ある医学図書館員の軌跡
こぶし No.14 1998.10



ナースのお仕事



「ナ−スのお仕事」という現在放映中の人気テレビドラマ、ご存じですか。観月ありさ扮する「あさくら」という、顔とスタイルは抜群だけど失敗ばかりしている出来の悪いナースが、毎回騒動をひきおこし、まわりがまたそれを煽りたてるというドタバタ病院劇です。その中にとても印象的な場面があったので紹介してみます。

むやみにナースコールをするので、ナースやドクターの顰蹙をかっているおじいさんがいました。ところが、あさくらだけはいやな顔をもせず、すぐに飛んで行って優しく相手になり、こまごました世話をしていました。ところが次々ときりがないおじいさんの要求を見かねた若いドクター(あさくらのけんか相手かつ恋人という役どころ)が、とうとう「甘ったれた患者さんにつきあっていられるほど、ナースは暇じゃない」とかなんとか言って、そのおじいさんを怒鳴りつけてしまいます。

居合わせたナースや同室の患者の非難の視線がいっせいにおじいさんに向けられ、おじいさんはすっかりしょげ返ってしまいました。この時あさくらはどうしたでしょう? 彼女はいつもとは打って変わった落ち着いた態度で、おじいさんに優しくこう語りかけたのです。「いいんですよ、何でも言っていいんですよ。私、ちっともイヤじゃありません。だって、これが私の仕事なんですもの、ナースのお仕事なんですもの」

出来の悪いナースの代表選手みたいなあさくらが、この瞬間、すごいプロフェッショナルなナースに変貌していました。一方、口を半開きにして棒立ちになってあさくらを見つめている、ハンサムで有能でプライドが高い若いドクターはとても貧相に見えたのでした。