。私だったら人の血を見たら何も考えずに叫ぶと思う。

□鎌田 泉

『失礼ながら』
夢なのではないか?と話し合いにでたが現実だとしたら狂っている。ストレス発散がにんじんに八つ当たることになっている。この家族が可哀そうになってきた。

『尿瓶』
この家族において母親の存在がかなり影響していると思う。横暴で攻撃的。そうさせた母親の家族、夫も問題があるが、現代ではありえないことの連続だった。
※夫にも問題がある。観察眼、よいところに向きました。

『うさぎ』
にんじんにもメロンをあげて!!にんじん(自分の子ども)は支配してよいものではない!

『鶴はし』
現代とは違う家族の形を見させられた。長男がなにより大事な存在で他はそれほどでもないというのはやはりおかしい。人は平等であるべきだ。

〈まとめ〉虐待はしている!そして、子供が子供を育てているかのように思った。親が親としての自覚をもっていない。子を産めば親、それは、ちがうと思う。

□野島 至   

『失礼ながら』
虐待、一択なのでは?自分がやられたら、ぶち切れる。

『尿瓶』
部屋に閉じ込められて、トイレもろくに行けない。何をどう見ても虐待。

『うさぎ』
前二作品に比べればマシだが、これも虐待なのでは?

『鶴はし』
夫人の評価ただ下がり。

□正村真一朗 何か変だ。

『失礼ながら』
先週に読んだ続きとしての話を読むと明らかに虐待が手をかえ品をかえ行われている、という以外に受け取れない。母親によって繰り返される虐待に家の者たちは止めはしない。むしろ面白がって加担しているのみである。にんじんは、昨夜のやつを食べざるを得ない。

『尿瓶』
貧乏をすると心まで貧しくなるというが、こうして虐げられつづけると、にんじんもずる賢くなってくる。そうならざるを得ないのかもしれない。しかし、ルピック夫人のやることは度を越している。

『うさぎ』
あまり否定され続けると、そう否定された認識でしか自己をみられなくなってくる。

『鶴はし』
鶴はしが鋭利で、かつ重く危険なものであるのは誰しもが知っているが、幸か不幸か木製の粗末なものであったからにんじんは命拾いした。これは、にんじんの過失かもしれないけれど、不憫である。周囲の人間は皆、にんじんを虐めて面白がることしかしないし、にんじんもまた、それにより貧乏根性を持たせている。

□藤井智也  

『失礼ながら』
本当の話であり、決して夢ではないと思う。あれは尿のことだと後で分かり、仮にもらしたとしても、親が子供に食べさせるのは、異様だと思われる。そして、にんじんは、それと分かったうえで、母に恥をかけさせないために食べる、ということもすごい。私は、現代に生きているからこそ、こういったものに理解を示すことはできない。

『尿瓶』
仮にしつけだとして、昔特有のものだったということを考慮しても、これは母親の私的な感情が入っているのではないかと思った。学生時代によくある陰湿ないじめと同等、いや、それ以上だ。

『うさぎ』
母の影響をうけているにんじんにしてみれば、母が全てで、この環境が罪である。『にんじん』なりに上手にいきているが、かわいそう。

『鶴はし』
フェリックスに向けた、あきれるという感情が初めて見えた瞬間だった。にんじんは強い、長男のフェリックスよりも。

『失礼ながら』の謎

『失礼ながら』この作品には、多くの謎がある。
まずはじめに、この話は真実か、それとも虚偽か、といった疑問である。
第一の謎として、そもそもおねしょをスプーンですくうことは可能か、という疑問がある。おねしょは、朝になって発覚するものだが、痕跡は布団に描かれた地図が動かぬ証拠となっている。すくえるほどの水たまりになっているおねしょは想像しにくい。自分の体験や人から聞いた話からも「スプーンですくえる」おねしょなどきいたことがない。漏らしたすぐということで納得する他ないが、それでもタイミングよくすくえるだろうか、疑問は残る。
つぎの疑問は母親の(尿をスプーンですくったとする)行為である。これまでの観察から、母親の性格と性質は、だいぶわかってきた。短気で清潔、「しゃこ」でみたように極端に汚れることをきらうところもある。そんな家庭内で完璧無比な生活をする彼女が、いくらにんじんを憎んでも家族が共有するスプーンで尿をすくうだろうか。兄や姉にしろ、気持ち悪いより先に衛生的に拒否する話だ。笑ってみている場合ではないだろう。ここまで考察すると「失礼ながら」は100%有り得ない話といえる。
とすると、にんじんは、なぜそんなウソを書いたのか。本当に自分の尿と信じていたのか。
 では母親、兄姉は、なぜ、そんな演技をしたのか。からかって面白がる、そんな悪趣味もあるが、にんじんのおねしょを治すためということもある。

『にんじん』を児童虐待の告発本と読むか、自分を愛してくれない母親との葛藤の本とよむか。
コロナ禍、虐待、4割増 (ネット朝日)

2020/03/12 — 昨年1年間に警察が摘発した児童虐待事件は1972件、被害にあった18歳未満の子どもは1991人で、ともに前年を約4割上回って過去最多だった。死者は54人、夜間などに警察が一時的に保護した子どもも過去最多。

3歳女児死亡母親起訴 朝日2020.10.24

東京地裁 保護責任者遺棄致死罪

【ネグレクト虐待死 増加】
育児放棄(ネグレクト)の被害は深刻だ。厚生労働省のまとめでは、2018年度に虐待死した子どもは73人(心中を含む)。このうちネグレクトは前年非比5人増の25人で、初めて身体的虐待(23人)を上回り、内容別で最多だった。
※18年度に全国の市区町村職員が対応した児童虐待の疑いがある事案は12万6246件で、5年前の約1・6倍。児相も15万9838件で約2倍だった。
10・27本日のゼミ

10月20日のゼミは、出版編集室にて、以下の要領で行います。

□ゼミ雑誌作品について、提出作品(校正前)

・長内優紀「雪に会う日」 
・宇佐見花那「逃避行」
・鎌田 泉「僕の秘密」
・小原遥夏「自由と共に息をして」
・又野沙耶「歌唄いは口を閉ざす」
・正村真一朗「しがないクリスマス」
・藤崎真桃「名前」
・研 菜々美「喉元過ぎれば」
・藤井智也「おとぎ話」
・野島 至「寒冬香」
・大野璃子「epilogue」

□児童文学観察 高校入試国語問題『コロスケのいた森』実施

子供時代の体験を書いた作品。高校入試の国語問題に採用。平成20年に埼玉県で。翌年の平成21年に大阪府立高校で出題。いずれも同じ作品から。前回につづいて入試問題実施で、大阪府立高校の児童文学作品問題を観察する。

□『にんじん』について にんじんの行動と家族の様子を観察する。

コロナ禍だろうか、今年は、児童書がよく読まれているという。家族との密着で虐待が増えているとの報道。『にんじん』を読むことによって、児童心理、家族問題をより深く理解できれば幸いです。

本日の観察は、以下の四場面です。輪読で

「もぐら」「湯のみ」「パンきれ」「ラッパ」

□課題 観察感想&児童相談所に提出する観察報告を書く
    これまでの観察、具体的な事例、重症度

書くことのススメ 書くことを習慣に

エッセイ道場「なんでもない一日」「子ども時代の思い出」

【10月の読書のススメ】

北條民雄『いのちの初夜』

toshihiko@shimohara.net 「下原ゼミ通信」編集室
ドストエフスキーのススメ2021年は生誕200周年

☆1821年10月30日にモスクワで生まれる。
 
マリンスキイ貧民病院付属ペトロパウロ教会戸籍簿

1821年10月30日。貧民病院の住宅内に幼児誕生、一等軍医ミハイル・アンドレエヴィチ・ドストエーフスキイの男子フョードルなり。司祭祈祷を捧げ、番僧これに随う。11月4日洗礼。名付け親は母マリヤの従妹の夫、母の父親、母の姉、侯爵夫人、これなり。
河出出版D全集別巻

※同じ年の5月5日、はるか西の孤島セント・ヘレナで、世界史に名を残す英雄ナポレオンが52歳の生涯を終えた。

『貧しき人々』『死の家の記録』『地下生活者の手記』『罪と罰』『白痴』『悪霊』『未成年』
『カラマーゾフの兄弟』

★1881年1月28日 ペテルブルグで 死去 59歳

ドストエフスキー作品の「読書会」紹介

2021年は、ドストエフスキー生誕200周年です、記念すべき節目の機会に読んでみませんか。「ドストエーフスキイ全作品を読む会」では、以下の活動をしています。

HP「ドストエーフスキイ全作品を読む会」で検索 興味ある人はのぞいてください。

読書会は、以下の要領でおこなっています。

読書会開催 偶数月の土曜日 午後2時 ~ 5時 

会場:東京芸術劇場小会議室 池袋西口 徒歩3分

次回は、10月31日(土)小会議室7

8月読書会で5サイクル終了、処女作『貧しき人々』に入る前に「私とドストエフスキー」の報告です。報告希望者は、お申し出ください。

投稿のドストエフスキー関係は「読書会通信」に掲載します。

toshihiko@shimohara.net 携帯090-2764-6052 下原

 2020年10月27日 下原ゼミ  エッセイ道場 提出課題   名前

【家族観察】前回のつづき

「もぐら」

「湯のみ」にんじんの意地

「パンきれ」ルピック夫人とルピック氏 夫婦の関係
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

「ラッパ」にんじんと父親 

これまでの観察結果【児童相談所に中間報告】 具体的に 項目で

1.

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3.

4

5.

6.

7.

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