医療者の皆さんに読んでいただきたい本



岩田健太郎『悪魔の味方 米国医療の現場から』を読んで。
(克誠堂出版 2003)

下原康子

岩田健太郎さんの「悪魔の味方」を読み終えました。目からうろこがいっぱい落ちました。一方で弱い頭の許容量を越す混乱を来たしています。とはいっても、横書き(というだけで敬遠してました)にもかかわらず、無理することもなく、退屈することもなく、終始楽しくおもしろく読めました。

「人の命まで市場原理で左右されるような、そんな社会に身をおきたくない」以前からそう思っていましたが、この本を読んで益々その意を強くしました。国民皆保険は基本的人権だと思います。もっとも、自らの利益を守るために国民皆保険の危機を持ち出して医療改革になにかと反対するやり方はずるいと思いますが。

印象的な個所がいっぱいありましたが、その中でも本題に入る前に書かれた次の個所が心に残っています。
「医師という仕事は、社会科学と自然科学の融合をもっとも端的に経験できる仕事のひとつだと思います。数学・物理学に始まる自然科学の理解は医師として当然重要ですが、それが還元されるのは目の前の患者さんです。あらゆる職業が、あるいはあらゆる人生がある側面で自然科学的であり、別の側面で社会科学的であるのでしょうが、医師くらいこのダイナミズムを肌で味わえる職業はあんまりたくさんはないのではないしょうか。そういう意味で私は自分の仕事をとても楽しんでいるのです」

医師という仕事に敬意が払われ、うらやましくも感じられるのは、この理由以外にはないと思いました。