ドストエフスキー作品メモ
ドストエーフスキイ全作品を読む会 読書会通信 No.172 2019 


カラマーゾフの兄弟 学習ガイド

(翻訳提供 下原康子)

典拠:
THE GLENCOE LITERATURE LIBRARY
Study Guide for The Brothers Karamazov (PDF)


第1-3編
カラマゾフの兄弟は、人間存在の3つの異なる側面を表しています。官能的・肉体的(ドミートリィ)、精神的・知的(イワン)、精神的・宗教的(アレクセイ)。第1-3編を読むときに、各兄弟が人間の性格のどのような側面をどのように表しているかを示す単語、フレーズ、または事件をメモしてください。

個人的感想
フョードル・カラマーゾフとその息子ドミートリィ、イワン、アレクセイに対してどのような印象を持ちますか?兄弟どうしの気質の中に似たものを感じますか?それはどこにですか?
作品分析
1.カラマーゾフ一家はなぜゾシマ長老のもとに集まったのですか。会合は成功でしたか、失敗でしたか?その理由は?
2.ゾシマ長老はアレクセイに彼の将来についてどのような忠告を与えましたか? アレクセイはその忠告にどのように反応しましたか?
3.ドミートリィがグルーシェンカを探して父の家に押し入ったとき何が起こりましたか?このときのまたその前後のイワンの言動からイワンについてわかったことがありますか?
4.この物語の語り手は誰ですか?語り手について推測できることはありますか?
5.第1編5章で、語り手は、「奇跡から信仰が生まれるのではなく、信仰から奇跡が生まれるのだ」と言います。これはどういう意味ですか?あなた自身の同意、不同意の理由を説明してください。

第4-6編
大審問官が独房のキリストを訪問する場面はこの小説の中核です。大審問官の主張は複雑ですが、この作品の理解にとって非常に重要です。大審問官の主張のポイントを彼の推論をたどって箇条書きにメモしてください。

個人的感想
アレクセイの編集によるゾシマ長老の生涯を読んでどのように感じましたか?
ゾシマの教えは今日の社会に関連があると思いますか?あるとしたらどこにですか?
作品分析
1. 第4編のタイトルは「Lacerations」です。これはどのような意味において適切なタイトルですか。
 注:日本語訳では次のように訳されています。破裂(米川,中山,池田訳)、病的な興奮(原訳)、激情の発作(北垣訳)、意地づく(江川訳)、錯乱(亀山訳)、「ナドルィフ」激情の奔出(芦川訳)(参考:芦川進一『カラマーゾフの兄弟論』W)
2.イワンにチェルマーシニャに行くように頼んだのは誰ですか?その理由は何ですか?
3.軍歴中のどのような出来事がゾシマの人生を変えましたか?彼の人生はどのように変化しましたか?
4.ドストエフスキーはゾシマ長老の伝記的資料(アレクセイ編)をイワンの叙事詩「大審問官」に対する答えの一部として書きました。これは効果的な反論になっていますか?説得力がありますか?それを裏付ける理由を挙げてあなたの見解を説明してください。
5.第6編2章(f)で、ゾシマ長老は、革命家たちがロシアで勝利した場合にもたらされるであろう社会について予測しています。 「彼らは公正な社会を目指しているが、キリストを否定すれば、結局は世界を血の海と化するだけである。彼らは地球を血であふれさせることで終わる」あなたはこのゾシマの予測は正しかったと思いますか?そう思うとしたら、理由を説明してください。

第7-9編
殺人が起こった夜のドミートリィの行動は小説のプロットにとって重要です。引き続いて発生したイベントをリストにしてください。

個人的見解
ドミートリィが父の家に行ったとき、彼を殺すつもりだったと思いますか?
あなたはドミートリィがフョードルを殺したと思いますか?
作品分析
1.ゾシマ長老の遺骸に何が起こりますか?このことが僧侶や信者に衝撃を与えたのはなぜですか?それはアレクセイにどのように影響しましたか?
2.ドミートリィはフョードルが殺された夜、父の家にどうやって入りましたか?この事件に対してグルーシェンカが何らかの責任があると思いますか?
3.ドミートリィはどこで逮捕されますか?彼は警察から逃れようとしていたと思いますか?
4.第9編8章でドミートリィが見た夢はどのような夢でしたか?この夢はイワンがアレクセイに語った子どもの苦しみとどのようにかかわりますか?
5. ドミートリィが到達する実現(realization)は、イワンが到達する実現とどう違うのですか?

第10、11編
殺人が行われた後、イワンはスメルジャコフと3回会って話をしました。これらの場面は、この小説の中で最も重要な箇所の1つです。人間の内面のリアリティーを描写するドストエフスキーの卓越した能力が示されています。二人の会話からフョードルが殺された夜に何が起こったのかが明らかにされます。これらの場面に関して以下の質問に答えてください。

質 問
1最初の面談でスメルジャコフを見たとたんに、イワンが思い出した言葉は何でしたか?
2.スメルジャコフがもっとも恐れていることは何ですか?
3.スメルジャコフはイワンの「おまえは、誰もがおまえと同じ臆病者だと思っていたのか?」という質問に対して何と答えましたか?
4.最初の面談の後のイワンの気持はどのようなものでしたか?
5.スメルジャコフはイワンに門のそばで話したことについては誰にもしゃべらないと約束していますか?
6.イワンがフョードルの殺害を望んでいた理由についてスメルジャコフはどのように説明していますか?
7.イワンがカテリーナからドミートリィが真の殺人者である証明として受け取ったものは何でしたか?
8.イワンが3回目の訪問に向かう途中で出くわした人物は誰ですか?
9. スメルジャコフは殺害を正当化するためにイワンの信念をどのように使用していますか?
10.スメルジャコフの発作は本物(real)ですか、それとも偽物( sham)ですか?
11. スメルジャコフはどこにお金を隠していましたか?
12.3回目の訪問の別れ際、スメルジャコフは最後に何と言いましたか?
13.スメルジャコフと別れた帰り道にイワンは何をしましたか?

個人的感想
本当の殺人者が誰であったかを知ったとき、あなたは驚きましたか?
作品分析
1.イワンがドミートリィについて企てている計画とは何ですか?その計画は夢から霊感を得たドミートリィの新しい信念に矛盾しませんか?
2.スメルジャコフは自分がフョードルを殺害したことをどのように証明しましたか?それを知った時のイワンの反応はどのようでしたか?
3.哲学者ハンナ・アーレントは、悪がいかに特徴のない日常的な外観を呈するかを説明するために、ナチスの戦争犯罪者アドルフ・アイヒマンに言及しました。イワンの悪魔はこの例にあてはまりますか?
4.ドミートリィはアレクセイに語ったように生まれ変わったのでしょうか?この変化についてどう思いますか?そこには心理学的な現実性がありますか?
5.11編第3章で、リーズがアレクセイに「悪を憎むなんて、みんな言っているけど、心の中では密かに悪を愛しているのよ」と言います。あなたは彼女に同意しますか?あなたの立場を裏付けるために、時事や他の情報源からの例を挙げてください。

第12編とエピローグ
ドミートリィの裁判で、彼の弁護士であるフェチュコヴィチは検事側の証言に反論しています。裁判の場面を読みながら彼の反論を追いかけてください。

個人的感想
あなたは、3人のカラマゾフの兄弟全員が、最終的には「全員が責任を負うこと」に同意するかもしれないと思いますか?
作品分析
1.裁判でアレクセイが明らかにした未知の情報とは何でしたか? その情報はドミートリィを助けることができましたか?
2.裁判でのイワンの言動は証人としての彼の信頼性にどのように影響しましたか?彼の健康に関して何かわかりましたか?
3.小説の終わりにイワンはどうなりますか?人間の理性の力と有用性についてのドストエフスキの考え方についてあなたはどう思いますか?
4.一部の批評家は、「原因と結果」についてではなく、むしろ「結果と原因」についての小説として、「カラマーゾフの兄弟」を説明しています。第12編とエピローグから、この解釈を支持する要素を見つけてください。
5.ドミートリィの裁判で正義が行われたと思いますか?