ある医学図書館員の軌跡
東邦大学医学部ニュース 第101号(2005年10月1日)


佐倉病院図書室の今とこれから


医学部ニュース65号(1996年10月)に「孤独とパソコンとの戦い 佐倉病院図書室の5年間」という一文を書いたことがあります。「開院から半年くらいは、日に4〜5人の利用者しかないありさまで、忙しく活動している病院内にあって、唯一忘れられた場所、必要とされない存在のように感じた」とべそをかきながらも「規模や設備、蔵書数だけが図書室の評価ではない」と自らを励ましています。

それから9年、パソコンには未だ翻弄され続けていますが、孤独の方はすっかり解消しました。そもそも孤独な図書室では仕事にならないのです。文献を入手し申込者に手渡すまでにもさまざまなネットワークの助けを借りています。筆頭は学内ネットワーク(医学メディアセンター、習志野メディアセンター、看護学科図書館、佐倉看護学校図書館)です。佐倉図書室で入手する年間約4000件の文献複写のうち60%を学内でカバーしています。その他に全国の医学図書館、病院図書室のネットワーク等を利用しています。とはいえ、2005年の今日、究極のネットワーク<インターネット巨大図書館>という大波に病院図書室が呑み込まれそうになっているという現実から眼をそむけるわけにはいきません。
 
そこで一計を案じました。呑み込まれる前にこちらからインターネットに飛び込み、有効活用できる部分を取り込んでしまおうと考えたのです。この大胆な試みが「佐倉病院図書室ホームページ」です。図書室開設から14年間の中でもっともエッポクメーキングな出来事であったと考えています。

医療現場に近いこと、これが利用者サービスの上でも担当者の意識の上でも病院図書室の最大のメリットです。国民の最大関心事である医療の現場にいくらか距離を置きながら関わっている病院図書室の立場はとてもユニークです。いつのころからか、自分も医療スタッフの一人であると自然に思えるようになっていました。図書室の立場を活用することで医療に貢献できると確信しています。そうした気持ちが毎日の仕事の中にやりがいを見出すことにつながりました。米国立医学図書館長ドナルド・リンドバーグ氏は「医学図書館の将来・2015年における役割」という評論の中で「居心地のよい憩いの場所」と「医療の実践と連動したサービス」をその役割として上げています。佐倉病院図書室の今後に期待しながら、温かく見守って下さいますようお願いいたします。