ある医学図書館員の軌跡
佐倉図書室通信 No.153(2005.7)


研修医の皆さまに図書室を有効に利用していただくために
附:セールスポイント、運営方針


「臨床研修指定病院施設基準」で定められている「臨床研修に必要な施設」の中に「インターネット環境が整備されていて、Medline等の文献データベース検索や教育用コンテンツの利用環境等が整備されていること」の文言があります。図書室の役割と考えられます。新制度になって佐倉病院のオリエンテーションの日程はそれまでの2日間から10日間に拡大され、図書室の持ち時間も15分から1時間に増えました。図書室の利用説明だけで終わっていたのが、文献検索実習の時間が取れるようになりました。とはいえ1時間の説明で「図書室の重要性」を認識してもらうことはとうてい不可能です。そこで以下のメニューをご用意しました。

1.24時間開館

24時間利用できる体制をとっています。資料の閲覧、複写、パソコンの利用ができます。パソコンの側には文献検索のための箇条書き「簡単検索手順」を常備しています。閲覧机には当日の新聞とキャンディーを。図書室独自のエアコンも設置してあります。また、奥の書架には、医学関連の一般書500冊とマンガ『ブラックジャック全24巻』と『ブラックジャックによろしく(継続中)』がならべてあります。

2.臨床研修医ライブラリの設置

当図書室の蔵書は約3000冊ですが、その中から臨床研修医・指導医に利用されそうな図書を一ヶ所に集めました。書架1連分です。医療倫理、医学教育、医学統計学、EBM、診療ガイドライン、外来診療、臨床研修マニュアルなどに関する本です。その下には、一般的に利用の多い『今日の治療指針』『今日の診断指針』『日本医薬品集』。医学辞書、語学辞書も近くに置きました。

3.基本図書と和雑誌特集

医学生のときからなじんでいる基本図書は人気があります。予算の許すかぎり最新版をそろえるようにしています。和雑誌特集も活用されやすい資料です。特集名から検索できるデータベースを提供していますが、直接書架に行って関連雑誌の背表紙から探し出す人が多いようです。

4.簡単マニュアルの作成

よく聞かれることがらや説明の必要なことがら、文献検索手順などはなるべく文書にまとめておくことにしました。夜間の利用にも対応できます。一枚物の説明書を作成し、複数コピーして常備しておくと同時にホームページにも掲載しています。以下、文書例。
・図書室を上手に利用するために
・文献検索簡単手順(PubMed、医中誌Web、Web of Science、JCR )
・EBM検索手順(PubMed、Cochrane Library))
・ 電子ジャーナルを簡単に見つける方法

5.EBM検索への導入

EBMを医療行為実践のための有効な「道具」にたとえるなら、この道具を医療者に使ってもらうようにPRすること、また、直接手渡すのが図書室の役割です。当然のことながら、EBMの実践は臨床研修の重点項目の一つで、そのためには文献検索技術の習得は必須です。習得のチャンスは「必要に迫られたとき」。その時試して成果が得られたらその快感はやみつきになること請け合いです。当図書室でEBM検索に役立つツールとして提供・紹介しているのは、Cochrane Library、PubMed(Clinical Queries)、医中誌Web、診療ガイドライン などです。

6.情報検索に関するご質問

口頭でもメールでもかまいません。お気軽にお寄せください。医学メディアセンターのスタッフの助けを借りながらできるかぎりお答えします。

7.文献複写申し込み受付

検索した文献の入手はおまかせください。1~5日でコピーを入手してお渡します。

8.図書室で医学新刊書販売

毎週木曜日の午後3〜5時の間、図書室で即席書店が開店します。たいへん好評ですでに10年間続いています。当日は普段より入館者が多く、研修医の皆さんも連れ立って来られます。図書室にとっても収書のための願ってもない機会です。居合わせた医師に中身を見てもらいその場で購入することもあります。普段は静かな図書室もこの時間だけはにぎやかなひと時となります。

9.ホームページの活用

以下のメニューがあります。
@佐倉図書室情報:利用案内、新着情報、図書室通信エッセイ、耳より情報、検索手順 他
Aおすすめリンク集 「医学文献サーチのために」「診療に役立てるために」
Cピックアプサイト 情報検索でよくつかうWebサイト表
D研修医の皆さんのための佐倉図書室活用ガイド

10.読書のすすめ

毎年、わずかな予算ながら医学関連の一般書を収集してきました。現在500冊(書架2連)あります。小説、詩、闘病記、体験記、医療問題関連書、などです。書評などを参考にしながら良書の収集に努めています。人間観察や人生経験の機会が得られる点において医師はめぐまれた職業です。どんな人でもいつかは必ず体験する老いや病や死について学ぶ学校に毎日通っているようなものです。それを意識するかしないかで、医師としての価値観や生き甲斐に大きな違いが出てくると思います。読書はそのような気持を自然に育ててくれる手近な方法の一つです。読書が好きになって欲しいと願ってホームページに以下のページを作成しています。

@新着書紹介:主に医学・医療関連の一般書を紹介しています。
@ぶんがくの中のいがく:医学・医療のテーマに繋がる文学的作品を紹介しています。 
A医療者の皆さまに読んでいただきたい本:当図書室の蔵書から選んだリストです。

11.『佐倉図書室通信』の発行

連載エッセイ「ターニングポイント」が好評の図書室広報紙(月刊)です。お知らせ、新着案内、和雑誌特集、耳より情報、ぶんがくの中のいがくなど。同時にホームページにも掲載しています。図書室前に余部を常備するようにしています。



佐倉病院図書室のセールスポイント

1.休日、祭日を含め、24時間利用できること

2.本館で導入している文献検索データベースや電子ジャーナルの提供がうけられること

3.相互利用を行うための図書館ネットワーク(東邦ネット、全国医学図書館など)と連携していること 

4.文献複写申込方法が簡便であること。入手が早いこと。処理件数:約4000件/年

5.広報に力を入れていること:図書室ホームページと「佐倉図書室通信」

6.簡易検索マニュアルを作成するなど、文献検索の普及に努めていること

7.東邦大学教職員の著作の収集に努め、ホームページで広報していること

8.優良医学専門書の収集とUpToDateに努め広報していること

9.医学関連優良一般書の収集に努め広報していること

10.地域開業医に向けて文献複写サービスを実施していること

11.毎週、図書室にて書店の医学書出張販売を実施し、個人注文の代行もおこなっていること

12.情報検索の質問に対し「ありません」「わかりません」「できません」を言わない努力をしていること




佐倉病院図書室運営指針(2003.7.18佐倉図書室運営委員会にて承認)

1.サービスの柱

@ 文献複写申込受付
A 文献調査・文献検索の支援
B 図書室資料のUpdate

2.収書方針

@ 院内教職員選定図書の購入
A 図書室選定医学専門図書の購入
B 辞書・参考図書・基本図書(テキスト)のUpdate
C 東邦教職員の著作の収集
D 医学関連の優良一般書の収集
E 診療ガイドライン、CDCガイドラインの収集

3.地域へのサービス

@ 地域開業医への文献複写サービス(2003年2月より開始)
A 患者、家族への医学情報提供 (現在はホームページにおいて)

4.広報活動(佐倉図書室通信・佐倉図書室ホームページ)

@ 新着図書、和雑誌特集記事など資料についてのお知らせ
A 医学メディアセンター(本館)で提供している文献情報サービスのお知らせと普及・データベースの使い方の紹介や簡易マニュアルの作成・公開。
B 日常診療や患者さんへの説明に役立つ健康と病気の情報・医療問題等HPの収集
C 地域開業医の図書室利用窓口の開設
D 院内コミュニケーションのための巻頭エッセイの掲載  
E 病院図書館員に役立つサイトの収集