ドストエーフスキイ全作品読む会
ドストエフスキー作品メモ



荒野の誘惑 


(マタイ福音書 第4章1-11 塚本虎二 訳 1963)

間もなくイエスは悪魔の誘惑にあうため、御霊につれられて荒野に上られた。四十日四十夜断食をされると、ついに空腹を覚えられた。すると誘惑する者(悪魔)が進み寄って言った、「神の子なら、そんなひもじい思いをせずとも、そこらの石ころに、パンになれと命令したらどうです。」しかし答えられた、「 “パンがなくても人は生きられる。もしなければ、神はそのお口から出る言葉のひとつびとつでパンを造って、人を生かしてくださる” と聖書に書いてある。」そこで悪魔はイエスを聖なる都エルサレムに連れてゆき、宮の屋根に立たせて言った、「神の子なら、下に飛び降りたらどうです。“神は天使たちに命じて、手にてあなたを支えさせ、足を石に打ち当てないようにしてくださる。” と聖書に書いてあります。人々はそれを見て信じ、たちどころにあなたの国ができます。」イエスは言われた、「ところが、“あなたの神なる主を試みてはならない” とも書いてある。」悪魔はまたイエスを非常に高い山に連れてゆき、世界中の国々と、栄華を見せて言った。「あれを皆あげよう、もしひれ伏してわたしをおがむなら。」そこでイエスは言われる、「引っ込んでろ、悪魔!聖書に “あなたの神なる主をおがめ”、”主にのみ奉仕せよ” と書いてあるのだ。」そこで悪魔が離れると、たちまち天使たちが来てイエスに仕えた。