LISN(りすん)No.130 2006年11月 
 


医学図書館員が選ぶ 患者・家族のための医学情報ウェブサイト

下原 康子



はじめに


 一般の人々が医学情報を得る場合、本やウェブサイトにしても「解説」記事が中心になります。それらの多くは研究者や専門家がその分野の研究論文(学術情報)をわかりやすく解説したものです。研究論文を「一次情報」、解説記事を「二次情報」と呼びます。
 医療者が診断や治療の根拠にするのは一次情報を核とする学術情報で、それらは主として医学専門雑誌に論文のかたちで掲載されます。また医学専門書としても出版されています。
 一般の人々は医学知識がないので専門書や論文を読んでもわからない、解説(二次情報)に頼るしかないと思いがちです。しかし、治療法や治療成績などの情報だけでなく、いい病院・いい医者探しにおいても、その情報量と信頼性において学術情報に勝るものはありません。
 世界最大の医学データベースMEDLINEをPubMedとして無料公開しているアメリカに比べ、日本の情報公開はかなり遅れています。それでも近年、インターネットで一部限定はありますが、医学学術情報を検索できるサイトや論文コピーを取り寄せるサービスが増えてきています。診療ガイドラインや専門医の検索ができる学会情報なども加え、医学図書館の現場で有効活用されているサイトのいくつかを紹介します。


1.本を探す   


★ 日本医書出版協会(JMPA)
  http://www.medbooks.or.jp/
★ Books.or.jp( 日本書籍出版協会「データベース日本書籍総目録」)
  http://www.books.or.jp/

 大きな書店の医学・看護学専門書売り場で、本や雑誌の現物を見るのもよい方法です。
日本医書出版協会のサイトでは、医学・看護学をはじめとする医学関連領域の出版物を発行する専門出版社26社の出版物が検索できます。看護職向けの解説書やマニュアルが患者・家族に近い立場で書かれており、値段も医学書に比べて安価なので手ごろです。出版社のホームページからネット注文もできます。
 また、近年、一般向けの病気の本が数多く出版されていますので、まずはそこから探すのもいいでしょう。Books.or.jp では国内で発行され、現在入手可能な書籍を収録する書籍検索サイトです。73万点が収録されています。


2.和雑誌特集記事を探す   


★ SUNMEDIA臨床医学和雑誌特集データベース(とくとくトピック) 
  http://www.sunmedia.co.jp/e-port/tokusyu/search1.html
★ 北里大学雑誌特集記事検索システム 
  http://mlib.kitasato-u.ac.jp/pub/index.html

 医学雑誌は学会誌と商業出版社が発行する商業誌に大別されます。学会誌は原著論文を多く集録し、商業誌の多くは毎号特集記事を掲載しています。特集記事は総説・展望・解説等から成っています。いずれも総括的、解説的、教育的に書かれているので原著論文のような難解さはありません。また一つの主題が1冊にまとめられているという点では、分担執筆で書かれた図書に似ています。一貫性や充実度では図書に劣るとしても出版までの時間が短い分、最新情報が得やすいという利点があります。 
  看護学関係の雑誌で探している病気の特集がみつかれば幸運です。医学雑誌に劣らない高度な内容でも比較的平易な表現で書かれているので読みやすいし、患者や家族が知りたいと思うことは、看護の側から書かれていることが多いからです。だだし、医学雑誌に比べ雑誌数、特集数が少ないのが残念です。
 とくとくトピックは特集名だけでなく、含まれる個々の論文名も検索できます。
 北里大学雑誌特集記事検索システムは検索対象を看護雑誌に絞って検索できます。


3.雑誌論文を検索する


★ 医中誌パーソナルWeb (医学中央雑誌刊行会/So-net) 
  http://www.so-net.ne.jp/medipro/jamas/index.html
★ JDreamPetit (科学技術振興機構) 
  http://pr.jst.go.jp/jdreampetit/

 いずれも医療の現場で利用の多い国内医学雑誌論文データベースです。収録データはほぼ同じと考えてよいと思います。
医中誌パーソナルWebのデータは現在30万件を超えています。ここで“乳がん”を検索すると過去5年間で、19,830件がヒットしました。主に開業医などの個人ユーザーに向けたサービスで、一般の人も利用できるとはいえ有料なので敷居が高いのが現状です。
JdreamPetit も個人向けのサービスです。月額1000円で使い放題となっています。文献のコピーも200円から入手できます。両サービスともに無料お試し検索を用意しています。
また、最近では公共図書館でこのサービスを導入して利用者に提供するという動きも出てきました。(千葉県立西部図書館)

国立国会図書館雑誌記事索引
  

 国立国会図書館雑誌記事索引で検索できるのは限られた採録誌なので、医中誌やJdreamPetitに比べヒット数は格段に減少します。しかし、利用者登録制度により、登録利用者(18歳以上)はインターネットで複写の申し込みと郵送サービスを安価な料金で提供しているという点が注目に値します。

★ メディカルオンライン
  http://www.meteo-intergate.com/

文献検索、抄録閲覧、文献配信を行う医療者を対象とする会員制の有料サイトですが、トップページの「医学文献検索」は無料です。例えば“乳がん”と入れると883件がヒットしました。表示される記載は書誌事項(著者、所属、論題、雑誌名など)のみですが、それだけでも最近の研究動向を知る手がかりが得られます。また、著者の所属が入っているので、病院選び、医者選びの参考にできます。

★ PubMed
  http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?DB=pubmed
★ MedlinePlus
  http://www.nlm.nih.gov/medlineplus/

 PubMedは世界最大の医学文献データベースMEDLINEのインターネット版です。医療者が頻繁に利用する有名なデータベースです。MedlinePlusはMEDLINEの一般市民向けバージョンです。いずれも無料公開されています。日本の主要な学会雑誌の論文も収録されているので、日本語論文(英訳)も検索できます。すぐに使わなくてもその存在は知っておきたいデータベースです。

★ Google Scholar
  http://scholar.google.com/

サーチエンジンGoogleで知られる米グーグルのサーチエンジンの一つで、医療者に歓迎されているサービスです。出版社、学協会、大学などのリポジトリ(情報集積所)やウェブサイトから、学術論文や学術出版物などの全文や抄録について索引付けを実行し、キーワードや著者名で検索できるようにしたものです。検索を実行すると、関連した論文などの一覧が表示されます。その中にはPubMedのデータも多く含まれます。さらに、その論文が引用されている論文や書籍をイモづる式に探せます。中には電子ジャーナルで全文が読めるものもあります。インターネットの真髄を感じさせるサービスです。


4.診療ガイドラインを探す


★ Minds(医療技術評価総合研究医療情報サービス事業)
  http://minds.jcqhc.or.jp/
★ 東邦大学医学メディアセンター 診療ガイドライン
  http://www.mnc.toho-u.ac.jp/mmc/guideline/index.htm

 「特定の臨床状況のもとで、適切な判断や決断を下せるよう支援する目的で体系的に作成された文書」のことを診療ガイドラインと言います。現在主流となっているのは「エビデンスに基づいたガイドライン」です。ランダム化比較試験などから得られるエビデンスを吟味、評価し、その結果に基づいて何をすべきか何をすべきでないかを勧告しています。
 ガイドラインの発表形態としては @書籍・小冊子 A学会誌掲載 Bインターネット
があります。
Mindsは日本医療機能評価機構が実施する医療情報サービスです。その中核になっているのが診療ガイドラインで、厳密に選定されたものが提供されています。部位別目次と50音目次から検索できます。
東邦大学の診療ガイドライインは日本のガイドライン情報を網羅的に収集しています。疾患別に分類してあります。単行書や機関誌などに掲載されたものはその書誌的事項を、インターネットで公開されているものにはリンクをはってあります。


5.専門医・認定医をさがす


★ UMIN学会情報
  http://www.umin.ac.jp/ac/

 学会検索ができるページです。「専門分野別一覧」から探せます。学会ホームページによっては、専門医・認定医を掲載しているところがあります。


6.医学図書館を探す


★ 医学図書館の一般公開
  http://www.ne.jp/asahi/citizen/information/
★ 日本医学図書館協会 加盟館一覧
  http://wwwsoc.nii.ac.jp/jmla/jmlalink/index.html

 「医学図書館」と呼ばれるのは、大学医学部や医科大学などが運営する図書館のことで、全国に100以上あります。一般市民も医学図書館を利用したいという声が高まりつつあります。また医学情報提供を目的とした患者図書室を設置する病院も増えてきました。
「医学図書館の一般公開」は全国の医学図書館の公開状況を調査しています。「日本医学図書館協会 加盟館一覧」は各医学図書館ホームページにリンクしています。自宅に近い図書館の学外者対応を確認しておかれるとよいでしょう。

                 (しもはらやすこ・千葉県がんセンター患者図書室「にとな文庫」)