患者図書室挑戦の記録
にとな文庫通信 No.16 (2011.10)


「検査略語表」と「にとな文庫」

野崎 幸男

私たち患者は貴重な時間と費用をかけて血液検査を受ける。しかし、結果は略語で表示されている。前立腺がんの私の場合、PSA(前立腺特異抗原)は知っていたが、他の項目が何を意味するのかさっぱりわからなかった。多忙な看護師さんにいちいち訊ねるのははばかられた。略語になっている英語用語の和訳がわかればいいのに、と思った。前立腺がん治療(IMRT)で入院中の私には時間に余裕があった。そこで、和訳の表を作成することを思いついた。私と同じ思いの患者さんに喜んでもらえたら、そのことがお世話になった医師や看護師さんへの恩返しにもなる。我ながらよいアイディアだと思った。平成19年6月初旬より略語表の作成を目指して患者図書室「にとな文庫」に通い始めた。

「にとな文庫」には患者・家族向けの病気や治療に関する本や情報が備えてある。私のアイディアについて司書の下原康子さんに相談したら、たいへん好意的でさっそく参考になる本や資料を揃えてくださった。聞けば、医学図書館の勤務経験が長いとのことだ。どおりで医学情報検索に詳しいと納得した。当初は英語用語とその和訳を一覧表にしたいと調べたが、一枚の表に収まらず、残念ながら和訳のみにした。和訳があれば詳細は後に調べることができると考えた。素案を書いては不明な部分を下原さんに調べてもらって、退院間際に完成。幡野先生のお墨付きもいただいた。さっそく「検査略語表」というタイトルがついて「にとな文庫」の配布資料に加わったが、現在に至るまでたいへん好評で何度もコピーして補充しているとのこと。このような形で千葉県がんセンターに恩返しができたのも下原さんのご協力のお陰と深く感謝している。

退院後3ヶ月毎の診察に行くたびに「にとな文庫」を訪ね下原さんと再会する。入院中に病室で握手していただいた竜前センター長にお会いすることもある。「好きなことをして明るくすごすのが一番のがん予防」など元気が出る処方箋をいただくのもうれしい。入院中も外来でも有効な時間を過すことができる「にとな文庫」は私にとってたいへん有難い場所である。

入院中のある日、「にとな文庫」の写真撮影をしている場に丁度居合わせたことがあった。 「千葉県がんセンター看護師募集のしおり」作成のためで、乞われて写真に入った。その後、出来上がったしおりを見せてもらったが、私の横顔がよく撮れていた。これが入院中唯一の写真なので、記念にいただき大事にしている。