患者図書室挑戦の記録



にとなメッセージノート B
 2011〜2014.3


2年前にここで前立腺がんの放射線治療を受けました。自分の病気がやれやれ一段落、小休止というときに父が同じ前立腺がんで、親子ともにお世話になることになりました。しかし、息子の私の方がこちらでの治療の先輩ですから、べつに不安はありませんでした。考えてみると、自分のがんは父親のがん治療のための予行演習のように思えてきます。困ったときにはこのセンターの患者支援のあらゆるシステムを活用すればいいんだ、という余裕を持った気持ちで父の治療に向かおう、という気持でいます。ここの患者サポートは進んでいると思います。安心してがん患者でいられます。あまりにも普通に存在していられることで勇気が湧きます。たとえ、将来、自分や父親のがんが、自分の期待を裏切るような結果になろうと普通の暮らしの中で生活していくことの大切さを実感しています。



昨日、手術を目前にして親友を誘って枝垂れ桜を見てきました。

久方の光あふれる春の日に
百花と共に我は散りたし

20分の外出許可を最大限に使い切り、枝垂れ桜はもちろんのこと、藪椿、野すみれ、菜の花の群生、と二人で春を満喫しました。私は手術の成功を確信しているし、彼女の気持のおだやかさを知っているので安心しています。二人でいろいろな話をしました。それぞれの幸福論も。深い話もしました・・・死についての話も。二人とも死に対する恐怖はないこと、どんなことがあっても希望はすてないことなど。私は今、にとな文庫に来ています。ここはなぜか私にとって安住(?)の場所で、ついつい足を運びたくなります。落ち着ける場所で、心を満たして帰宅することにしているのです。



過日、当センターで前立腺がんで入院、手術を受けた。入院中、紙ヒコーキ大会があるというので参加した。多くの医師、看護師などが見守る中で、患者たちは、3階、4階などから芝生に向け、翼に願いを書き込んだ紙ヒコーキを飛ばした。その中に私のヒコーキもあった。チーバ君やパンダのぬいぐるみなども登場しにぎやかだった。その後、ベッドの脇で、看護師さんから拍手とともに「いいところに入ったで賞」をいただいた。主治医にも賞状を見てくださった。私の愛機は、ふれあい広場の天井にみんなのヒコーキといっしょに飾られてあった。見舞いにきてくれた孫の「おじいちゃん、がんばってね」の一言におおいに勇気づけられた。



当センターは本日で2回目、MRIの検査です。悪いところは膵臓。こちらのセンターは私たちの心もしっかりささえて下さり、本当にありがたく存じます。去年の7月、親友をがんで亡くしおおきなショックを受けました。私は家族、友だちに支えられ幸せです。お医者様はじめ当センターの皆様は気持のよい方々で私の気持も明るくなります。



<はじめての手術をして> 6年生の少女
私は骨が溶けてしまうので入院しています。最初は骨折だったけれど、今はどこを骨折しているのかわからないほど溶けてしまいました。先生は手術をして「きん」を取り出そうと言い、手術をすることになりました。私は不安で泣いてしまったけど、先生たちが「だいじょうぶだよ!」と言ってくれて無事おわりました。改めて考えてると、手術は痛くありませんでした。これから手術を受けるとなると不安になりますが、病気をなおして退院するためにがんばってください。手術はお昼ねタイムと思ってみては?

病院の好きな場所ベスト3です。(自分の思う中で)

1位: 売店  お気に入りのりんご飴を売っているから。
2位: にとな文庫 いろいろな本が読めるし、係りの人とお話できて楽しいから。みんなも行ってみてね。
3位: ナースステーション 少しの困りごとでも解決してくれるから。ナースコールを押して何でも手伝ってもらおう。



前回退院後から6年経っての再発・手術で落ち込んでいましたが、このにとな文庫で温かく迎えられ、良い本を紹介していただきました。幸い結果もよく、今日退院します。これからは経過観察に来ながら、何より、日常生活を自分で注意していくことが再発を防ぐ道だと思います。私のお勧めの本 『笑いと治癒力』(ノーマン・カズンズ)「人は皆、自分の中にも医師を持っている」 病気は愉快な体験ではありませんでしたが、健康のありがたみ、周囲への感謝、限られた人生の時間を大切に喜びを持って生きようという決意をもたらしてくれました。スタッフのみなさま、本当にありがとうございました。



18才男子 滑膜肉腫 平成24年8月3日
7月26日に約9か月続いた抗がん剤治療が終わった。高校3年の秋で、受験が忙しい時に想像もしなかった病気になった。自分がなるまで言葉でしか知らなかった「がん」にもいろいろな種類があることを知った。それからは新聞でもテレビでもいろんなところでがんの話をしていることにも気づいた。受験に向けて頑張っていた中でがんになって頭が混乱した。悪い夢でも見ているのかと思った。筋肉に何の痛みも感じなかったし、学校だって休まず毎日ふつうに通っていた。野球だって夏までやっていた。それが急にこんなふうになるとは思ってもみなかった。どんなふうに治療するのかなど、わからないことだらけで最初は不安でいっぱいだったが、先生たち、看護師さんたちが不安をやわらげてくださった。また友だちや家族に支えてもらった。病院で仲良くなった子どもたちと楽しく入院生活が送れた。学校に行けなったのは残念だったけど、学校で学ぶ以上のことを学べたような気がする。治療は確かに辛かったし、ごはんだってまったく食べられない、口にしたくない日が続いた。眠りたくても薬を使ってしか眠れない日もあった。それでもがんを治したかったから、最後まで治療できたし、ここまで来れた。

今気になるとすれば生存率の話だ。インターネットで読んで、今でも意味がよくわからないけれど、特に気にはしていない。とりあえず、治療が終わってよかった。手術は怖かったけれど、手術室に入ったし、痛い麻酔を打つなど、初めてのことがいっぱいあったのでワクワクした。終わった後もいろいろたいへんだったけれど、損することばかりではなかったと思う。この一年が何年も過ぎたらだだの一年にしかならないのはとても悲しいことだから、「この経験を生かして」とはあまり言われたくない。好きでなったわけではないから。今ショックなのは筋肉をとってしまって今までどおりの運動ができなくなることだ。やろうとすると今までの力を出せないから恐怖をおぼえる。元気になれば他人から見てわかるわけではないから、納得いかないこともたくさんあると思う。若いから、先があるから大丈夫と言うけど、先が長いぶんそのハンデを背負って生きていく辛さもあると思う。今悩んでもしょうがないのは自分でもわかっているが、自分はそんなに頭がよくないので、そうは考えられない。その答えが出たらまたこのノートに書きにくればいいような気がする。何年たってもいいから診察の時に書きにくる。そのとき、このノートがあるかどうかわからないけど(笑)。文章書いたりするのは苦手だからまとまってないが、書いてみて本当に終わったことを実感できた。まだこの先も転移がないかとか調べなくていけないことがあるけれど、がんに立ち向かっていけたのは、先生や看護師さんたち、友だちや家族の優しさに支えられたからです。ありがとうございました。

19歳、大学生になって。平成25年4月2日
退院してから半年が過ぎ、手術からは1年以上が過ぎました。今までの闘病生活でもあの時のつらさは忘れることはできません。しかし、多くの経験をして、病気を乗り越えて、世界が広がりました。大学に通い、ボランティアなど社会活動にも積極的に参加したいと思いました。特別支援学校の免許をとることも決めました。自分の経験が少しでも活きる場所で仕事をしたいとい思います。今では野球もして、元気に活動できます。あの時に治療をがんばって乗り越えたからこそ、今の自分があると思います。闘うのは自分だから、自分の気持が大事であると思います。負けそうになったとき、支えてくれた人がいました。だから、あきらめずに最後まで闘うことができました。これからも大変なことが多くあると思いますが、同じように困難を乗り越えていきたいと思います。

追記(2017.1.3)
2017年新春。手記を書いた野球少年のお母さまから届いた年賀状には「息子は大学を卒業し、教職に受かりました、春から小学校の先生です」とありました。子どもたちに野球を指導する彼の姿が今から目に浮かぶようです。



<患者さんと看護実習生の往復書簡>

患者さんより

60歳を過ぎ、前立腺肥大が気になっていたことから、内科クリニックを受診した。エコーで肥大を確認、血液検査の結果、がんが疑われ、当センターを紹介された。生検の結果、がんが発見された。痛いわけでも、痒いわけでもないのにがんと言われ、信じられなかったが、親父が胃がんで旅立ったことが思い出され、早くなんとかしないと大変だと現実を受けとめ、手術を受ける決心をした。入院したら、看護師さんから「看護実習生が来ており、担当させてもらえないか」ともちかけられた。よくわからないが、将来の人材育成に協力するのもよいのではと思い引き受けることにした。もっとも、この歳になって女子大生と話ができるなんて、という下心もあったかな?対面してビックリ。思った以上にかわいい子で、「もう、最高」なんて思ったりして・・・まてまて、私はここに何をしにきたのだろうと反省。眠っている間に手術も無事終わり(先生方に感謝)術後の痛みも学生の笑顔で半減したようだ。数日後、歩けるようになって二人でにとな文庫をのぞいた。一緒にがんや退院後の排尿障害について調べたり、教えてもらったりという楽しい時間を過ごしているうちに退院の日が近づいた。がん宣告、手術など初めてのことで不安だらけ。その中に思わぬプレゼントをもらった気がして感謝しています。立派な看護師さんになってね、ありがとう!


看護実習生より

千葉県がんセンターに実習に行くことが決まった当初の印象は、がん=死という恐怖のイメージがあり、患者さんとどのように関わればいいのか、正直不安でした。しかし、実際にお会いしたとき、今までのがんのイメージは払拭されました。患者さんにとってがんは辛く衝撃的なことで、不安がいっぱいのはずなのに、私に明るく声をかけて下さいました。積極的に手術に立ち向かう姿、術後の痛みにこらえ治療に励む姿に「生きる」ことの力強さとすごさを感じ、私の方が励まされました。看護の勉強はたいへんですが、精一杯、勉強しようと決意を新たにしました。患者さんとにとな文庫に通う中で、看護以外でも人として大切なものを学ぶことができました。ありがとうございました。