Medical Dostoevsky&My Dostoevsky


ドストエーフスキイ全作品を読む会 読書会通信 No.197 発行:2023.4.5


「わたしの世界」と「プロハルチン氏」



下原康子

孫の傍らで、ユーチューブから流れる児童合唱団の歌を、それとなく聞いていたときのことです。奇妙な歌詞が耳に飛び込んできました。画面に目をやるとパステルカラーのかわいい絵。青い空、緑の山脈、お花畑。その中で横並びになった8人の子どもたちが、小首をかしげながら歌っています。両手両足が隠れているので、つくしんぼが歌っているようです。

私の世界

世界じゅうの敵に降参さ
戦う意思はない
世界じゅうの人の幸せを 祈ります
世界の誰の邪魔もしません
静かにしてます
世界の中の小さな場所だけ あればいい
おかしいですか?
人はそれぞれ違うでしょ?
でしょ でしょ でしょ?
だからお願いかかわらないで
そっとしといてくださいな
だからお願いかかわらないで
私のことはほっといて

かわいい歌声と一瞬ぎょっとする歌詞のミスマッチに思わず釘付けになりました。なんという、子どもらしからぬ歌詞!ウクライナや難民の子どもたちが頭をよぎりました。

やがて、次の歌になりました。それが、わざとのように「世界に一つだけの花」。「ナンバーワンにならなくてもいい~ もともと特別なオンリーワン~」というスマップで大ヒットしたあの歌です。画面は、パステルカラーのお花畑、青い空、横並びの子どもたち。かわいい歌声も「私の世界」とおんなじです。違うのはこどもたちがつくしんぼではなくて、色とりどりの衣装を着たいろんな国の子どもたちであること。そしてみんな手をつないでいること。

「私の世界」は「世界に一つだけの花」のパロディーのようです。

私は、また、『貧しき人々』からはじまるドストエフスキーの初期作品の主人公たちを連想しました。ジェーヴシキン、ゴリャートキン、プロハルチン氏。「私の世界」は彼らの世界とそっくりではないでしょうか。とはいえ、彼らはやがて「地下室人の手記」や「罪と罰」の主人公へと変貌していくのです・・・