康子の小窓 ことばの花束


コロナ秀歌 
朝日歌壇」から転載  2020.4~6,10~2023.5

山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信」に連載収録の「黒木登志夫先生の解説(コロナウイルスarXiv)」の最後に掲載されているコロナ秀歌 (「朝日歌壇」より)から、転載させていただきました。





コロナ秀歌(四十八)2023年5月16日 (最終回)

コロナの短歌、俳句、川柳は激減し、23/2/26 から 5/13 までの 10 週間で、短歌 14 首、俳句 4 句、川柳 15 句であった。

卒業生の顔忘れまじ今日だけはマスク外させ最後の受授業 (西尾市) 丸山富久治

「戦争の終結はまだ」戦争をコロナのごとく識者が語る (観音寺市) 篠原俊則

「着用は任意」とあらば大方はマスクのままの卒業となる (相馬市) 根岸浩一

コロナ禍を共に過ごせし園児らがマスクを外し卒園したり (戸田市) 蜂巣厚子

ミモザ咲きマスクの下の君の顔みつめられずにまたクラス替え (厚木市) 杉山久美子


コロナ秀歌(四十六)2023年2月10日

ボケて名を思い出せないだけなのに旧友あわててマスクを下げる  (大阪市) 木村彰子

既読にはならぬ一首をまた送るエクモが繋ぐあなたのいのち  (東京都) 平原洋子

「意識あるうちに」と面会許可されて母よあなたを抱きしめにいく  (金沢市) 太田清美

三年ぶりの町内会の落ち葉掃きみんな待ってたこんな日常  (つくば市) 山瀬佳代子

産院の娘(こ)と孫に合えず左から五番目の灯(あかり)の影を眺め  (稲沢市) 山田真人

月一度画面にだけの妻の顔いつまでつづくZOOM面会  (吹田市) 船越一英



コロナ秀歌(四十五)2022年12月23日

美容院にてシャンプーをしたあとのマスクのひもの冷たさに冬 (奈良市) 山添聖子

画面からコロナ専門医消えロシア政治専門家出番に移る (船橋市) 佐々木美彌子

道野辺にパチンコ店の廃墟あり流刑地のごとコスモスの咲く (東京都) 嶋田恵一

サックリとサーモンフライの音がする黙食給食三年の秋 (知多市) 高田真希


コロナ秀歌(四十四)2022年11月12日

コロナ禍でお墓に現地集合しお参り終えてすぐに解散 (横浜市) 桜田幸子

新型のコロナウイルスの死者数にはあなたの「1」も含まれている (新潟市) 工藤紀子

個人店また減りまた減りまた減りて離れ小島のようなわが店 (さいたま市) 田中富子

ZOOMでは気づかなかった先生の研究室に並ぶサボテン (吹田市) 赤松みなみ

マスク外した君うっすらと髭のあり藤井君からさんになりたり (川崎市) 稲田テツ子

三年生最初で最後の文化祭映えスポットに自撮り待ちの列 (ふじみの市) 片野里名子

制服のふたりはやおら向い合いマスクのままキス 暮れゆく駅で (神戸市) 鈴木まや



コロナ秀歌(四十三)2022年9月29日

無機質に人数告げるコロナ死の中の一人は我の義兄なり (八王子市) 本田修文

接頭語のような感じもただ嬉し「三年ぶり」が付く夏祭り (盛岡市) 及川三治

コロナ禍に猛暑日つづく外出は今日も直行直帰なりけり (熊谷市) 内野修文

人間のせたらいいのかもしれないきけんゆうどく生物図かん (奈良市) 山添聡介

魚にもPCRの検査する福建省のゼロコロナ策 (中津市) 瀬口美子



コロナ秀歌(四十二)2022年8月26日

周庭らどんな暮らしをしているか二重マスクの香港の夏 (亀岡市) 俣野左内

レプリカの竪穴住居の入り口に消毒用のアルコールあり (松戸市) 遠山絢子

一人ずつアクリル板にしきられて日盛りざくざくかき氷食う (牧方市) 小島節子

時めぐり祇園は恋し辻々の路地の奥にもお囃子の音 (神奈川県) 吉岡美雪



コロナ秀歌(四十一)2022年7月14日

学年別二種目だけの運動会三十分見て親だけ帰る (北九州市) 福吉真知子

若者のごとく果敢に臆病にマスクを脱いで往く大通り (仙台市) 佐藤牧子

一斉にマスクを外し懸命に五十メートル走る一年生 (札幌市) 藤林正則

「大丈夫!」そう言われてもノーマスク怖れる気持ちはすぐには消えない (東京都) 薫々歩知

いつになる街行く人がマスクせず行き交う日々は もうすぐ夏至だ (春日部市) 横山辰生

授業中マスクはずさぬ子どもらに苦しくなって窓の外を見る (鈴鹿市) 樋口麻紀子



コロナ秀歌(四十)2022年6月16日

顔もなく名もなくきょうの数となるコロナ禍の死者ウクライナの死者 (所沢市) 風谷蛍

黙食は孤食でもある前を向き風の音聴く昼の教室 (西条市) 村上敏之

マスクずらし珈琲を一口飲むときに互いの顔をまじまじと見る (東京都) 鹿野文子

お互いの素顔を知らず三年目の初夏を迎えるラジオ体操 (三郷市) 木村義

千二百人の里で人並みにコロナにおびえウクライナ案ず (飯田市) 草田礼子



コロナ秀歌(三十九)2022年5月19日

朝⽇新聞のコロナを詠った短歌、俳句、川柳はどんどん減っている。この 3 週間で、短歌 3 ⾸、俳句ゼロ,川柳 6 句だけだった。コロナへの関⼼が急速にしぼんできたのではなかろ うか。(黒木)

春の雨あがって今朝は卒園式白いマスクの一人ひとりの (千葉市) 杢原美穂

もうマスク疲れたねって年配の教師が不意に言う始業式 (湖西市) 佐藤きみ子

戦争もコロナも地震もコメントするタレント族の不可思議テレビ (横浜市) 森秀人


コロナ秀歌(三十八)2022年4月30日

湯につかり食べて語ったひとときは5波と6波の奇跡の波間 (富山県) 若林千影

自主隔離個室に届く夕食の息子がかけてくれたふりかけ (岸和田市) 西村史

学童は在宅勤務の母のそば小さな机でオンライン授業 (千葉市) 持丸文子

若い子にナンパされたと笑う妻マスクが隠す五十八歳 (戸田市) 蜂巣幸彦

マスクのまま立ち話して卒業の子ら去りがたき春のゆふぐれ (仙台市) 沼沢修

ラーメン店「ラ」だけが残る看板をコロナの春の風が回すよ (三重県) 広瀬史子

コロナ秀歌(三十七)2022年4月1日

「吐く息が白いね」と言うこともなくマスクを着けし冬が過ぎゆく (京都市) 田中優輝

「今年こそ会おう」の文字がどうせ無理そういう顔で並ぶ年賀状 (東京都) 上田結香

最終章の新聞小説きりぬきて夫に届ける病院受付け (さいたま市) 田上洋子

手の甲のメモが消えないナースの娘多忙極める職を選びて (西海市) 前田一揆

褒めるのも叱るのもマスク越しこのまま卒業していくのか (藤枝市) 菊川香保里

初めて夫が短歌を詠んだワクチンの三回目副反応の夜 (奈良市) 山添聖子

片方のマスク外し茶を啜る藤井五段のニキビが覗く (壱岐市) 篠崎美代子


コロナ秀歌(三十六)2022年2月10日

傾いたタイタニックの甲板で10万円を子どもに配る (阪南市) 岡本文子

「めちゃ静か」に食べているらし給食は座禅の場での修行に通ず (尾道市) 森浩希

黒マスク地面に降りてしなやかな蝙蝠(コウモリ)のごと地上に臥しぬ (岐阜市) 後藤進

わが髪を切る妻の腕上がりたりはや二年過ぐ疫禍の日々は (仙台市) 沼沢修

会えぬまま逝きし人あり年明けて実感のなき一周忌来る (札幌市) 港詩織

基地からの感染拡大抗議すらできない国に我らは生きる (観音寺市) 篠原俊則


コロナ秀歌(三十五)2021年12月25日

参観は保護者ひとりと決められて運動会を覗く裏門 (横浜市) 田中廣義

コロナ禍の盛りに決めし閉院も落ち着きし今悔いる日もあり (仙台市) 堺武男

膝抱いて雨をみている会えぬまま母はお骨となりてしまえり (春日井市) 伊東紀美子

コロナ禍の終わる兆しにいちはやく明るき色のルージュを買いぬ (松戸市) 羽毛田さえ子


コロナ秀歌(三十四)2021年11月22日

泊まらずに日帰り三日の強行軍県内ぐるりの修学旅行 (酒田市)朝岡剛

速達で柩の母に手紙出すコロナで行けぬ思いをこめて (春日井市) 伊東紀美子

コロナ明けの図書館にはまだ席がなく書店並みなり立ち読みをする (岡山市) 梶谷基一

点下がり追試者多数の現実にリモート講義の限界を知る (尾道市) 森浩希

誰もいない金木犀の並木道マスク外して吸い込む自由 (奈良市) 山添聖

ラーメンもうどんもカレーも持ち帰り家で食べてたこの一年半 (滋賀県) 木村泰崇

マスクして第九を歌うテレビ観て歓喜するより悲愴を感ず (宮崎市) 太田博之

相集い歌うことなきこの一年生徒はいまだ校歌覚えず (佐賀県) 広沢益次郎

バイキンを見るような目でノーマスクつい見てしまう自分が怖い (東京都) 薫々歩知


コロナ秀歌(三十三)2021年10月18日

きっと伸び放題だろう妻の髪 面会禁止、カットかなはず (吹田市) 船越一英

付き添えぬ病室に行くエレベーター「じゃあ」と手を振る子を閉じ込める (湖西市) 工藤きみ子

コロナ禍のホバリングする毎日は愉快に生きる選手権なり (東京都) 夏目そよ

「逃げられる人はいいよ」と退陣のニュースに居酒屋店主はポツリ (観音寺市) 篠原俊則

誰でもいい殺したいという通り魔のきちん付けてる真白いマスク (つくば市) 橋本美和子

犬やねこ、ハムスターまで参加するオンライン授業5分休けい (奈良市) 山添葵

爺婆がさいころ振れば四歳が駒を進めるライン双六 (宇都宮市) 渡辺玲子

ハリウッド映画に多き三密のシーン煙草のシーン懐かし (東京都) 十亀弘史


コロナ秀歌(三十二)2021年9月13日

トーチキス走らぬ聖火ランナーの精一杯の笑顔かなしも  (高岡市) 池田典恵

江戸っ子は集団免疫できました緊急事態という言葉には  (三鷹市) 山縣駿介

従わぬ飲食店(みせ)とは取引するなとまで言う政権が作る分断  (京都市) 森谷弘志

ワクワクし穂高に登る夢をみるコロナ禍のなか今日もリハビリ  (ふじみ野市) 高橋正幸

隈(くま)さんの空席目立たぬ椅子の色皮肉にもコロナで役立てり  (船橋市) 佐々木美禰子

オリンピックは一切観ないと前見つめ医師は重たき声で言い切る  (柏市) 浅利早苗

選手らを全力応援するわれは今も開催に反対のわれ  (相模原市) 石井裕乃

二年(ふたとせ)で十四箱と三十枚買って捨てたる不織布マスク (ふじみ野市)片野里名子



コロナ秀歌(三十一)2021年8月26日

二十ものマスクが朝から草を刈る誰が誰だかわからぬままに (名古屋市) 堀江順宏

コロナ後も人と人との距離感はこのままでいい恋しいぐらいが (出雲市) 塩田直也

ガラス戸に「いらしゃいませ」の文字残り閉店ながき村の理髪屋 (広島県府中市) 内海恒子

宇宙服もどき防護者に面会する看護施設はもはや月面 (甲府市) 高瀬孝人



コロナ秀歌(二十九)2021年7月14日


面倒で老いボケの道突き進むワクチン予約パソコンもなし (山梨県) 石原学

世事に長(た)ける高齢者のみ生き残れと仄めかすようなワクチン接種 (横浜市)末光奈緒子

オンラインより自転車で支所へ行き列びし人のワクチン早し (福島市) 青木崇郎

電話でもネットでもとれぬワクチンの予約引き受ける岡田眼科は (横浜市) 松村千津子

入院ができない人をうっすらと見えなくしている「自宅療養」 (市川市) 中沢庄平

無為徒食役に立たない私ですワクチン接種ビリでいいです (沖縄県) 和田静子

触れ合いをしてはいけない祭典のオリンピックは何を目指すか (筑紫野市) 二宮正博

東京へ来ないでよりも東京に来ないでの方が少し険ある (大和郡山市) 四方護

「顔を見せろ」とうるさかった実家にも「帰ってくるな」と言わせるコロナ (東京都) 上田結香

何処にでもリーダーは居て偉そうにしゃべるリーダーの鼻出しマスク (近江八幡市) 寺下吉則

慣れすぎてもう戻れない気がしてるマスクをせずに授業すること (滋賀県) 木村泰崇

病む妻もわれも二度目の接種終え車椅子押し家路を辿る (舞鶴市) 吉富賢治


コロナ秀歌(二十八)2021年6月15日

コロナ下に無人無音の聖火ゆく何を知らしめ何を繋ぐや  (長野県) 千葉俊彦

芸人のノリに合わせるテレビにて器用な学者見るは痛まし  (岐阜市) 木野村暢彦

食べる間なかりきとまた弁当を持ち帰る子に在宅勤務遠し  (町田市) 村田知子

見に行くな見ても喋るな拍手せよ腫物のごと聖火来県  (大洲市) 村上明美

中止には勇気がいるが実施には蛮勇がいる東京五輪  (東京都) 北條忠政

図書館へ美術館への習慣が一年途絶え眼の衰えぬ  (岐阜市) 金子秀重

ワクチンの予約四日目昼ごろつながりて五月六月終了しました  (牧方市) 鍵山奈美江

閉店に勝手ながらと書く店主行間にあるそのやるせなさ  (東京都) 三神玲子


コロナ秀歌(二十七)2021年5月20日

三時からは静かにしててと釘を刺す半身スーツの息子は就活  (八千代市) 木場尚子

遠足もお泊り保育も無き子らが「楽しかった」と卒園したり  (戸田市) 蜂巣厚子

リモートの講義をぼやく十八歳噴火しそうなニキビがふたつ  (堺市) 平井明美

タンポポがこんなに明るく咲いている帰れぬ町も帰らぬ町も  (南相馬市) 佐藤隆貴

脈をとり眠れましたかと聞く人よあなたこそ全く寝てないのに  (出雲市) 塩田直也

聖火リレー「復活五輪」を掲げるも住民ゼロの被災地通らず  (大津市) 隈元直子

春うらら浮かれた色の頬紅をぬってマスクで半分隠す  (三条市) 高橋梨穂子



コロナ秀歌(二十六)2021年4月13日

キャンパスにまだ一回も行けぬまま後輩たちの入試始まる  (静岡県) 小島一惠

混んでたと愚痴る夫よ退屈で出かけたあなたも多数のひとり  (三鷹市) 大谷トミ子

高3をもう一度ちゃんとやりたいと色紙に残し卒業してゆく  (出雲市) 塩田直也

サクラサクも登校許可はまだ下りずこの句を詠んで早や一年  (横浜市) 大野麗

テレワーク不可の仕事が生活を支えると知るゴミ収集日  (千葉県)  田中文雄


コロナ秀歌(二十五)2021年3月12日

飲み食いと旅することが経済だとはじめて知ったこの一年で  (滋賀県) 木村泰崇 

ひとことも喋らず給食たべよるんよ仕方ないねと小2が言った (西宮市) 佐竹由利子

手不足の現場に看護学生を送る学徒動員の如く  (横浜市) 毛涯明子

厄除けの呪文のように唱えてるファイザーモデルナアストラゼネカ  (大阪市) 鹿戸仁美



コロナ秀歌(二十四)2021年2月18日

検温し手を消毒しマスク取りみんな黙してチキンをかじる  (諫早市) 麻生勝行

黒服に着替えて数珠の手を合わすLINEで参列母の葬式  (東広島市) 黒木和子

侮らず恐れず過ごす若き日の微生物学のノートを開き  (長野市) 原田浩生

元日の朝に保健所職員が感染経路追えぬを詫びる  (観音寺市) 篠原俊則

病院で優しさ全てを出し尽くし夫に厳しい美人看護師  (京都府)  片山正寛

「ステイホームはショートステイが長いだけ」特養の老婆のつぶやけり (長野県) 小川吾一 


コロナ秀歌(二十三)2021年1月20日


マスクなど誰もしていないコロナ禍の前の映像どこの惑星  (高岡市) 池田典恵

コロナ禍の視察の知事を玄関に並び待ちいる医師らの心  (観音寺市) 篠原俊則

疲れたる白鳥のごとコロナ禍の看護師たちが仮眠している  (豊岡市) 小松宏

エッセンシャルワーカーというしゃれた名で働くわれは下級国民  (大阪市) 足立和子


コロナ秀歌(二十一)2020年12月18日

鮮やかな花柄、白、黒 参観日マスクで覚える保護者の顔ぶれ  (奈良市) 山添聖子

戻りたいとみんなが願うコロナ前がよかったなんて本当ですか  (東京都) 福島隆史

毎日の消毒液の所為なのか指紋承認せぬスマホ  (吹田市) 小山安松


コロナ秀歌(二十)2020年12月6日

コロナ禍で解雇されればパソコンで職探しつつゲームをもする  (福岡市) 芝崎みちる

栗おこわ炊いたからきてとはまだ言えぬ新たな日常手さぐりの今  (東京都) 鹿野文子

オンライン聴講生となりし吾仲間はイタリア北京スイスから  (朝霞市) 青垣進


コロナ秀歌(十九)2020年11月7日

感染者なきふる里に駐車して視線感じる県外ナンバー  (仙台市) 沼沢修

テレワークできぬ子の職日に夜に病む人の辺に添いて働く  (前橋市) 萩原葉月


コロナ秀歌(十八)2020年10月3日

これもまたリモート会話かもしれぬ本を読むこととりわけ古典  (中津市) 瀬口美子

バスに並びバスを追い抜くウーバイーツコロナの今を生きねばならぬ  (東京都) 大野紀代

子は親を親は子を気遺ひて新幹線はがらがらとなる  (長崎市)下道信雄

胸像のマスクに裸婦の夏帽子どこの町にも世話好きはいる  (相馬市) 根岸浩一



コロナ秀歌(十)2020年6月30日

友達に鉛筆貸すなと指導する若き教師の胸中想う  (中津市) 瀬口美子

すずちゃんはき数で私はぐう数で分さん登校まだ会えません  (奈良市) 山添葵

絶対にマスクはしないトランプさん他のマスクはできない安倍さん  (防府市) 藤田淳子

ゴミ袋でわれの作りし防護服看護師は着て写真送り来  (東京都) 仲あやの


コロナ秀歌(九)2020年6月18日

「いってきます」いつもの通り居間を出し夫は七歩で<職場>に入る (横浜市) 大曾根藤子

コロナ禍を語るのだろう戦争を知らぬ私は戦争のように  (高松市) 一宮佳

口開けて薫風吸い込むこいのぼりわれ口閉じてマスクでおおう (飯田市) 草田礼子

マスクして原発逃げた九年前皐月の空に今またマスク  (いわき市) 馬目弘平

棒グラフ伸びて縮んでまた伸びて給食場に戻る日はいつ  (高松市) 塩田八寿子


コロナ秀歌(八)2020年6月11日

補聴器も眼鏡も怒る新参のマスクが耳に居すわらんむとす  (東京都) 北條忠政

何遍も同じビデオを見せられているかの如き総理の会見  (埼玉県) 島村久夫

ぼくはもう大人になっちゃうよ東京のパパはじしゅくで帰ってこない  (藤枝市) 石塚文人


コロナ秀歌(七)2020年6月2日

予定せしわががん手術延期され妻は無言で車椅子押す  (座間市) 遠藤寛

五時間目家庭科はうちの台所ママと作ったいちご大福  (奈良市) 山添葵

コロナ禍で乗客なくても走り出す新幹線の寂しげな貌  (石川県) 瀧上裕幸


コロナ秀歌(六)2020年5月27日

移るより移すことへの恐れから人は優しく人を遠ざけ  (岐阜県) 箕輪富美子

AIは囲碁も将棋も負かすのに新型コロナに打つ手明かさぬ  (香芝市) 中村敬三

面会は出来ぬコロナ禍病室の夫仰ぎ見る傘横向けて  (大阪市) 玉利淑栄


コロナ秀歌(五)2020年5月20日

新しい友との距離は2メートル入学式の静かに始まる  (奈良市) 山添葵

犬を抱きお茶飲む人のツイッターに35万の「いいね」つく国  (寝屋川市) 今西富幸

新コロナ感染者担当のミッションを「赤紙」と呼ぶ医療従事者  (志賀市) 木村泰崇

価値観を変えるウイルス林業が最も安全な職種となりぬ  (東京都) 豊万里


コロナ秀歌(四)2020年5月6日

ウイルスの形に似たるお日さまが予報にならび春はたけなわ  (越谷市) 畠山水月

外出を自粛せる夜夫は子を十年ぶりの将棋にさそふ  (町田市) 村田知子


コロナ秀歌(三)2020年5月2日

最後までコントか本当か分からない手品のように消えたおじさん  (大阪市) 澤田佳世子

自粛令余命宣告されしごと店主の呻く「もって半年」  (水戸市) 中原千絵子

昼日中一人球蹴る少年の背中に少し怒りがにじむ   (中津市) 瀬田美子


コロナ秀歌(二)2020年4月24日

バス停にコホンと咳の人一人列がわずかに左右にずれる  (春日部市) 九法活恵

なんとなく星の数ふえて見えるなりコロナ休校つづく街の夜  (ふじみ野市) 足立由子


コロナ秀歌(一)2020年4月21日

数年後「コロナ世代」と呼ばれるか休校の子ら元気に過ごせ  (東京都) 伊東澄子

テレワーク出来ない人が支えてる文明社会の根っこの部分  (諫早市) 藤山増昭

大和路の宮殿跡にかがまりて休校の子らたんぽぽを摘む  (奈良市) 宮田晶子