熊谷元一研究
毎日小学校新聞 2014年(平成26年)4月10日


教師で写真家・熊谷元一さん 教室の一年生を撮影
撮影当時の一年生が60年前の「自分」見つけた!
 

   
「5本と3本はいくら」ときくと全部の子どもがわかるが、
「5+3=?」となると中々のみこめない。
そこで「5を頭へ入れて」と頭を左手でたたかせ、
右手の指で6,7,8とやらせる。
写真集「一年生 ある小学校教師の記録」(岩波写真文庫)より
60年前の「自分」に出会い同じポーズをする下原敏彦さん


数をかぞえる 5を頭にいれて6,7と・・・・・」。こう説明が書かれている白黒写真の男の子は小学1年生です。「5たす3?」どうやら足し算をしているようで、左手の5本指を頭に乗せ、右手で指を折って「いくつかな?」と考えているようにみえますね。

今から60年前の1954(昭和28)年、長野県の山あいにある会地(かいち)村(現在の阿智村)の存立会地小学校の教室で担任の先生が撮った写真です。この先生は小学校の教員をしながら写真家として活躍しyた熊谷元一さんという人で、教室の1年生を愛情をこめて撮影した写真集「一年生 ある小学校教師の記録」(岩波写真文庫)は1955年の第1回毎日写真賞を受賞しました。

熊谷さんは昭和初期から童画家としても知られ、学校で絵画指導にも力を入れました。20101(平成22)年に101歳で亡くなりましたが、当時の教え子たちは今でも仲良しで、カラー写真で男の子のまねをしているおじさんは下原敏彦さん(67)という大学の先生で、実は「男の子」本人なのです。今年開かれた写真展で60年前の「自分」を見つけ、記念に同じポーズで並んでみせました。

下原さんは大学生のころ、海外を見て歩くためのお金を稼ごうと、毎日新聞東京本社で新聞を発送するアルバイトを3年間体験したそうです。最近は懐かしいい小学校の出来事を題材に童話や小説も書いていて、「熊谷先生はいつも穏やかで、怒った顔をみたことがありません。いい天気のには『外へ行こう』と教室から僕たちを連れだしてくれました」と懐かしがります。

さて春になって、あなたの学校にも新一年生が入学したのではないでしょうか。柔道の道場で小学生を指導している下原さんは「今の子は塾や習い事で忙しくて大変そう。でも、昔も今も子どもは遊びが大好きで、じっとしていないし、元気でいることがなによりです」と話しています。(城島徹)