文学の中の医学 R


自閉という ぼくの世界 
なおき 作  れいこ 絵
エスコアール出版部 2004.9

『ぼくの世界』」を読んでくださったかたへ  

「ぼくの世界」はみんなの世界とどう違うのでしょう。たとえば同じ花を見て、赤だというのはわかります。でもその花がきれいなのか、そうでないのか、誰が決めるのでしょう。「ぼくの世界」はその花がきれいだと言われても、どんな花かもわからない、そういうぼくの気持ちを作文にしたものです。なおき
 
 この本に収められている詩を書いた東田直樹君は君津市に住む12才の少年です。5歳の時に「自閉症傾向児」と診断されました。頭に浮かんだ言葉が表現しようとする途端に消えてしまうので、音読はできてもコミュニケーションがとれないのです。これらの詩はアルファベットと数字の並んだ文字盤を指さしてから、原稿用紙に文字を書くという方法で、生まれました。直樹君は物語を書くのが大好きで、将来は作家になって「みんなに勇気を与えられるような作品が書きたい」という夢を持っています。


ぼくは 少しみんなとはちがいます。
そのことに さいしょに 気づいたのは
ぼくが 3才のころでした

ぼくは みんなが あたりまえにやっていることが 
どうして 自分に出来ないのか 
出来ない理由もわからず 先生からも みんなからも しかられ 
いみもなく 動きまわる日が つづきました

ぼくが やることは
人に話しかけることではなく
光や風と遊ぶことでした。
光は いつも ゆらゆらと
目のおくまで 入ってきて 
見ているものを へんかさせます。

今もぼくは 
いつも困っています。
けれどもそれは 自分を とじこめるものではなく 
いつの日か 
みんなの世界と ぼくの世界が 
ひとつになって 
ハーモニーをかなでるための 
れんしゅうだと 思っています

その後のなおきくん
東田直樹 オフィシャルブログ 自閉症の僕が跳びはねる理由