患者図書室挑戦の記録


にとなメッセージノート A
 2008〜2010


私たち、地球の生物たるもの、あらゆるものとの共生が必要である。犬や猫、山や川、そして人間たちみな同じ生命で結ばれている。『大往生の条件』(色平哲郎)は、地域医療に命をかけ、人のもつべき命の意味を考えさせてくれました。人間だれしも死を恐れぬものはいません。しかし、死の意味を知ることによって、生かされている幸福に気づくのだと思います。この本を読んでがんの告知を冷静に受けとめることができました。がんに立ち向かう意志が生まれたような気がします。



患者さん対象の図書室があるのを新聞で知りました。私は現在72歳でこれまで3回入院しました。そのときは、自宅から本を持ち込んで退屈と心配を紛らわしました。つり好きの人や随筆を読む人は喜ばれるかと思い、寄贈させていただきます。ご判断は一任しますので、ご不要なら釣り好きの方にさしあげてください。



過日は患者図書室の働きについての参考資料をお送りいただき非常に参考になりました。カラマーゾフのエッセイは興味深く読みました。 (2008.1.22 日野原重明先生よりはがきにて)



初めて来ました。病院にはこれまで2回来ましたが、このような場所があることを知りませんでした。今日思い切ってのぞくと、「どうぞ、どうぞ」と気持ちのいい対応でした。運よくセンター長さんとお会いでき、短い時間でしたが、お話を聞けて感動でした。



昨年9月から通い始めて、ここは患者支援が整っているところだなあ、と思います。病気になると病気以外の心配事(経済的、精神的など)も増えます。そんなとき、相談に乗ってくれるシステムが整っているのは、本当に助かります。治療そのものに集中しやすくなります。集中できると自分のことを客観的に見やすくなるように思われます。そして、他の人も見え始め、みんなそれぞれ抱えた状況の中で生きているだなあ〜という思いが湧いてきました。そして自分に起こったことも「何も特別なことじゃないんだ」と思えたのは本当に良かったと思います。どの方にも本当に親切にしていただいたことに感謝しています。



当センターにお世話になって1ヶ月しか経っていないのに、ずっと前から通院しているような気になっております。たまたま、にとな文庫をのぞかせていただき、内容の充実にびっくり致しました。乳がんは長い治療になるとのことで、しっかり勉強してがんに負けない活力をつけるように、ただし頑張り過ぎず、自然体でいきたいと思いました。



入院中の前立腺がん患者です。2月に告知を受け、3月よりホルモン療法、10月より放射線治療を受けています。医学的知識皆無の中で医師からの説明は、半分くらいしか理解できないことがよくありました。このような中、にとな文庫の司書さんの力添えで、前立腺がんに関する多くの資料を読ませていただき、一応の知識を得ることができました。このことにより、安心して治療を受けております。これからも更なる最新知識の提供を期待しております。



昨日は検索資料のプリントアウト、FAXなどいろいろありがとうございました。入院中に調べていただけるのはとても助かります。早めに退院できそうで、お目にかかれず残念です。ありがとうございました。



当センターで手術し、外来通院させていただいています。にとな文庫があることを知り、毎回、病気に関する本など見たり、係りの方にお茶を入れていただいたり、と、とても安らぎます。他の病院にはない、とても素晴らしいことだと思っています。



私は乳がん患者です。4年前の夏、右乳房の全摘手術を受け、抗がん剤治療を行いました。術後からライフスタイルを全く崩すことなく日々を送っています。治療中もほとんど出歩いていたので、ご近所の人たちは初めのころは、私ががんであることを信じてくれなかった程です。治療が終わって5ヶ月目、一人でツァーにもぐりこみ中国の旅を楽しみました。異文化・異郷の地に身をおくことは私にとって最高の活力、生きている実感を体現できます。一人旅は人との出会いを楽しめます。大勢の旅もまたよし、山小屋、ユースホステルもオーケーです。夜は手仕事、頭髪のなくなった方のための帽子をやわらかなサマーヤーンで編んでいます。



がん患者となって2ヶ月が過ぎようとしている。これまでの私は自分自身を失いかけていた。「なぜがんになってしまったのだろう」という悔恨と「がんと闘わなければならない」という気負い、そして「どうして自分にはできないのだろう」という焦りからである。無理することなく、ありのままの自分でいくしかない、と気づかせてくれたのが、にとな文庫でした。がんについての知識を得ようと訪れたがん患者の私を待っていたのは、一個人として接してくださった司書さんでした。何気ない会話やBGMのフォークソング、そして絵本が忘れていたがんになる前の普通の生活を思い出させてくれました。退院してからの不安も和らぎました。



ここはどれをとっても大した本が並んでいてひとりひとりの「問いかけ」を待っている。余計なことは何も言わず、しっかり聞いてくれる人もいる。だから、問いかけて、聞いてもらって、私は自分で気づく、そうじゃないかな〜と。にとな文庫に通って私は思った。これが本当の病院だなあ。残念ながら今日私は退院だ。また来たい。



退院まじかになって本に関する話ができて幸せだった。もっといたいような気がする。病院にいてもっといたいというのは妙なものだが、癒されるし落ち着く。生命がもっとあれば万巻の書が読みたい。にとな文庫より借りて読んだ上坂冬子の本(『死ぬという大仕事』小学館 2009)。死の直前までがんと対峙し昨年死去。惜しい人を失った。自分の死を悟りもう生命がつきるとわかっていたのだろう、自宅を売り払った。次の日に買い手がついたという。上坂冬子は生涯独り身だったが、自分のことは自分で結末をつけた。死に親しんだ小生、自殺未遂を3回も繰り返したが、後年がんになり生命が惜しくなる。本を読む時間が欲しくなると生きたいとより思う。にとな文庫のご意見ノートでご主人をがんで亡くした奥さんの手記を読みドーっと涙が出てくる。歳をとると涙腺が緩んで悲しいと感じるとすぐに涙が反応する。一刻の時間、コーヒーがおいしかった。まさに読みたい本があり、そこに生きる時間があるのは幸せの極みといえるだろう、− やっぱりパソコンはダメだ −。まだセリーヌも読んでないし、プルーストも全巻読んでいない。日記を書き始めて55年、野上弥生子にはどうしても勝ちたい。日記が途切れた日は手術2回の6日間と自殺未遂後の3日間。至福のときをありがとう。




日々変化する病状に対して自分なりの勉強ができるのは豊富な蔵書があればこそです。にとな文庫にはスタッフも配置されていて正確かつ迅速な情報が入手できます。これによって勇気と安心が湧いてきて闘病の大きな助けとなっています。