医療者の皆さんに読んでいただきたい本
佐倉図書室通信 No.131/ 2003.9

アメリカ臨床医物語:ジャングル病院での18年

中田力 紀伊国屋書店  2003

ここでいうジャングル病院とは僻地の病院ではない。アメリカの救急最前線および底辺の人々の診療を支える群病院(テレビドラマ「ER」の病院もそれ)のこと。あらゆる人種、あらゆる症例、あらゆる状況が押し寄せる現場は医学教育の実践訓練を行うには最適の場所である。ファンクショナルMRIの世界的権威として知られる著者であるが、教わる側と教える側の両方を経験したジャングル病院での無名の18年間を人生最良の日々と回想している。
印象的な美しい一節を引用する。若い記者に「医療とは?」と聞かれての答えである。
「むずかしいですね。強いていえばみんなのものでしょうか。ええ、医療とは長い人生の中でたまたま歩き続けることができなかった人が立ち寄って休む場所です。そしてすべての人はだれでもいつかは病気にかかる。だから、医療とは自分が元気なときは他人を助け、自分が病気のときは遠慮せずに世話になる、みんながいっしょにつくってみんながいっしょに守る、みんなの場所なのでしょう」